(メイン画像:アカデミー映画博物館イメージビジュアル ©Renzo Piano Building Workshop/ ©A.M.P.A.S./ Image from L'Autre Image)
『アカデミー賞』を主催するアメリカの映画芸術科学アカデミーによるアカデミー映画博物館(Academy Museum of Motion Pictures)が、2019年後半にオープンする。同館で行なわれる展覧会プログラムが発表された。
初の企画展は米最大規模の宮崎駿展、200点以上を展示
アメリカ・ロサンゼルスに現在建設中のアカデミー映画博物館。館長はハーシュホーン美術館と彫刻庭園やロサンゼルス現代美術館のキュレーターを歴任するケリー・ブロワーが務める。
オープンを記念する企画展となるのは映画監督・宮崎駿の回顧展だ。スタジオジブリとのコラボレーションによって行なわれる同展は、テーマごとに宮崎駿の作品世界を探求する内容で、映画に使われた実際のコンセプトスケッチやキャラクターデザイン、ストーリーボード、セル画、背景、映像など200点以上の展示が予定されている。アメリカで行なわれる宮崎の展覧会としては最大規模になるという。
宮崎駿は2003年に『千と千尋の神隠し』で、『第75回アカデミー賞』長編アニメ映画賞を受賞している。2014年には日本人監督としては黒澤明以来、2人目となる『アカデミー名誉賞』を贈られている。
チームラボがプロジェクトスペースのこけら落としを飾る
さらに館内のプロジェクトスペース「ハード・ギャラリー」のこけら落としをチームラボが飾る。
高さ10メートルを誇るハード・ギャラリーは、映像メディアの可能性を押し広げる現代のアーティストや映像作家の作品に特化したスペースだ。チームラボはこのスペースで作品を発表する初のアーティストとなる。インタラクティブなインスタレーション『Transcending Boundaries』はリアルタイムで変化し、鑑賞者が直接作品と関わることのできる空間を環境を作り出す。
映画史と映画製作の歴史を辿る展覧会や、黒人の映画作家に光を当てる展示も
また企画展とは異なる長期の展覧会として、映画史と映画製作の歴史を辿る『Where Dreams Are Made: A Journey Inside the Movies(仮)』が行なわれる。
同展では博物館の2フロアを使って、アカデミーのコレクションや映像インスタレーションを展示する。映画黎明期から戦中、戦後、現代まで、映画の歴史を映画製作における技術の進化と共に振り返る。
展覧会の一部として博物館ロビーにあるギャラリーには、1939年の映画『オズの魔法使い』のインスタレーションが登場する。ここでは『オズの魔法使い』の制作過程を脚本からプロダクションデザインのドローイング、スケッチ、衣装、完成したキャラクターまで、様々な資料を通して追体験できる。加えてアカデミーのコレクションから、劇中でドロシーが履いたルビーの靴が展示される。
さらに宮崎駿展の終了後、2020年秋にはアフリカンアメリカンの映画作家の歴史を紹介する展覧会『Regeneration: Black Cinema 1900-1970』が開催される。
この展覧会では草創期から公民権運動直後までに作られた、黒人の映画作家たちの表現に注目する。これまで十分に紹介されてこなかった彼らのプロダクションに光を当てることでアメリカ映画史を再定義することを目指す。
「来場者を現実と空想の間の世界にお連れします」
アカデミー映画博物館は映画の芸術科学に特化した機関だ。同館が手掛ける展覧会やプログラムについていくつかの目標を設定している。
それは「映画の持つ、人々の感情に訴えかけ、想像力を掻き立てる力を伝えること」「来場者に映画の進化や制作過程の背景を紹介すること」「映画が社会や文化全般に与えるインパクトを追究すること」「私たちの時代の偉大なアートフォームとして映画のレガシーを守ること」。
ケリー・ブロワー館長は「私たちは来場者のみなさんを現実と空想の間の世界にお連れします。博物館での体験は、まるで来場者が映画のマジックの秘密を見ようとスクリーンを通り抜けたような気になる、映画の鑑賞体験に似た白昼夢のような時間になるでしょう」とコメントを寄せている。
建築はレンゾ・ピアノ。1939年の建物を生まれ変わらせる
現在建設中の博物館の建物は、『プリツカー賞』受賞歴のある建築家のレンゾ・ピアノが建築を担当している。1939年に建設されたメイ・カンパニー・ビルディングを改装し、新たな映画文化の機関として生まれ変わらせる。
元々の建物を再利用するサバン・ビルディングは6フロアから構成される。展示室に加え、288席の上映スペースであるテッド・マン・シアター、教育スタジオ、イベントスペース、カフェなどが併設する。
サバン・ビルディングとガラスの橋で接続する球体の建物は新たに作られる。ここは1000席を誇るデヴィッド・ゲフィン・シアターや、ハリウッドヒルズを一望するルーフトップ「ドルビー・ファミリー・テラス」などで構成される。
レンゾ・ピアノは今年4月の発表時にアカデミー映画博物館の建築について次のように述べている。
「歴史的なサバン・ビルディングはストリームライン・モダン様式の素晴らしい一例であり、1939年の人々が思い描いた未来を体現しています。新たな構造であるスフィア・ビルディングは地上を離れ、映画を見に行くという空間と時を超えた空想の旅に誘うような形状で、この2つを繋げることで私たちはそれ自体が映画であるかのような物を作ります。シーケンスからシーケンスへ、展示室からシアターやテラスへと人々は移動し、全てが融合して1つの体験になるのです」
アカデミー映画博物館は2019年後半に開館予定。宮崎駿の展覧会を含むプログラムの詳細は今後随時発表される。