古川日出男の長編小説『南無ロックンロール二十一部経』がついに完成した。「ロックンロール」をキーワードに、20世紀を捉え直すという大胆な試みが行われている本作は、古川本人が「自分の代表作になるという覚悟を決めて作った」と語るように、まさにこれまでの集大成と呼ぶに相応しい、濃密で、奇想天外な傑作である。その古川が今回対談相手として熱望したのが、後藤正文。言わずと知れた、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのフロントマンだ。二人はかねてよりお互いのファンであることを公言し、2009年には古川の対談集『フルカワヒデオスピークス!』で一度対談を行っているのだが、そのときと今とでは、また大きく状況は変わっている。2011年の震災を経て、福島の出身ということもあり、そこにコミットした作品も発表している現在の古川と、自ら編集長を務める『THE FUTURE TIMES』の発刊など、オピニオンリーダーとしての側面も強まりつつある現在の後藤が、今改めて対談をすることには、とても大きな意味がある。それは実際にインタビューを行う前から、自明の理だったと言えよう。
かくして、二人の対談は軽々と2時間に及び、こうして前後編の形でお届けすることとなった。信頼を寄せ合う先輩・後輩のようであり、同じ表現を追い求める仲間であり、ときにはライバルでもあるような二人の関係性は実に理想的で、対談の司会を務めた僕の役目は、背中をツンと押すことだけ。そうすれば、二人の会話はポジティブな慣性の法則に従って、ぐるぐると勢いよく転がり出す。そう、古川の文章のように、アジカンの音楽のように、この対談もまた「ロックンロール」そのものなのだ。
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