最終話:遂に実現した、秘密ロッカーの「ヒミツ」
―こんな場所ですいません。
アッコ:いえいえ。インタビューとか、生まれて初めてです。
―なんでインタビューが嫌だったんですか?
アッコ:うーん、自分の思ってることをちゃんと伝えられる自信がなくて。言った傍らから「あ、違う」とか思っちゃうし。それに、恥ずかしいんです、単純に。
―まぁ、かしこまった状況だと話しづらいですしね。でも、ステージで歌うことのほうが、よっぽど勇気がいることだと思うんですけど。
アッコ:やっぱり歌になると違うので。ただ、アルバムでも1曲すごく恥ずかしい曲があって。
―“同じ夜のうちに”ですか?
アッコ:そうです。わかりますか?
―この曲はなんか違うなっていうのはあったんで。
アッコ:自分の内面をストレートに書きすぎた曲はやっぱり恥ずかしいです。でも、その曲に関しては、もうそれしかなかったので。
―アッコさんはなんで音楽を始めようと思ったんですか?
アッコ:あの、小っちゃい頃に遡っちゃいますけど、なんにもできない子だったんですよ。勉強もできないし、運動もできないし、友達も上手に作れないし、いい子にもできないし。いい子にならないと大人になれないと思っていたから。もうずっとスーパーのレジなんか私に打てるわけないと思ってたんですけど、うちの姉ちゃんがちょっとバンドとか好きで、その影響で15才くらいのときにブルーハーツを聴いたんです。それで、<ありのままでいいじゃないか>(“ロクデナシ”)って生まれて初めて言われて、「いいんだ!」っていう衝撃を受けて。初めて好きなものができたというか。すごいうれしかったんです。
―そうだったんですね。そのときに目覚めて、バンドをやろうと?
アッコ:はい。中学校の卒業文集に、将来はドラムかベースかギターでバンドをやるって書いてあります。ボーカルは絶対嫌だと思ってたんですけど、いつの間に(笑)。でも、ずっと客席にいたほうだったんです。バンドのライブが見たくて、ライブハウスに通って。やりたいやりたいと思いつつ、10年くらいふつふつとしてました。
―なんで10年もかかったんですか?
アッコ:なかなかメンバーが見つからなくて。メン募してもいい人がいなかったり、見つけたと思ってもスタジオでちょっとやってダメになったり。そしたら自分もフラフラしだしたり。私、自分でちゃんとバンドをやるのは、秘密ロッカーが初めてだったんですけど、一緒にやりたいと思える人じゃなきゃ、どうしても嫌だったんです。最初のドラムが決まるまでに20人くらい会ってて、ベースも10人とか。
―そんなに!
アッコ:結成したときとは私以外みんなメンバー変わってますけど、ギターもタモに出会うまでに30人くらい会ってて。タモの1人前に会った人は、すごいおしゃれで、ギターもうまくて、好きな音楽も似てて、一緒にスタジオに入ってみても超よかったんですけど、なんか一緒にやりたいと思えなくて。当時のドラムとベースは「この人でいいじゃん!」って言ってたんですけど、どうしても一緒にやりたいと思えなくて、「ごめんなさい」って言った次にタモが来たんです。その頃のタモはコードをジャ〜ンと弾くしかしなかったし、なんにもしゃべらなかったんですけど、なんかこの人とやりたいなと思って。それがなんだったのか、いまでもよくわからないですけど。
―もうフィーリングとしか言いようがないですね。秘密ロッカーっていう名前の由来は?
アッコ:何かで読んだ物語が元になってるんですけど、クラスに全然馴染めない友達もいない子が休み時間のたびに自分のロッカーを開けるんです。そこには好きなバンドの写真やフライヤーがベタベタ貼ってあって、それに話しかける様に眺めては「今日もがんばろう!」って勇気をもらって、まだ誰にも見せたことはないけど友達ができたら見せたいなぁと思ってるっていう物語のそのロッカーを、私が勝手に「秘密ロッカー」と呼んでて。
―ロックンロールのロッカーじゃなかったんですね!
―最初に秘密ロッカーについて調べ始めたときに、血まみれでライブをやったとか、出禁になったライブハウスがあるとか、そんな噂にたどり着いたんですけど、真相は?
アッコ:血まみれになったのは、よく小っちゃいライブハウスで、とにかくみんな暴れてたので……。タモのギターのヘッドで私の頭をざぶっと切っちゃって、血がドバっと出たりとか。ドラムに突っ込んで、シンバルで耳がスパっと切れたりとか。タモもアッキーもよく怪我して血まみれになったり。
―聞いてるだけで痛いです……。出禁っていうのは?
アッコ:タモの前のギターのときの話ですけど、横浜の某ライブハウスに出たときに、そのギターと客がワッとなって、ドラムセットに突っ込んだら、ハコの人から首根っこ掴まれて「出てけ!」って。それで「弁償はいいから出禁で」って。
―お客さんとドラムセットに突っ込むって状況が理解できないんですけど……。
アッコ:盛り上がったお客さんがパーってステージに上がってきて、ギターと一緒に突っ込んでました。
―まぁ、事故とかじゃないなら、怒られて当然ですね(笑)。最近はそういうこともなく?
アッコ:そうですね。自然とやらなくなりました。
―いまお話をしているアッコさんは、ライブとは違って穏やかじゃないですか。ライブではスイッチみたいなものが入るんですか?
アッコ:自分ではあんまり……、同じだと思ってるんですけど。
―同じではないですね(笑)。友達とかに言われません?
アッコ:言われます。
―ライブのときは、どんなことを考えてるんですか?
アッコ:うーん……。緊張もありつつ、楽しみというか。
―ワクワクとドキドキみたいな。歌詞を見ていると、怒りとか、葛藤とか、そういうものを感じるんですけど、どんなことを思って歌詞を書いたり曲を作ったりしてるんですか?
アッコ:なんですかね……。タモと共作しているものは別として、「こういうこと言いたい」みたいなぼんやりしたイメージがあって、なんとかそこに持っていくみたいな。なんか一言、これだけは言いたいみたいなのがあって。それを言うために前後を作っていく感じです。
―なんか闇というか、人間不信みたいなものが原動力になってるんじゃないかと思ったりするんですけど、実際のところどうなのかなって。
アッコ:「はい」とは言いづらいですね(笑)。でも、人間は好きになりたいですね。
―好きになりたい(笑)。あんまり歌詞のことを説明したくない人もいると思うので、言える範囲でいいんですけど、例えば“ニコ”の<反吐が出る真実を裏切って裏切って>とか、何があったんだろうって。
アッコ:そこはタモが書いた歌詞です。
―何かの出来事をきっかけに曲ができる感じなんですか?
アッコ:ごちゃ混ぜですね。でも、うん……。あんまり歌詞を説明したくないんです。決してわかりやすい歌詞ではないので、「なんで?」って聞かれることも多いんですけど、曲を聴いて、何か感じてくれれば、それでいいと……。
―受け止め方はそれぞれでいいと。でも、何か嫌なことがベースにはなってるんですか?
アッコ:なんですかね。でも、怒りとかも、生きてるってことじゃないですか。悲しいとか、傷ついた、傷つけてしまったとかも。言ってしまえば無気力だって、無気力だと自覚したときに、なんとかしようと思うのが生きてることだし。
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