w-inds.の“Dirty Talk”が最も先鋭的かつ「ファン思い」である理由

「歌って踊れるエンターテイナーだけに許された表現」

音楽好きならば誰もが指摘できるように、w-inds.のニューシングル“Dirty Talk”のサウンドは1980年代後半から1990年代前半にかけてアメリカのR&B界で大流行したニュージャックスウィングを意識したものだ。


w-inds.“Dirty Talk”を聴く(Spotifyを開く

作詞、作曲、プロデュースを手がけた橘慶太の「1980年代中盤生まれ」という世代から、その直接の参照元となっているのは、2016年11月のリリース当時、ニュージャックスウィングリバイバルとして話題を集めたブルーノ・マーズのアルバム『24K Magic』であることは間違いないだろう。同作(及びその収録曲)は『第60回グラミー賞』で最多6部門を受賞。受賞式での、Cardi Bをゲストに迎えての“Finesse (Remix)”の最高にキュートで楽しいパフォーマンスもまだ記憶に新しい。

ブルーノ・マーズの巻き起こした『24K Magic』現象が特異だったのは、他の多くの「1980年代リバイバル」「1990年代リバイバル」と違って、そのフォロワーがほとんど現れなかったことだ。厳密に言えば、「現れなかった」というより「他に誰も真似をできなかった」と言ったほうがいい。

1989年にボビー・ブラウンがリリースした“Every Little Step”のミュージックビデオでの斬新なダンスによって、ここ日本でもブームに火がついたニュージャックスウィング。それは音楽の流行である以上に、何よりもダンスの流行として一気に広まっていった。つまり、ニュージャックスウィングは歌って踊れるエンターテイナーだけに許された表現。ラッパー全盛、歌って踊れるエンターテイナーがかつてほど大衆から求められていない現在の北米の音楽シーンにおいて、ブルーノ・マーズに続く全方位型スターが出てこなかったのはいわば必然だった。

ブルーノ・マーズ『24K Magic』収録曲

w-inds.が、“Dirty Talk”でニュージャックスウィングへ舵を切った必然性

“We Don't Need To Talk Anymore”で驚きとともに幕を開け、アルバム『INVISIBLE』、そして“Time Has Gone”へと結実していった、2017年以降のw-inds.のトロピカルハウス(ダンスホールレゲエのビートやサウンドの影響下で発展したEDMの新形態)に寄せたニューモード――つまりは橘慶太のトラックメイカーとしての覚醒が牽引していった最新型w-inds.の流れにおける、今回のニュージャックスウィングへの急転換には少々不意をつかれた。

それはなぜか。1990年代まで洋楽人気の高かった日本においては、音楽的にはより「わかりやすい」ものとなったが、玄人筋からの評価という意味では決して「わかりやすい」方向性ではないからだ。『グラミー賞』を席巻したばかりの絶好のタイミングとはいえ、ブルーノ・マーズが2016年にリリースした作品のフォロワーを今買って出るというのは、勇敢ではあるもののリスクが高い賭けのようにも一瞬思えた。

しかし、w-inds.のここまでの歩みをふまえるならば、この流れはまさに必然だったのかもしれない。というのも、2作目のシングルにして初のトップ10ヒットとなった“Feel The Fate”(2001年)の時点で、ニュージャックスウィング的なサウンドと、そのチャームを正統に引き継いだ軽快なダンスはw-inds.のアイデンティティーの一つだった。そして、それはほんのつい最近、2016年のシングル“Boom Word Up”まで断続的ではありながらも継続して彼らのグループとしての個性を規定し続けてきた。

これは2018年のw-inds.における「最適解」にして、世界中で誰も挑戦しえなかった境地

2017年のアルバム『INVISIBLE』にともなう全国ツアー最終日、武道館のステージ。個人的な関心は、橘慶太のトラックメイカーとしての覚醒以降の最新モードと、海外風に呼ぶなら「ボーイバンド」として16年という異例に長いキャリア、その2つにどう折り合いをつけているのかというところだった。

ニューアルバム『INVISIBLE』からの曲を中心に組まれた前半から中盤に続いて、終盤は橘慶太が参加するプロデュースユニット「DMD」による往年のヒットチューンのリミックスをノンストップメドレー形式でたたみかけていく三人。「なるほど、その手があったか!」と感心していたところ、フィナーレを飾ったのはあえて当時のアレンジが完全再現されたフルコーラスの“Feel The Fate”だった。最終曲ということもあったのだろう。そして、古くからのファンにとっては当然懐かしさもあったのだろう。この日、武道館の客席が最も沸いたのはその瞬間だった。

『w-inds. LIVE TOUR 2017
『w-inds. LIVE TOUR 2017 "INVISIBLE"』武道館公演より

w-inds.にとっては、近年の先鋭的な楽曲によって関心を持った新しいファンがウェルカムなのは当然として、以前から支えてきてくれたファンを振り落とすつもりも毛頭ないはずだ。そう考えると、今回の新曲“Dirty Talk”は、論理的に至った最適解にして、ブルーノ・マーズのニュージャックスウィングリバイバル以降、誰も立とうとしなかった場所に堂々と立ってみせた、同時代のポップミュージックシーン的にも意義のある作品になった。もちろん、その練り込まれたサウンドの細部にも、ただキレがあるだけではなく緩急自在にビートを乗りこなした難易度の高いダンスを披露しているミュージックビデオにも、17年分の驚くべき進化が刻まれている。

このモードが継続されていくのか、あるいは突発的なものなのかはまだわからないが、2018年、w-inds.がますます目の離せない存在となったことだけは間違いない。

w-inds.『Dirty Talk』初回限定盤ジャケット
w-inds.『Dirty Talk』初回限定盤ジャケット(Amazonで見る

リリース情報
w-inds.
『Dirty Talk』初回限定盤(CD+DVD)

2018年3月14日(水)発売
価格:1,500円(税込)
PCCA-04616

[CD]
1. Dirty Talk
2. If I said I loved you
3. Dirty Talk(Instrumental)
4. If I said I loved you(Instrumental)
[DVD]
1. Dirty Talk Music Video
2. The Making of Dirty Talk Music Video
※個別サイン会参加券もしくはプレゼント応募券封入

w-inds.
『Dirty Talk』RYOHEI盤(CD+DVD)

2018年3月14日(水)タワーレコード限定発売
価格:1,500円(税込)
BRCA-00092

[CD]
1. Dirty Talk
2. If I said I loved you
3. Dirty Talk(Instrumental)
4. If I said I loved you(Instrumental)
[DVD]
・Behind The Scene -RYOHEI-
※個別握手会参加券封入(RYOHEI)

w-inds.
『Dirty Talk』KEITA盤(CD+DVD)

2018年3月14日(水)タワーレコード限定発売
価格:1,500円(税込)
BRCA-00093

[CD]
1. Dirty Talk
2. If I said I loved you
3. Dirty Talk(Instrumental)
4. If I said I loved you(Instrumental)
[DVD]
・Behind The Scene -KEITA-
※個別握手会参加券封入(KEITA)

w-inds.
『Dirty Talk』RYUICHI盤(CD+DVD)

2018年3月14日(水)タワーレコード限定発売
価格:1,500円(税込)
BRCA-00094

[CD]
1. Dirty Talk
2. If I said I loved you
3. Dirty Talk(Instrumental)
4. If I said I loved you(Instrumental)
[DVD]
・Behind The Scene -RYUICHI-
※個別握手会参加券封入(RYUICHI)

w-inds.
『Dirty Talk』通常盤(CD)

2018年3月14日(水)発売
価格:1,000円(税込)
PCCA-7052

1. Dirty Talk
2. If I said I loved you
3. Dirty Talk(Instrumental)
4. If I said I loved you(Instrumental)
※一斉握手会に参加可能な告知フライヤー封入

イベント情報
『w-inds. FAN CLUB LIVE TOUR 2018 ~ESCORT~』

2018年3月3日(土)
会場:北海道 Zepp Sapporo

2018年3月14日(水)
会場:東京都 中野サンプラザ

2018年3月16日(金)
会場:愛知県 Zepp Nagoya

2018年3月18日(日)
会場:大阪府 Zepp Osaka Bayside

2018年4/1(日)
会場:福岡県 福岡国際会議場・メインホール

2018年4月30日(月・祝)
会場:神奈川県 パシフィコ横浜

プロフィール
w-inds.
w-inds. (ういんず)

橘慶太、千葉涼平、緒方龍一からなる3人組ダンスボーカルユニット。2000年11月から毎週日曜日、代々木公園や渋谷の路上でストリートパフォーマンスを開始。2001年3月14日にシングル『Forever Memories』でデビュー。同年リリースされた1stアルバム『w-inds.~1st message~』はオリコンチャート1位を記録。これまでに日本レコード大賞 金賞7回、最優秀作品賞1回を受賞し、NHK紅白歌合戦には6回出場と、実力・人気を不動のものとした。その活躍は、台湾・香港・韓国・中国・ベトナムなど東南アジア全域に拡がり、海外でも数々の賞を受賞。台湾ではアルバム4作連続総合チャート1位を記録。日本人として初の快挙を達成。21世紀という新しい時代に日本を中心に、世界中へ新しい風を巻き起こし続けている、男性ダンスボーカルユニット―――それがw-inds.である。



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