画家バルテュスの作品『夢見るテレーズ』の撤去を、ニューヨーク・メトロポリタン美術館に対して求める署名運動が行なわれている。
『夢見るテレーズ』は1938年の作品。目を閉じて椅子に座る少女が無防備に足を上げ、スカートの中をさらけ出している様が描かれ、少女の傍らでは猫がミルクを舐めている。モデルの少女はパリに住むバルテュスの隣人で、当時12~13歳だったとされるテレーズだ。
バルテュス『夢見るテレーズ』 メトロポリタン美術館オフィシャルサイトより(サイトで見る)
作品撤去の署名はニューヨーク在住の女性ミア・メリルによって始められ、ウェブサイト「Care2」上で8500人を超える支持者を集めている(記事掲載時)。
メリルは週末にメトロポリタン美術館に行って『夢見るテレーズ』を目にし、若い少女が煽情的なポーズで描かれていることにショックを受けたという。こうした絵を同美術館が誇らしげに展示していることが不快だと主張する。
さらに多くの著名人が性的な嫌がらせやセクハラで告発されている現在の状況を背景に、この作品を大衆に向けて展示することで、メトロポリタン美術館はのぞき見行為や子供を性的対象として見ることを美化していると糾弾している。
ニューヨークタイムスなどの報道によると、メトロポリタン美術館では現時点で『夢見るテレーズ』を撤去する予定はないという。
ポーランド系貴族出身のバルテュスは静謐な風景画や、少女のいる室内画など緊張感に満ちた作品で知られるフランスの画家。1908年に生まれ、2001年に没した。兄は作家のピエール・クロソウスキー。2014年には東京都美術館で回顧展『バルテュス展』が行なわれ、『夢見るテレーズ』も出品された。思春期の少女はバルテュスの代表的なモチーフとなっており、少女をエロティックなポーズで描いた作品は『夢見るテレーズ』だけではない。またテレーズは25歳で亡くなっているが、彼女を描いた作品は複数ある。
しかし署名の発起人であるミア・メリルは、『夢見るテレーズ』以外の作品の撤去を求めるつもりはないそうだ。
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