インタビュー・テキスト:南波一海 撮影:菱沼勇夫
―あと最近の悩みとして、どうしたら素人っぽくなく見られるかっていうのがあって。
ヒラノ:やっぱり歌もダンスもできないし、こういう見た目でこういう話し方なので、「なんだろうこいつ、よくわかんねえぞ」みたいな扱いをされることが多いんです。1年前に元メンバーのファンの人から「一番アイドルっぽくないよね」って笑顔で言われたことがあって。大阪に行って、ファンの方と触れ合った時なんですけど、そこでそう言われて「え、そうですか。あ、はい、ありがとうございます」で握手が終わっちゃって。
うすた:(笑)。
―でも、心の中ではすごくショック?
ヒラノ:それからずっと悶々とし続けて早1年です。
うすた:うーん。でもBiSって全体的にアイドルっぽくないんじゃない?(笑)
―そもそも(笑)。でも逆に、そうだからファンになったっていうのもあるじゃないですか。
うすた:そうなんだよねぇ。難しいところ。ただ、一応括りとしてはアイドルでいたいじゃん?
ヒラノ:そうですね。
うすた:ファンもアイドルとして見たいわけよね。でもまあ、アイドルっぽくはないよね。でもそれは、今までの売り方の問題もあるわけじゃん(笑)。
―大人側の責任っていう。
うすた:そうそう、明らかに。たった1年でアイドルとしてやっちゃいけないことを死ぬほどやってきたわけじゃん(笑)。
ヒラノ:そうですね(笑)、色々やりつくしてますね。
うすた:だからいまさらアイドルですって言われても、無理はあると思うんだよね。これからは、もう突飛なことはやってもしょうがないじゃないかな? これ以上は打ち止めだと思う。
―ずっとドーピングしてるみたいなもんですからね。
うすた:もう、ギリギリの売り方じゃないですか(笑)。
ヒラノ:はい。やっぱり見た目で、本当にコテコテのアイドルさんが好きな人たちから拒絶されることが多くて。「このルックスでアイドルなのかよ」って最初の方はそればっかり言われ続けて、それで気がついたらこういう感じでどんどん突飛なことしていって。
うすた:そうだねぇ。だから、もう目標を絞っていくしかないよね。コテコテのアイドルのファンはつかないでしょうって(笑)。それで良いと思う。おれロックっぽいものばかり聴いてたけど、ロックファンもアイドル聴きたいと思ってるんだよね。で、BiSはそういう人達を取り込めると思う。Perfumeは取り込んだんですよ。で、あそこまで行ったわけでしょ?
ヒラノ:はい。
うすた:そういう層はまだいっぱいいると思う。だからその辺を狙えばいいんですよ、もうアイドルのファンは別に、狙わなくてもいいわけだし。
ヒラノ:そうですね。これからはロックファンの人たちにシフトしていきたい。
―シフト(笑)。
うすた:まあシフトもなにも最初からずっとそうだと思うけどね(笑)。あと、見た目で入るファンって離れやすいんじゃないかって気がするかな。漫画で言うと、絵が好きとか、なんとなく新しいから好きっていうタイプのファンは意外と離れやすいんですよ。だからわりと忘れ去られるのが早い。でも、音楽ファンって好きになったら結構長い間好きでしょ? だからそういうファンを取り込んだ方が、きっと息も長くなる。
―「素人っぽくなく見られるにはどうしたらいいか」が解決してないですね。
うすた:結局、会場の規模がでかくなれば、解決する問題かもしれない(笑)。最初はさ、やっぱりちっちゃいライブハウスとかでやってるとみんな素人くさく見えるでしょ? 周りの状況とか含めて見るわけですよ。その人がどのくらい人気なのかなとか。で、人気あると思うと、急にすごいものに見えてきたりするわけで。でも、歌とダンスはやった方が良いよね、絶対(笑)。
ヒラノ:そうですね。メジャーデビューも決まっちゃいましたし、このままではいられないなっていう気持ちです。基礎から学びたいです。
うすた:そうね。でも5人になってすごい良くなったよね。あの、フォーメーションが。やっぱ、色んな動きが出来るからかもしれないけど、きれいに見える。前はばらけてる雰囲気があったんだけど、5人ワシャワシャやってても揃って見える。5人になってからは、ちょっとワンランク上がった感じがあるんじゃないかと思うよ。
―では次に行きましょう。
ヒラノ:漫画家さんってアシスタントさんとお仕事されるじゃないですか。うすたさんが、周りの方のよさを引き出してお仕事をしやすくするために心がけてることとかがあったら、教えていただきたいなと思ったんですけど。
うすた:うちはおれがボスみたいな感じになっちゃうから、ちょっと状況違うかもしれないけど……あんまり決めごとを作らない(笑)。わりと放任ですね。うまく行ってた方じゃないかと思うんだけど。心開くことじゃない? きっと。
ヒラノ:自分から相手に対して。
うすた:そうそう。やっぱり人を信じるっていうことが大事ですよね。そしたら意外とみんな良くしてくれると思いますよ。
―のんちゃんは悩みを持ってるんですけど、周りに相談しないんです。
うすた:ああ。でもわかる、それ。
―この企画の大まかな趣旨は、それをしてみようっていう。
うすた:あーそうなんだ!(笑)
ヒラノ:人生の大先輩に教えていただくことで、自分もうまく心を開けるようになったら良いなっていう。
うすた:でも心開けないよねぇなかなか。おれも開けないんだよ。
ヒラノ:うすた先生は悩みがある時はどなたに相談するんですか?
うすた:自分で解決するしかない。もう自分で、ひとしきり籠って、ちょっと自分で走り行ったりし発散して。なんとかしていくしかない。
ヒラノ:自分で折り合いつけるんですね。
うすた:人に話してスッキリするもんなんですかね? 僕あんまそういうタイプじゃないんでわかんないんですけど。
―ヒラノの場合は、それをツイートでしちゃうんですよね。ブログとかTwitterでやっちゃう。
うすた:危ない危ない。
ヒラノ:もう、メンタルがあれですね、私。
うすた:ああいうのやるとファンの人が心配するじゃん。あれがよくないなと思って。おれ最近、人前に出る時はキャラ作って行こうと思ってる。求められる人間でいようくらいな気持ちでやってる。実は考えながら描くタイプで、すごく悩む。遅いの、描くのが。
ヒラノ:漫画をですか?
うすた:そう。で、おれがそういうことをちょっとTwitterでつぶやいたら「先生はサラサラって描いてるんだと思いました!」って書き込みされて、あ、そうなのか、と。おれもそっちの方が良いなって思って(笑)、そういうイメージ持たれてる方が良いんだろうなと思って、あまり言わないようにしてるの、そういうことを。
ヒラノ:そうですね。やっぱり求められてる自分でいることって大切なんですね。
うすた:そうそう、大事ですね、意外と。がっかりされたら嫌だもんね。
―最近ブログがネガティブな方向に行きがちだから。
ヒラノ:ちょっと切り替えます。
うすた:なんでメンバーには話さないの?
ヒラノ:話せないですね。コミュニケーション下手な性格が問題なんですけど。聞いてもらってるだけでも申し訳ない気持ちになって。
うすた:すんごいわかる(笑)。自分の話するだけでもちょっと申し訳ないくらいの気持ちだもんね。最近研究してるんだけど、よく話す人っているでしょ? 美容院とかでさ。この人はこんなに何を喋ってるんだろうってずっと聞いてたら、全部自分のことなんだよね。どうでも良い話ばっかりしてるの。
ヒラノ:(笑)。
うすた:この間も美容師さんと喋って、いきなりですよ、行って一発目の会話が「横浜のビールフェスティバル行きました?」って(笑)。「はぁ?」みたいな。そんな話1回もしたことないし、行くわけねえだろ!って思ったんだけど、それでいいんだって思って。自分のどうでもいい話でも、バンバン話していった方がいいんだよね。話された方が楽でしょ?
ヒラノ:そうですね、基本的に話してもらった方が。
うすた:おれもそうなの。自分があまり話さないタイプだから、どうでもいい話でも、ずっと話してもらってた方が楽なのよね。
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