7月13日、プレゼン当日です。この日はDCA専攻の各発表者が講師陣と共に、「築地食のまちづくり協議会」のみなさんを訪ね、プレゼンテーションを実施。7組による9案が提示され、ここから採用案が9月に最終決定されます。
改めての挨拶を済ませ、いよいよプレゼン開始。今回の提案は、大きくわけてウェブコンテンツと、インタラクティブコンテンツの2種に分かれます。後者は、7月末オープンの総合案内所「情報市場ぷらっと築地」内への設置を想定。来場者への情報提供の場および休憩所として、また築地の食を切り口にしたイベント会場にもなる空間です。
プレゼンは各案3分。短いですが、限られた時間内で自らのプランをいかに効果的に伝えるかを考えた際、実際の現場でもこれくらいの時間枠がやはり鍵ではないでしょうか。
トップバッターはウェブサイト案のひとつ、大成泰さんら4人のチームが提案する「築地つまみ食いガイド パクッと築地ナビ」です。既存の築地場外市場 公式ホームページはそのままに、築地初心者や新たな若年層ターゲットに向けたサブサイトの作成案でした。実際に訪れて知った現地の魅力「魚だけじゃない!」「朝だけでなくお昼も賑わっている」「美味しいものを手軽に気軽に楽しめる」を起点に、旬の食情報と写真ページでわかりやすい導入サイトを、というコンセプト。今回多くの提案に盛り込まれた、Twitter、FacebookなどSNSでの共有・拡散案も示されました。
田口宗孝さんによるもうひとつのサイト案は、「食」をメインにサブサイトを新規制作する点では同様ながら、既存サイトの整理にも踏み込んだ内容でした。主にページ内のカラム数や写真サイズ変更など基本的な提案でしたが、新規サブサイトでは、DCA専攻で学んだ色彩学や、有志の「DCA専攻写真部」の活動も巻き込んでよりビジュアル面を活かしたい意向を強調。「食材だけでなく、素敵な店員や店構えも含め、食べ歩きとお土産選びに特化したサイトができれば」との抱負も述べられました。また、携帯やスマホでも快適に楽しめるレスポンシブデザインのサイトにできればとの表明もありました。
市場側のみなさんからは、「コンテンツには、市場の中にいると考えてもみなかったアイデアもあった。現状サイトへの率直な意見ももらったので、今後につながればと思う」との声が。また「初心者から業者筋まで対象になるサイトを我々がどう考えてきたか、経緯も伝えたうえでさらに話し合っていく場が今後あるといい」などの提案もありました。さらに「ARを取り入れても面白いのでは」との意見が出るなど、新旧文化の共存する築地の方々の鋭さが垣間見える場面も。
インタラクティブコンテンツの提案は、既存コンテンツのないまっさらな状態からということもあり、より多彩なアイデアが登場しました。
大内仁美さんと古性希望さんは「スマートフォン向けイケメンサーチアプリケーション 今、愛に行きます。」を提案。取材で訪れて、イケメン店員さんの多さを感じたという彼女たちの体験から生まれたプランです。アプリを起動し「目的別」「顔種類」「年齢別」の3項目からいずれかを選択。すると市場を代表するイケメンが表示され、目当てのイケメンのプロフィールと、彼らが働くお店までのルートが表示され、会いに行けるという仕組み。
「食べる、買い物する楽しみに加え、ドキドキ感という違う方面から築地を楽しんでもらう」ことを目指した案です。対象イケメンはもちろん自分たちで市場を歩いて探したいとの抱負には、プレゼン会場に笑いが起き、和やかな雰囲気に。狙いとしては、若年層がより市場に訪れてくれるきっかけや、常連さんたちが行きつけ以外を覗いてみる契機づくりの面もあるのでしょう。
村越弘昌さんの提案「graph」は、築地にまつわるさまざまなデータを、インフォグラフィックの手法でユニークなグラフにして紹介するもの。休憩所に設置を想定しています。たとえば各地から集まる海産物の種類や生産地や、場外市場の歴史におけるお店の種類の分布・変遷など、さらにこうした個々の視点の意外な組み合わせも視野に、見て楽しく、ためにもなるグラフィック表現を提示。利用者の操作でグラフに動きが出たり、表示を制御できるなど、インタラクティブ性も取り入れる方針です。
この提案では、歩いて回るだけではわからない、市場の歴史や現状に光をあてているのが特徴です。さらにその紹介方法にDCA専攻で習得中の技術を活かすことで、従来見えなかった魅力を引き出そうという狙いも感じられます。子供からお年寄りまで、直感的に楽しめる点もアピールポイントでした。
市場側の方々からは「実現すればきっと若い人向けにもいい。どういうデータを用意するかが重要になるはず」「こうしたアプローチの場合、お客さんからの信用を失わないよう、きちんとしたデータで行うこともぜひ共有しておいてほしい」などのコメントがありました。
ほか、瓜田裕也さんと杉山康太さんの「Change to a Fish」は、Kinectを利用したフェイストラッキング技術を用いて、来場者の顔写真を築地名物の海洋生物に合成する、ちょっとユーモラスな試み。また前出の甲斐文子さんの「漢字釣り」はやはりKinectを使った体感ゲームで、壁に投影された読めそうで読めない魚類の漢字を、正しいひらがな読みを針変わりに釣り上げるというものでした。1年制と2年制の混合チームで臨んだ邉春貴保さんらは、休憩所のモニターを使った「tsukiji channel」を提案。築地発のテレビ局的な設定で、既存・新規の両映像コンテンツを活かした20分ほどのプログラムと、視聴者情報的な関連Twitter紹介による構成案を紹介しました。
各アイデアにじっくり耳を傾けた市場側のみなさんからは、「楽しんでもらうことがさらなる利用や購買につながれば」としつつも、中には「遊び心がもっとあっていいし、一方ではゲームの落とし所が“今晩の食材にこれはどうですか”などの紹介につながるほうが、ここで本気で商売している身にはありがたい」と率直な意見も。これは逆に言えば、専門家への仕事の依頼として真剣に対峙してもらっている証。いずれも重要な現場の声として、各学生に響いたと思われます。
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