フランク・オーシャンと共演。日本語で世界に羽ばたくラッパー、KOHH
いま一番熱いラッパーは誰か? ヒップホップシーンでは常に避けて通れないこの問いに、これだけ簡単に答えが浮かぶ時代もなかなかないだろう。なぜなら、日本にはKOHHがいるからだ。
2014年にアルバム『Monochrome』をリリースして高い評価を得たKOHHだが、ヒップホップの枠、日本の枠を超えてさらなる注目を集めるのに時間はかからなかった。フランク・オーシャンと宇多田ヒカル。2016年に国内外2人のシンガーとの客演曲が発表され、その才能を広く知らしめたのだ。
フランク・オーシャンの"Nikes"は残響が鳴り渡る乾いたドラムにアコースティックギターのループを組み合わせた、ゆったりとしたシンプルな曲だが、中盤から日本語でラップをのせるKOHHは驚きをもって受け入れられた。
フランク・オーシャンのアルバム『Blond』の楽曲“Nikes”、CDにはKOHHのラップパートが入ったバージョンが収録されている
KOHHは“Nikes”に先立つ2015年、韓国人ラッパー、キース・エイプの“It G Ma”にも客演。5人のラッパーが英語、韓国語、日本語の入り混じるラップを繰り広げる中でトリとして出てくるKOHHの「ありがとう」はリスナーの国籍に関わらず大きなインパクトを与えている。
アメリカやフランスにも活動を広げていくKOHHの音楽がそれまでの「日本人ラッパーの世界進出」と大きく異なるのは、日本語のままで楽曲を作り続けていることだ。英語のフレーズは一部にとどまり、日本語の発音を英語化してラップすることもない。聴き取りやすく、誰の耳にもすっと入ってくる日本語のラップのままで世界でも活躍を続けるところに、KOHHの大きな特徴がある。
アメリカで大流行中のトラップに日本語をはめた、革新的なリズム感覚
日本語でラップするKOHHの音楽が国境を越えて受け入れられた背景には、「世界の共通言語としてのトラップ」をいち早く取り入れた事実がある。“It G Ma”のように、遅くスカスカしたドラムに印象的なシンセサイザーと重低音のベースで構成されるトラックの上では、従来のヒップホップのように物語を語ったり韻の技巧を駆使したりするよりも、いかにリズムを強調してかっこよくラップするかが重要となった。
「トラップ」と呼ばれるこのビートは2010年代半ばには爆発的に世界に広まり、アメリカの流行になるのみならず、非英語圏のラッパーにも大きく扉を開くことになった。KOHHはデビュー前の2013年にリリースして話題を呼んだ“Junji Takada”で既にトラップを取り入れており、“It G Ma”で日本語がわかる / わからないに関わらず「ラップの乗せ方のかっこよさ」で一躍注目を集めたのもトラップならではの出来事だ。そんな国際的な特徴を持つ反面、ひたすら生まれ育った東京都北区王子を歌った“結局地元”では、宇多田ヒカルの興味も惹くことになる。
宇多田ヒカルも絶賛した、尖った言葉を選びとるワードセンス
トラップが言語を超えて伝わっていく音楽である一方で、KOHHの楽曲では直感的に選びとられた鋭い言葉が重要な要素を占めていることも他のトラップのラッパーたちとは大きく異なる点だ。宇多田ヒカルとKOHHの共演曲“忘却”で、宇多田はKOHHの曲“ビッチのカバンは重い”に応答するように「カバンは嫌い 邪魔なだけ」と歌い、逆に「いつか死ぬ時 手ぶらがベスト」と歌う宇多田に対しKOHHは「地獄まで財布は持っていけない 天国にも財布を持っていけない」と“Born To Die”でラップしており、単なる共演にとどまらず歌詞の面でもお互いをインスパイアしている様が伺える。
『DIRT Ⅱ』に収録されている“ビッチのカバンは重いⅡ”
実際、初期の代表曲“貧乏なんて気にしない”から般若に客演したアコースティックな“家族”、NirvanaやTHE BLUE HEARTSからの影響が伝わってくる“Die Young”など、様々な楽曲の中でKOHHは常に耳に残る言葉を綴ってきた。
そんな言葉の一つひとつにニュアンスを込めるように、音源ではクールに声をコントロールするKOHHだが、ライブではタトゥーを見せつけるように上半身裸となり、細い体には不釣り合いですらある芯の通った声でエネルギッシュなパフォーマンスを繰り広げる。そんな彼が4月22日に出演する『CROSSING CARNIVAL』では、どんなステージを見せてくれるのか、いまから期待が高まる。国境とジャンルの壁を軽やかに飛び越えて最先端へと駆け抜けるこの「Living Legend」の一挙一動から、これからも目が離せない。
KOHHが出演する『CROSSING CARNIVAL'18』タイムテーブル(サイト見る)
- イベント情報
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- 『CROSSING CARNIVAL'18』
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2018年4月22日(日)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-EAST、TSUTAYA O-WEST、TSUTAYA O-nest、duo MUSIC EXCHANGE
出演:
KOHH
Chara×韻シストBAND
GRAPEVINE(ゲスト:康本雅子)
大森靖子(Crossing:world's end girlfriend)
藤井隆
おとぎ話(新作の完全再現ライブ)
前野健太
Awesome City Club feat. Jiro Endo
world's end girlfriend × Have a Nice Day!
THE NOVEMBERS(ゲスト:志磨遼平(ドレスコーズ))
GAGLE(ゲスト:鎮座DOPENESS、KGE THE SHADOWMEN)
DADARAY(ゲスト:藤井隆)
WONK
Tempalay
King Gnu
LILI LIMIT(Crossing:牧野正幸)
Emerald(ゲスト:環ROY)
料金:前売6,000円 当日6,500円(共にドリンク別)
- プロフィール
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- KOHH (こー)
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1990年4月22日生まれ。東京都北区王子出身。生い立ちや現況を、ありのままに綴る歌詞表現と、ジャンルに囚われない自由な音楽スタイルで、若者を中心に、国内外から絶大な支持を集める。音楽活動以外にも、ファッション・モデルとしてのランウェイ/ルックへの参加、自身が手がけたアート作品での個展開催など、ラッパー/ミュージシャンの規格を飛び越え、アーティストとして大きな飛躍を見せている。2014年7月、自身初のアルバムとなる2ndアルバム『MONOCHROME』をリリース。2ndアルバムを1stアルバムより先にリリースするという試みにも注目が集まった。iTunes総合アルバム・チャート6位、HIP HOP / RAPチャート1位と新人としては異例。2016年3月、FUJI ROCK FESTIVAL 2016に出演が決定。2016年4月、自身のフランスでの芸術活動が評価され、フランス大使館で行われたフランス外務・国際開発大臣主催の交流会に招待を受け参加。2016年6月、自身4枚目となるアルバム『DIRT II』を発売。
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