秘密ロッカーのヒミツ大捜索

秘密ロッカーのヒミツ大捜索 最終話:遂に実現した、秘密ロッカーの「ヒミツ」

最終話:遂に実現した、秘密ロッカーの「ヒミツ」

秘密捜索メモ#05:ライブが終わり、アッコが出てくるのを待って声をかけた

タナカ

アッコ

タナカ

タナカ

タナカ

―こんな場所ですいません。

アッコ

アッコ:いえいえ。インタビューとか、生まれて初めてです。

タナカ

―なんでインタビューが嫌だったんですか?

アッコ

アッコ:うーん、自分の思ってることをちゃんと伝えられる自信がなくて。言った傍らから「あ、違う」とか思っちゃうし。それに、恥ずかしいんです、単純に。

タナカ

―まぁ、かしこまった状況だと話しづらいですしね。でも、ステージで歌うことのほうが、よっぽど勇気がいることだと思うんですけど。

アッコ

アッコ:やっぱり歌になると違うので。ただ、アルバムでも1曲すごく恥ずかしい曲があって。

タナカ

―“同じ夜のうちに”ですか?

アッコ

アッコ:そうです。わかりますか?

タナカ

―この曲はなんか違うなっていうのはあったんで。

アッコ

アッコ:自分の内面をストレートに書きすぎた曲はやっぱり恥ずかしいです。でも、その曲に関しては、もうそれしかなかったので。

タナカ

―アッコさんはなんで音楽を始めようと思ったんですか?

アッコ

アッコ:あの、小っちゃい頃に遡っちゃいますけど、なんにもできない子だったんですよ。勉強もできないし、運動もできないし、友達も上手に作れないし、いい子にもできないし。いい子にならないと大人になれないと思っていたから。もうずっとスーパーのレジなんか私に打てるわけないと思ってたんですけど、うちの姉ちゃんがちょっとバンドとか好きで、その影響で15才くらいのときにブルーハーツを聴いたんです。それで、<ありのままでいいじゃないか>(“ロクデナシ”)って生まれて初めて言われて、「いいんだ!」っていう衝撃を受けて。初めて好きなものができたというか。すごいうれしかったんです。

タナカ

―そうだったんですね。そのときに目覚めて、バンドをやろうと?

アッコ

アッコ:はい。中学校の卒業文集に、将来はドラムかベースかギターでバンドをやるって書いてあります。ボーカルは絶対嫌だと思ってたんですけど、いつの間に(笑)。でも、ずっと客席にいたほうだったんです。バンドのライブが見たくて、ライブハウスに通って。やりたいやりたいと思いつつ、10年くらいふつふつとしてました。

タナカ

―なんで10年もかかったんですか?

アッコ

アッコ:なかなかメンバーが見つからなくて。メン募してもいい人がいなかったり、見つけたと思ってもスタジオでちょっとやってダメになったり。そしたら自分もフラフラしだしたり。私、自分でちゃんとバンドをやるのは、秘密ロッカーが初めてだったんですけど、一緒にやりたいと思える人じゃなきゃ、どうしても嫌だったんです。最初のドラムが決まるまでに20人くらい会ってて、ベースも10人とか。

タナカ

―そんなに!

アッコ

アッコ:結成したときとは私以外みんなメンバー変わってますけど、ギターもタモに出会うまでに30人くらい会ってて。タモの1人前に会った人は、すごいおしゃれで、ギターもうまくて、好きな音楽も似てて、一緒にスタジオに入ってみても超よかったんですけど、なんか一緒にやりたいと思えなくて。当時のドラムとベースは「この人でいいじゃん!」って言ってたんですけど、どうしても一緒にやりたいと思えなくて、「ごめんなさい」って言った次にタモが来たんです。その頃のタモはコードをジャ〜ンと弾くしかしなかったし、なんにもしゃべらなかったんですけど、なんかこの人とやりたいなと思って。それがなんだったのか、いまでもよくわからないですけど。

タナカ

―もうフィーリングとしか言いようがないですね。秘密ロッカーっていう名前の由来は?

アッコ

アッコ:何かで読んだ物語が元になってるんですけど、クラスに全然馴染めない友達もいない子が休み時間のたびに自分のロッカーを開けるんです。そこには好きなバンドの写真やフライヤーがベタベタ貼ってあって、それに話しかける様に眺めては「今日もがんばろう!」って勇気をもらって、まだ誰にも見せたことはないけど友達ができたら見せたいなぁと思ってるっていう物語のそのロッカーを、私が勝手に「秘密ロッカー」と呼んでて。

タナカ

―ロックンロールのロッカーじゃなかったんですね!

口下手ではあるが、バンドのことについて、自分のことについて、丁寧に説明してくれたアッコ。まさか秘密ロッカーの「ロッカー」が、ロックンローラーを指すロッカーではなく、学校のロッカーのことだとは思いもよらなかったが、その言葉からは音楽に対する熱い気持ちがひしひしと伝わってきた。様子を窺いながら、少しずつ突っ込んだ質問を投げかけてみた。

タナカ

―最初に秘密ロッカーについて調べ始めたときに、血まみれでライブをやったとか、出禁になったライブハウスがあるとか、そんな噂にたどり着いたんですけど、真相は?

アッコ

アッコ:血まみれになったのは、よく小っちゃいライブハウスで、とにかくみんな暴れてたので……。タモのギターのヘッドで私の頭をざぶっと切っちゃって、血がドバっと出たりとか。ドラムに突っ込んで、シンバルで耳がスパっと切れたりとか。タモもアッキーもよく怪我して血まみれになったり。

タナカ

―聞いてるだけで痛いです……。出禁っていうのは?

アッコ

アッコ:タモの前のギターのときの話ですけど、横浜の某ライブハウスに出たときに、そのギターと客がワッとなって、ドラムセットに突っ込んだら、ハコの人から首根っこ掴まれて「出てけ!」って。それで「弁償はいいから出禁で」って。

タナカ

―お客さんとドラムセットに突っ込むって状況が理解できないんですけど……。

アッコ

アッコ:盛り上がったお客さんがパーってステージに上がってきて、ギターと一緒に突っ込んでました。

タナカ

―まぁ、事故とかじゃないなら、怒られて当然ですね(笑)。最近はそういうこともなく?

アッコ

アッコ:そうですね。自然とやらなくなりました。

タナカ

―いまお話をしているアッコさんは、ライブとは違って穏やかじゃないですか。ライブではスイッチみたいなものが入るんですか?

アッコ

アッコ:自分ではあんまり……、同じだと思ってるんですけど。

タナカ

―同じではないですね(笑)。友達とかに言われません?

アッコ

アッコ:言われます。

タナカ

―ライブのときは、どんなことを考えてるんですか?

アッコ

アッコ:うーん……。緊張もありつつ、楽しみというか。

タナカ

―ワクワクとドキドキみたいな。歌詞を見ていると、怒りとか、葛藤とか、そういうものを感じるんですけど、どんなことを思って歌詞を書いたり曲を作ったりしてるんですか?

アッコ

アッコ:なんですかね……。タモと共作しているものは別として、「こういうこと言いたい」みたいなぼんやりしたイメージがあって、なんとかそこに持っていくみたいな。なんか一言、これだけは言いたいみたいなのがあって。それを言うために前後を作っていく感じです。

タナカ

―なんか闇というか、人間不信みたいなものが原動力になってるんじゃないかと思ったりするんですけど、実際のところどうなのかなって。

アッコ

アッコ:「はい」とは言いづらいですね(笑)。でも、人間は好きになりたいですね。

タナカ

―好きになりたい(笑)。あんまり歌詞のことを説明したくない人もいると思うので、言える範囲でいいんですけど、例えば“ニコ”の<反吐が出る真実を裏切って裏切って>とか、何があったんだろうって。

アッコ

アッコ:そこはタモが書いた歌詞です。

タナカ

―何かの出来事をきっかけに曲ができる感じなんですか?

アッコ

アッコ:ごちゃ混ぜですね。でも、うん……。あんまり歌詞を説明したくないんです。決してわかりやすい歌詞ではないので、「なんで?」って聞かれることも多いんですけど、曲を聴いて、何か感じてくれれば、それでいいと……。

タナカ

―受け止め方はそれぞれでいいと。でも、何か嫌なことがベースにはなってるんですか?

アッコ

アッコ:なんですかね。でも、怒りとかも、生きてるってことじゃないですか。悲しいとか、傷ついた、傷つけてしまったとかも。言ってしまえば無気力だって、無気力だと自覚したときに、なんとかしようと思うのが生きてることだし。

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