デジタルコミュニケーションが社会を変える

『デジタルコミュニケーションが社会を変える』 Vol.8 築地場外市場×デジタルコミュニケーション あなたなら、どうする?

デジタルコミュニケーションが社会を変える Vol.8 築地場外市場×デジタルコミュニケーション あなたなら、どうする?

デジタルメディア、ソーシャルメディアが日常の一部となり、さらに日々、進化を続けるいま。この連載では「デジタルコミュニケーションの未来型」に迫るべく、最前線で活躍するクリエイターの進言から、明日のデジタルコミュニケーションアーティストたちの生の声まで、多彩な取材を通してその可能性を探ります。

前回はミュージシャン・bómiの最新ミュージックビデオを、デジタルハリウッドの「デジタルコミュニケーションアーティスト専攻」(DCA専攻)の学生たちが手がける挑戦を追いました。その後編をお届けする前に、今回はDCA専攻のもうひとつのチャレンジをご紹介。あの「築地場外市場」の活性化にデジタルコミュニケーションの力で挑むという貴重な機会が訪れました。最近では地域活性化の試みも、「うどん県。それだけじゃない香川県」などインターネットの拡散効果を取り入れた個性派キャンペーンが話題になり、プロの広告業界でも口々に「自分たちならどんな提案ができるか」と話のタネにするほどの新しい盛り上がりを見せています。そんななか、最前線の制作のプロたちも羨む、地域ブランドの確立された「築地」とのコラボレーションが実現。みなさんもぜひ、学生たちといっしょに考えながら、その顛末を見ていきましょう。

歴史ある築地とデジタルコミュニケーション、という意外性
築地場外市場

築地といえば、言わずとしれた「東京の台所」。新鮮な魚介類あふれる魚河岸や、周囲に発展した市場も含めた一帯が名所となり、国内外からの観光客も大勢訪れる場所。「築地場外市場」は、中央市場の盛況に合わせるように水産物商などが集い始め、自然発生的に発展をとげながら、都内最大の問屋街に成長をとげたエリアです。近年、築地市場の移転も議論されていますが、その結果に関わらず、場外市場のみなさんはこの地の賑わいを支え続けていきたいと願っています。

その牽引役が、NPOの「築地食のまちづくり協議会」。彼らの「若く新しい感性や自分たちだけでは知り得ない最先端の技術を、地域活性化に取り入れたい」という進取の気性が、DCA専攻の学生たちに新たな挑戦の舞台を与えてくれました。築地場外市場の魅力を、デジタルコミュニケーションの力でより広くアピールしていくというユニークな試みです。

またそこには、デジタルハリウッドが考える重要な2つの思想も関わっています。まず、「産官学」の連携。テクノロジーの進化とメディアのデジタル化は、産業構造をも大きく変化させています。その中で、新視点のサービスを自治体や企業など産業界と協同してつくり出し、次世代に不可欠な人材を育成すること。それが産業界全体の活性化にもつながるとの想いが、そこにはあります。

もうひとつは、やはりデジタルハリウッドが重視するOJT(On-the-Job Training)。これはウェブ業界、映像業界、各地で開催されるイベントなどさまざまな企業や自治体からの課題をもとに、実際にウェブやCGコンテンツ制作などを行うワークショップ型プログラムです。これまでにも、映画の公式サイトやテレビ番組のオープニングムービーなど、多くの組織とのコラボレーションを実現しています。

築地場外市場

とはいえ、今回はこれまでのOJTとも異なる要素が多いのも事実です。デジタルコミュニケーションの世界と比較的距離感の近いエンタメ業界、コンテンツ業界とは異なり、今回の舞台は歴史ある築地場外市場。しかも地域活性化という、幅広いアプローチが可能な(かつ必要な)領域です。果たしてどんなアイデアが提案できるのでしょうか?

自主性に委ねられた提案づくり。ウェブだけでは得られない生の体験をすべくまずは現地視察!

築地場外市場の活性化プロジェクトは、学生たちの自主的な提案をもとに進んでいきました。前回のbómiさんとのコラボでも活躍していた甲斐文子さんにその様子を聞きました。

Facebookの画面

甲斐:まず、授業の中で今回のプロジェクトの説明がありました。築地場外市場の地域活性化に向けたアイデアを、個人でもチームでもよいので提出することになり、提案の数も制限無しというかたちです。以降は市場のみなさんへのプレゼンに向けて、担当講師にも相談しながら各自がプランを固めていきました。具体的なプラン作りは授業以外の時間で各々が行うので、やりとりはFacebookのグループページを活用して行いました。

地域活性化とデジタル/ウェブ表現の関係

冒頭でも記した通り、香川県のキャンペーン「うどん県。それだけじゃない香川県」や、「おしい! 広島県」は特設ウェブサイト上からSNS等を介して拡散・共有され話題となった例、それぞれ要潤、有吉弘之という地元出身者の起用もさることながら、ついつぶやいたり、突っ込みを入れたくなる仕掛けは現在のネット状況を的確に抑えた手法ともいえる。同じ情報でも、伝え方にはさまざまなかたちがあることを教えてくれる。

うどん県それだけじゃない香川県

DCA専攻には、主に初心者向けの全日2年制コースと、経験者のための全日1年制コースがあります。今回はどちらからも参加者があり、両コースの混合チームも。参加学生のみなさんは、まずは築地場外市場の魅力を肌で感じようと、みんなで視察に出かけました。

築地場外市場

築地場外市場は、鮮魚貝類はもちろん、干し魚や鰹節などの乾物、さらに佃煮などの加工商品や、料理器具まで、食を中心にさまざまなアイテムを扱う専門店鋪で賑わっています。また、一般来場者にとっては、何と言っても飲食店群が大きな魅力。新鮮なネタをふんだんに使った寿司や海鮮丼をふるまう名店が、40件以上もあるのです。

初・築地のメンバーも含め、こうした市場の魅力をひとつひとつ訪ね歩きながら、学生たちは各々の感性でこの場所の特徴や、潜在的な魅力をもつかみ取ろうと真剣な表情。ただし、美味いものをほおばる瞬間だけはその口元も、思わずほころびますが…。

江戸っ子的な威勢の良さが粋な店員さんたちや、敷地周辺で見かけるターレー(TVで市場や魚河岸が映るとよく見かける、小型の運搬用。愛称は「パタパタ」)、またふだんの寿司屋ではあまり見かけない一品など、観光案内にふれるだけでは得られない情報を吸収すべく、歩き回った1日でした。この成果が、プロジェクトの各アイデアにどう反映されるか? プレゼンの日が迫ります。

築地場外市場
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