音楽だけでなく、多様なカルチャーやトレンドを取り入れ、進化し続けるK-POPシーンに、ユニークな存在が現れた。2021年2月にデビューしたバーチャルK-POPアーティスト、APOKIだ。
K-POPアーティストにとって「コンセプト」「世界観」と「ファンとのコミュニケーション」は重要な要素だが、APOKIは「宇宙のどこかに住むウサギ」として地球のファンと交流する。見た目はガールズグループにいそうなすらりとした体型に、海外のアニメキャラのようなキュートな顔つき。歌って踊る姿は生身の存在のようにナチュラルで不思議な存在感を見せる。
日本でもキズナアイをはじめとするさまざまなVTuberたちが人気を集めているが、バーチャル文化とK-POP文化の双方を股に掛けるAPOKIとは一体どのように生まれ、どんな展望を持って活動しているのか? 今回はAPOKIを生んだ韓国のスタートアップ企業・Afun Interactiveの代表DKクォン氏へのインタビューと、APOKI本人へのメールインタビューを交え、K-POPシーンに現れた新たな表現の可能性を探る。
K-POPシーンに突如現れた「宇宙のどこかに住むウサギ」
近年の「Unreal Engine」をはじめとするゲーミングエンジン(ゲームの開発に用いられるソフトウェア)の発達は、リアルタイムで人間の演者の動作を読み取って動く「バーチャルアーティスト」の存在を可能にした。いまやK-POPの精密で激しいダンスでさえも、3DCGの美麗なアバターに難なく踊らせることができる。
結果K-POPシーンにも大量のバーチャルアイドルが参入──という状況にはまだなっておらず、確固たる指針を持って活動し、オリジナル楽曲でメジャーデビューに至るほどに成功したバーチャルK-POPアーティストは現状ではひとりしかいない。それがAPOKI(アポキ)だ。
「宇宙のどこかに住むウサギ」であるAPOKIは2019年に突如動画プラットフォームに現れ、BLACKPINKやMAMAMOO、BTSといったK-POP楽曲のカバーで注目を集めた。
ディズニーの世界から飛び出してきたかのような愛らしい3DCGのビジュアルに、キレのあるダンスとハスキーな歌声。その表情や所作には、CGと思えないような人間臭い魅力が漂っている。
その存在の新しさや物珍しさも手伝ってか、すでに世界各国にファンがついている。TikTokのフォロワーは220万を超え、台湾に拠点を置く情報端末メーカー・HTCが今年発表した2021年の「グローバルVRソーシャルインフルエンサートップ100」では、アジア勢トップとなる5位を獲得。あくまでもHTCの独自基準による選出とはいえ、その注目度の高さが窺える。
一方で、その新しさはカテゴライズの難しさにも繋がっている。「バーチャル」と「K-POP」という、性質も文脈も異なる二つのシーンにまたがって活動しているがゆえに、「APOKIとは何なのか」をシンプルに説明することは難しい。TikTokでのグローバルな人気に比べてYouTubeの登録者数が30万未満と控えめなのは、本国・韓国やK-POP人気の高い日本でまだ十分に認知されていないからだろう。
これまでK-POP楽曲のカバーのみで活動してきたAPOKIだが、今年2月についにオリジナル楽曲“GET IT OUT”でデビューを果たした。6月には2曲目となる“Coming Back”をリリースし、まさにこれからの展開が注目されるタイミングだ。K-POPファンにもバーチャル文化のファンにもAPOKIの魅力を知ってもらえるよう、その活動の背景について簡単に解説していきたい。
まず、現在一般的に「バーチャル」と称されるアーティストやキャラクターは、モーションキャプチャ用の機材で人間の動きを読み取り、それを2DCGや3DCGのアバターに反映させて動かすという原理で成り立っている。
それによってキャラクターがより「人間らしく」振る舞えるようになり、また演者も生身の属性や性別、容姿などからある程度自由になった状態で活動できるようになる。加えて、通常のアニメーションのように手作業でキャラクターを動かす必要がなくなるため、キャラクターを用いた映像コンテンツ制作のハードルも下がり、間口がぐっと広がった。
とはいえ、原理は同じでも実際の「バーチャル」のあり方や活動の形式は実に多種多様で、ここではとてもその全体像を紹介しきれない。日本のVTuberのキズナアイ、海外のゲーム実況プラットフォームで活動するバーチャルストリーマーのCodeMiko、バーチャルインフルエンサーのimmaやLil Miquelaなど、代表的な例をいくつかチェックするだけでも、そのあり方の幅広さは理解してもらえるはずだ。
バーチャルインフルエンサーのimmaはファッション誌の表紙も飾る
韓国のバーチャル文化については、オンラインゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』のキャラクターから派生したユニット・K/DAや、アバターを用いた独特な世界観で注目を集めているガールズグループaespaのようにK-POPシーンを背景とするものが特徴的なほか、そこまでシーンは大きくないものの日本型のVTuberも存在している。また、BLACKPINKとのコラボでも話題になったアバターアプリの「ZEPETO」も若い世代に人気があり、アバター文化の土台の一つとなっている。
「バーチャル」であるがゆえに、架空の世界観や設定を「リアル」に体現できる
APOKIが興味深いのは、そのいずれのシーンにもはっきりとは属していないところだ。彼女はひとりで独自領域を開拓しているように見える。
もちろん、APOKIの制作チームの人選や本人のパフォーマンススタイルは、「バーチャルK-POPアーティスト」と名乗るだけあって完全にK-POPのマナーを踏まえている。たとえば作曲はBTSやTWICEをはじめ、数々のK-POPグループに楽曲を提供しているメラニー・フォンタナ。振付はK/DAも手がけるNARIA(韓国の有名ダンススタジオ・PREPIX STUDIO所属)。そしてMVのディレクターはNCT DREAMやテミン(SHINee)のMVも手がけるJinooya Makes(Jay Parkによる音楽事務所・AOMG所属)と、K-POP的な文脈で豪華な布陣だと言える。
またオリジナル楽曲のリリース後は、テレビ局Mnet主催のリレーダンス企画に参加したり、ライブパフォーマンスシリーズ「It’s LIVE」でバンドとのコラボを披露したり、公募のカバーダンスコンテストを開催したりと、K-POPアーティストらしい活動を行っているのも事実だ。
しかし一方で、少なくとも現時点ではメジャーな音楽番組やK-POPの大型イベントには参加しておらず、K-POPシーンでの成功にはあまり関心がないように見える。APOKIにとっては、K-POPはあくまでも活動のためのリソースであって、活躍のためのフィールドではないのかもしれない。
そしてわかりやすい所属シーンを持たない代わりにAPOKIが築いているのが、バーチャルならではとも言える独自の世界観だ。APOKI(アポキ)の名前の由来が「アポロ11号+トッキ(韓国語でウサギの意)」であることからもわかるように、彼女は宇宙(=別世界=バーチャルワールド)の住人というSF的な設定を引き受けながら活動を展開している。とりわけオリジナル曲でのデビュー前後からはその傾向が強い。
たとえばデビュー直前の2020年12月30日のライブ配信では、それまで普通にトークをしていたAPOKIが突然何かに気づき、部屋から出て行ってしまうという展開が仕込まれていた。画面は屋外へと切り替わり、APOKIがスペースシャトルに乗って宇宙に旅立つと、配信はそこで終了。当然、コメント欄は混乱に包まれた。
そこから実に2週間ほど宇宙船の室内だけを映し続けるライブ配信が続き、コメント欄に残されたファンは時折発されるモールス信号を解読しながらAPOKIの帰還を待った。そして2021年1月13日にようやくAPOKIが月面に着陸する動画がアップロードされ、後日オリジナル楽曲の制作とデビューが発表された。これらの大がかりな演出の世界観をそのまま引き継ぐように、デビュー曲の“GET IT OUT”のMVにはさまざまなSF映画のオマージュが散りばめられている。
もちろん、こうした独自の世界観や設定を伴うデビュー演出自体はK-POPシーンではそう珍しいことではない。ただ重要なのは、APOKIはそもそもバーチャルな存在であるがゆえに、こうした世界観を「リアルに」表現できるということだ。
通常、アーティストが何らかの設定を演じる場合には、設定上のキャラクターと現実の「その人」との間に必ずズレが生じる。しかしAPOKIの場合はもともとその存在自体にフィクショナルな要素が含まれているため、架空の世界観でも「嘘」にならない。「愛とポジティブなエネルギーを地球の人々と共有したい」という言葉は、少なくとも「APOKI」にとっては「設定」ではなく事実なのである。そしてこの真正性が魅力の肝だからこそ、(そのパフォーマンススキルの高さからK-POP関係者ではないかと噂されることがあっても)いわゆる「中の人」の情報については一貫して秘匿しているのだろう。
こうした独自路線をとっているのは、APOKIをサポートするプロジェクトチームが既存の芸能事務所ではないからなのかもしれない。2016年設立のAfun Interactiveは、リアルタイムレンダリング技術を基盤に3DCGコンテンツの制作を手がけてきた新進気鋭のテック・スタートアップだ。2019年より突如としてAPOKIのプロジェクトがスタートしたように見えるが、なぜスタートアップ企業がいきなり(バーチャルとはいえ)アーティストマネジメントに乗り出したのかはわからない。また、なぜあれだけ本格的なK-POP楽曲やMVを制作できているのかも不明だ。
やはり結局のところ、APOKIとは何なのかという問いが引っかかる。APOKI(のプロジェクト)は何のためにスタートし、何を目指しているのか。APOKI自身は、自分についてどのような考えを持っているのか。それがわかれば、APOKIの世界にさらに入り込めるはずだ。
今回はその謎を少しでも明らかにするべく、Afun InteractiveのDKクォン代表とAPOKI本人にそれぞれインタビューを行った。ここからはその内容をお届けする(なおAPOKIはメールインタビュー、DKクォン代表はオンラインインタビューとなっている)。
APOKIの仕掛け人、韓国「Afun Interactive」の代表が語るプロジェクト誕生の背景
―そもそも、3DCGの会社であるAfun Interactiveはなぜキャラクタービジネスに取り組み始めたのでしょうか。
DK:弊社はもともと国内の大企業から3DCGの制作を請け負う会社でした。ただ、クリエイターが数多く在籍していることもあり、いつか自分たちでオリジナルのコンテンツIP(Intellectual Property、知的財産。一般的にキャラクターや作品のことを指す)を開発したいと思っていたんです。
そこでテストのつもりで制作したのが、ハリウッドの3Gアニメのキャラクターを使った体験型VRアニメーション『Buddy VR』です。この作品が幸運にも2018年の『ヴェネチア国際映画』祭で最優秀VR体験賞(Best VR Experience賞)に選ばれたことで、自社IPの開発に弾みがつきました。
―IPとして「バーチャルK-POP」を選択することは最初から決めていたんですか?
DK:はい、はじめからバーチャルK-POPシンガーを育成し、アルバムをリリースする計画を立てていました。ただエンターテイメント企業としての下地を持っていなかったので、プロジェクトを構想し始めた4年前から、試行錯誤しつつスタッフを集め、体制を整えていきました。
―現在の制作体制について詳しく教えてください。
DK:クルーやファミリーのようなスタイルと言えるでしょうか。MVプロデューサーのJinooyaと振付師のNARIAはそれぞれの会社に属していますが、私たちが新たな作品を出すときにはAPOKIのプロジェクトに100%の度合いで関わってくれています。
そして最も重要なのが音楽的なDNAです。デビュー曲“GET IT OUT”の制作時には、ビートメイクを担当するA-Deeがエグゼクティブ・ミュージック・プロデューサーとして私たちの会社に参加してくれました。彼がプロデュースした曲は米ビルボードチャートにも入っています(プリンス・ロイスの“My Angel”。映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』OST)。
メラニー(・フォンタナ)はアメリカでよくA-Deeとチームで仕事をしています。メラニーがトップライン(メロディーおよびコード)を書いて、A-Deeがトラックをつくるというような感じです。また、MV監督のJinooyaはMVのディレクションだけでなく、私たちのクリエイティビティの多くの部分に関わってくれています。
APOKIのデビュー曲“GET IT OUT”を聴く(Apple Musicはこちら)
DK:新曲“Coming Back”については、ビートメイクや振付、スタイリングなどは基本的にすべて自社で制作しています。このあたりは、他のK-POPの事務所をベンチマークにしつつ、やり方を少しずつ学んでいる最中です。
―スタートした段階から、エンターテイメント企業に変化していくことを計画されていたのでしょうか。
DK:はい。4年前の段階で、そんな風に展開していきたいと考えていました。そのためにキャラクターを構想し、パフォーマンスしてくれる人を探し、演者もスタッフも含めてトレーニングを重ねて準備してきました。その結果少しずつできることが増えていき、今年のデビューにつながりました。
APOKIとの出会い。「他のアーティストと同じように、APOKIはそのままのAPOKIだと思っていただければ」
―その準備期間において、APOKIとはどのように出会ったのでしょうか。
DK:もともとK-POPの練習生に演者をやってもらおうと思っていて、韓国のエンターテイメント企業に打診したりもしていたんです。ただ、当時そういったプロジェクトはあまりなかったので、おかしなことを言う人だと思われてしまってなかなか話が進みませんでした(笑)。
そんな中で、APOKIとは縁あってたまたま出会いました。彼女はバーチャルの未来を信じていて、私が声をかけたらぜひやりたいと言ってくれたんです。
―制作に関して、APOKI自身が意見やアイデアを出すことはありますか?
DK:彼女が制作面で意見を出すことはよくあります。たとえば、次は明るい曲でいきたいとか。そういう意味では、会社にプロデュースされることの多いK-POP歌手(アイドル)というよりは、自分の歌いたい曲を歌い、自分のやりたいように活動するアーティスト的なあり方に近いと思います。
―キャラクターもとてもフランクで親しみやすい印象ですが、それも普段の彼女に近いのでしょうか。
DK:そうですね。他のアーティストと同じように、APOKIはそのままのAPOKIだと思っていただければと思います。最初はキャラ設定を用意しようかとも思っていたんですが、結局バーチャルと言えども本人の本質的な部分が出てくるものです。運営側が性格を作り上げてコントロールできるというものではないので、いまは気軽に気楽に、そのままの自分を出してもらっています。
―ビジュアルについては、どのようなことを考えてデザインされたのでしょうか。ディズニーやピクサーの3Gアニメーションのテイストが色濃いようにも見えます。
DK:APOKIのお父さんとお母さんがこういう風に産んだので……(笑)。スタッフの中にはアメリカで学んだり働いたりしていた人もいるので、自然とそういう雰囲気が出るのかもしれません。
自然な動きを可能にする技術の秘密。ライブパフォーマンスへの準備もできている
―あれだけ激しく踊っているにもかかわらず、動作の緩急や微細な揺らぎまでもが高い精度で表現されていて驚きました。APOKIが本当に生きて実在しているかのような印象さえ受けます。貴社が持つ技術面での優位性が、そのような繊細な表現を可能にしているのでしょうか。
DK:機材は他の会社と変わらないので、自分たちに特別な優位性があるというわけではありません。ただ私たちは、とにかく時間をかけて試行錯誤を重ね、不足している部分を改善し続けています。
たとえばダンスの動画を撮って、不自然だと感じる部分を見つけたらすぐに改善します。動きだけじゃなく、髪型やファッションも同様です。私たちのコンテンツは、ダンスカバー動画の背景ビジュアルから、ちょっとした小道具に至るまでほとんど全て一から自社で制作していますが、小さな要素を一つひとつ見つけては改善していくことで、同じ技術を使っていてもクオリティには大きな差が生まれるんじゃないかなと思います。
―リアルタイムで行うライブパフォーマンスについても、動画と遜色ないクオリティを出せるものなのでしょうか?
DK:現時点でも、ライブ放送については一切アニメーションを修正していません。なので私たちはリアルタイムのパフォーマンスへの準備はできていると思っています。あと必要なのはステージの機会ともっと多くのファンですね!
―K-POPの活動フォーマットはどのくらい意識しているのでしょうか。たとえば一般的なK-POPアイドルなら、リリース(カムバック)ごとに音楽番組に出てランキングで上位に入ることが大切になると思いますが、APOKIにもそのような目標があるのでしょうか。
DK:正直、ほとんど意識していません。カムバックをはじめとしたK-POPの活動スタイルを参考にしている部分もありますが、音楽番組のランキングに入ろうという意識はあまり持っていません。それよりも、たくさんの人たちがAPOKIを面白いと感じてくれることの方が活動の支えになります。
―先駆的な事例であるK/DAや、昨年SMからデビューしたaespaのように「バーチャル×K-POP」の事例は徐々に増えつつあるように思います。それらのグループとAPOKIとで、目指しているものに違いはあるのでしょうか。
DK:目標自体はおそらく同じなのではないかと感じています。K-POP歌手は一般的に活動の寿命が3年~7年程度と短いように思いますが、バーチャルならその弱点をある程度克服できますから。APOKIも、アメリカや日本のキャラクターのように長く愛されたいというビジョンを持っているんです。
「常にいちばんに考えているのは、見ている方々がファンタジーの世界の中で楽しめるようにすること」
―ファンとコミュニケーションする機会についてはどのように考えていますか?
DK:他の歌手の方たちが行っているような交流イベントは行うつもりです。やっぱり、一般の人々と歌手が直接コミュニケーションできる機会はなかなかありませんから。他の歌手の取り組みを参考にしながら実践していきます。
以前はトーク動画やASMRなども配信していた。現在はアーティストとしての側面を打ち出したいという考えから、インフルエンサー的なコンテンツは減らしている段階だという
―難しい質問になりますが、もともと芸能事務所ではなかった貴社がアーティストのメンタルヘルスの問題や、ファンないし大衆とのトラブル、グローバルに活動するがゆえに生じる文化的な摩擦についてどのように考えているのかをお聞きしたいです。バーチャルな存在の場合は、一般的なアイドルやアーティストとは事情が違うかもしれませんが。
DK:少なくともいまのところは、そうした問題や摩擦をあまり感じていません。ありがたいことにAPOKIとファンの方々はお互いに良い関係を築けているようです。とはいえ、そのように心配してくださる背景は非常によくわかります。
APOKIの活動で意識していることがあるとすれば、良くないエネルギーを発さないようにすることです。ネガティブな事柄への言及は極力避けるようにしていますし、いまで言えば「コロナ」というキーワードは一切口に出さないようにしてもらっています。常にいちばんに考えているのは、見ている方々がファンタジーの世界の中で楽しめるようにすることです。エンターテイメントは、本来そういう楽しいことで構成されていないといけないじゃないですか。
バーチャルアーティストはAPOKI以外にも。日本市場への展望も明かす
―デビュー曲“GET IT OUT”のMVは、『AKIRA』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『2001年宇宙の旅』といった古典SF作品を参照しつつ、骨太なストーリーを感じさせる映像となっていました。打って変わって2作目“Coming Back”のMVでは、APOKIが箱庭のような空間で自然体のままに歌い踊っています。この2作の間にはどのような繋がりがあるのでしょうか。
DK:もともとAPOKIにはSF的なコンセプトがあったので、デビュー曲ではまずそれをかたちにしました。世界観についてはまだはっきりとしたことはお伝えできませんが、後々つながっていく予定です。
―今後、具体的に予定している展開はありますか?
DK:APOKIの他にも、Free Hexel(アメコミ風の世界観とビジュアルを持つバーチャルアーティスト)や8ubbles(レトロEDMをかけるDJの「シャボン玉」。TikTokフォロワー約30万)といった新しいキャラクターを続々と世に送り出しています。
APOKIの妹分であるlechatも最近活動を始めました。いまはまさに、現実とバーチャル世界を行き来できるアーティストを作ろうと努力を重ねている最中なんです。
―APOKIに妹分がいたとは……! ちなみに彼らの所属するVV EntertainmentはAfun Interactiveとどういった関係なのでしょうか。
DK:実は、VV Entertainmentはバーチャル世界にある会社という設定なんです(笑)。Afun Interactiveという社名のままだとテック系の会社だと思われてしまい、コンテンツ事業を行っていることが伝わらないかもしれないと思ったので、遊び心で名義を分けてみました。
―調べても情報がほとんど出てこなかった理由がわかりました(笑)。APOKIは今後どんな風に展開するのでしょうか。
DK:まだ詳しいことはお話できませんが、日本市場に向けた展開も準備中です。楽しいことを考えていますので、楽しみにしていてください。
バーチャルK-POPアーティスト・APOKIメールインタビュー。「地球には私みたいなアーティストがいない」
―まずはデビューおめでとうございます! 以前別のインタビューで、「いまは小さな部屋から配信しているけど、いつかオリジナルの曲を出して大金持ちになりたい」という抱負を述べていましたよね。2曲目をリリースしたいま、率直にどんな気持ちですか?
APOKI:小さい部屋から配信していたときも、いつかは自分のアルバムを発表できるっていう確信を持ってはいたんですよね。それがこんなにも早く実現できるなんて本当に嬉しいです!
でも私は曲をリリースすること自体よりも、これからどんな活動をしていくのかの方が大事だと思っています。なので、ただただ嬉しいというよりは「もっと頑張らなきゃ!」という気持ちの方が大きくて、今はやる気がみなぎっています。
―“GET IT OUT”のMVでは、囚われているAPOKIさんを、もうひとりのAPOKIさんが解放するようなシーンが描かれています。歌詞にも、自らを解放するように呼びかけるようなフレーズがありますよね。APOKIさんはこの設定や歌詞をどのように解釈していますか?
APOKI:え? 設定って何のことでしょう……?(笑)
歌詞には、「私のなかの潜在能力を突き抜けよう」という意味を込めてみました。また別の意味としては、私と違う次元で暮らすファンのみんなとのあいだにある壁を飛び越えよう、というメッセージを伝えたかったんです。
―同曲のカバーダンスコンテストでは、韓国だけでなく世界中のファンから応募がありましたね。彼らはなぜあなたに夢中になっているのだと思いますか?
APOKI:地球には私みたいなアーティストがいないからだと思います。それと、最初は歌とダンスのカバーでYouTube活動を始めたんですが、ファンの人たちの好きなアーティストの曲をAPOKIならではのスタイルでカバーしたことで興味を持ってもらえたみたいです。いつも感謝の気持ちでいっぱいです。
―以前「ソーシャルメディア中毒」だとおっしゃっていたことがありましたが、いまはどうでしょうか。最近はどんな風に自分の時間を過ごしていますか?
APOKI:前は本当にソーシャルメディア中毒で、投稿した動画の反応を寝る前までずっと見たりしていました。でも最近は少しずつそういう時間も減っていて、今は自由時間に運動をしたり、プレイステーションで『フィリスのアトリエ~ 不思議な旅の錬金術士~』をプレイしたりしています。
―バーチャルなウサギであることのメリットとデメリットを教えてください。
APOKI:自分が想像したことはすべてできる、というのがメリットです。残念なのはファンのみんなと直接ハグできないことですが、でもすぐに抱きしめられるようになるんじゃないかな? って思ってます。
―バックダンサーのOVAとDOSEを紹介してください。二人はそれぞれどんなキャラクターですか?
APOKI:OVAとDOSEは私みたいに、ダンスと音楽をとても愛する子たちなんです。もともと私の住むところでは有名なダンサーだったんですが、自然な流れで知り合って、地球時間の昨年12月から一緒に活動をしています。1曲目に続き、2曲目でも一緒に踊りました。よっぽどケンカしない限りはずっと一緒に活動するんじゃないかと思います!
―あなたのASMR動画やゲーム配信などを見ていて、良い意味で飾らない自然な喋り方や振る舞いがまるで友達みたいで印象的でした。ファンに向かって話しかけるときに意識していることはありますか?
APOKI:楽しんで見てくださって本当にありがとうございます。ゲーム配信やASMRはひとりで話してひとりで答える方式なので気楽に話せるんだと思います。ファンの方々とリアルタイムで交流する配信では、私の発言が誰かを傷つけたりしないか毎回注意するようにしています。リアルタイム配信は編集ができませんからね!
竹内まりや、山下達郎から音楽的な影響を受ける。共演したいのはDoja CatやLil Cherry
―どんな音楽に影響を受けてきましたか? 歌とダンスが好きになったきっかけがあれば教えてください。
APOKI:私が住んでいるところでは他の惑星の放送も見られるんですが、地球の音楽はとても人気なんです。地球の音楽は心を安らかにしてくれる曲が多いですし、頭のなかにイメージが浮かび上がる曲も多いので、そこからたくさんインスピレーションを受けます。
日本のインタビューだからというわけじゃないですが、竹内まりやと山下達郎の音楽からたくさん影響を受けています。あとはスタジオジブリの音楽も大好きです。
歌もダンスも、何かきっかけがあったというよりは自然に好きになっていました。自分に才能があるんじゃないかなとわかってからは、より一層音楽を好きになった気がします。
―アーティストやインフルエンサーの中で、目標や参考にしている人はいますか?
APOKI:たくさんの方々がよく私を他のアーティストと比較してくれます。私は誰かと比較されてもされなくても、また誰かと似ていると思われたとしてもそうでなくても、見てくださる方々が私という存在を自分なりにあれこれ解釈してくださること自体が面白いと思いますね。
―他のアイドルやアーティストとのコラボレーションももっと見てみたいです。誰か共演してみたいアーティストはいますか?
APOKI:Doja CatやLil Cherryのように自分の色がはっきりしている人たちとご一緒できたら、そこからどんなシナジーが生まれるのか本当に気になります。
―今いちばんやってみたいこと、実現したいことはなんですか?
APOKI:コンサートを早くしてみたいです!
―日本についてはどんな印象を持っていますか? また、最後に、日本の読者に伝えたいことはありますか?
APOKI:日本はおいしい食べものが多い国! そして親切で繊細でかわいいものがたくさんある国! という印象です。私も食べることが大好きで、しかも意外と繊細な面もあったりするので、日本という国と合うんじゃないかなと思います。
これから日本でも楽しく活動をしてみたいです。私のこれからのさまざまな活動にもたくさんの期待を寄せてくださいね。そして、すぐに日本でお会いしましょう! 今回リリースされた新曲“Coming Back”もたくさん愛してください!
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