2010年、武井優心さん(Vo,Ba)を中心に結成されたロックバンド、Czecho No Republic。洋邦問わず、様々な音楽を貪欲に取り込む彼らの音楽性は、2013年にモデルとしても活躍しているタカハシマイさん(Cho,Syn,Gt,Per)と砂川一黄さん(Gt)を迎えて、さらに進化し広がりを見せています。突き抜けるようなポップネスと、どこかネジレた実験性。そんな両極を行き来する絶妙なバランス感覚は、どうやら武井さんのコンプレックスやネガティブ思考と表裏一体のよう。そして紅一点のタカハシさんも、バンド加入前には大きな葛藤を抱えていたそうです。そこで今回は、二人の音楽的ルーツから出会ったときのエピソード、そして新曲“For You”にまつわる素敵な話まで、たっぷり聞いてきました。
テキスト:黒田隆憲 撮影:豊島望
Czecho No Republic
(ちぇこ のー りぱぶりっく)
2010年3月、武井優心(Vo,B)、山崎正太郎(Dr)の2人を中心に結成。2011年2月に八木類(Gt)が加入。2013年元旦、モデルとしても大きな活躍をしているタカハシマイ(Cho,Syn,Gt,Per)、砂川一黄(Gt)が加入。端正なルックスと唯一無二のドリーミー&キャッチーな音楽性により、各地大型フェス出演や『第4回CDショップ大賞』にノミネートされるなど、各方面から注目を集める。2013年10月、1stアルバム『NEVERLAND』でメジャーデビュー。2015年2月4日には2ndシングル『For You』をリリースした。「POCKY CHOCOLATE×Choco No Republicスペシャルパッケージ」と題して、「ポッキー」のパッケージにCzecho No Republicのアーティスト写真やバンドロゴがデザインされたパッケージコラボレーションでも話題を呼んだ。
二人が音楽にはまったきっかけのアーティストは?
子どもの頃は「お絵描き教室」や「スイミングスクール」など、習い事のハシゴをしていたという武井優心さん。自ら進んでというよりは、親にすすめられるがまま受動的に通っていた彼が、音楽に夢中になったのは中学生の頃でした。音楽番組に出演していたスピッツを見て、「自分もバンドを組みたい」と思ったのがきっかけだったとか。一方タカハシマイさんは、小さい頃から歌うのが大好きで、学校でも声楽の授業を楽しみにしていたそうです。
武井:スピッツから色々な音楽を聴いていくうちにパンクに出会って、そこで価値観が大きく変わりました。THE HIGH-LOWSのヒロトとマーシーが大好きで、彼らがインタビューで口にしているバンドを掘るようになったのがきっかけなんですけど、「パンク以外はかっこよくない」「アコギ使うなんてダサイ」とか思ってた時期もありましたね(笑)。
タカハシ:私は小6くらいの頃かな、椎名林檎さんに出会って。それまで全く聴いたことのない音楽だったから衝撃を受けて、林檎さんが紹介してたRadioheadやベンジー(浅井健一)、ビョークなどを聴くようになって、どんどんハマっていきました。ファッションに興味を持つようになったのもその頃です。7つ上の従姉妹が『Zipper』を読んで、古着を着ていたのがすごくかっこよく見えて、個性的な服に興味が湧いてきたんですよ。でも親がすごく厳しかったので、内緒で一人で原宿に買い物に行ってました。
誰にも聴かせることのなかったオリジナル曲
再生ボタンを押した瞬間がバンドの始まり
武井さんが初めて曲を書いたのは、高校生の頃。当時一緒にバンドを組んでいた級友の家に遊びに行ったとき、「オリジナル曲でも作ってみようよ」という話になったのがきっかけでした。友人がギターで適当にコードを弾いて、そこに武井さんがメロディーをつける。できあがったものは、ラモーンズのようなポップパンク風の曲だったそうです。
武井:それ以降は全く曲作りをしてなかったんですけど、Czecho No Republic(以下、チェコ)の前に組んでいたバンド(Veni Vidi Vicious)をやってた頃から、iPhoneの「FourTrack」っていう簡易的な録音ができるアプリを使ってまた曲を作り始めたんです。思いついたメロディーとギターを入れておく程度だったんですけど。誰に聴かせるわけでもなく、「一応録っておこう」くらいの気持ちでした。人に聴かせるのが恥ずかしかったんです。「ダサイ」って思われたら一巻の終わりじゃないですか? 曲って、その人の全部が詰まっていると思うし、「この人の中から出てきたものってこんな程度なんだ」って思われたら、もう一生誰にも聴かせられないと思って。
そんな楽曲の「断片」を初めて人に聴かせたのは、奇しくもVeni Vidi Vicious活動休止のタイミングでした。当時のボーカルが活動休止を決定し、残りのメンバーを中心に結成されたのがチェコの始まりです。
武井:ボーカル以外のメンバーと「これからどうしよう」っていう会議をしたときに、俺のiPhoneが火を噴いたんです(笑)。「実は、何曲か作っている曲があるんですよね」って言って聴かせたら、「いいじゃん!」ってみんなが言ってくれて。当時はほとんどギターを弾けなかったので、単純なコードにメロディーと単音のギターを絡ませただけのものだったんですけど、それがよかったみたいです。
一方で、タカハシさんが曲作りを始めたのは、高校生の頃だそう。
タカハシ:当時作っていたのは、すごく暗い曲調です(笑)。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTとかガレージロックを聴いてて、バンドも組んでたんですけど、メンバーはみんな男の子でボーカルの私はがなるというか叫ぶような感じの曲をやってました。今とは全然違いますよね(笑)。
「プライドないんですか?」
タカハシが武井に出会ったときに放った一言
2010年11月、当時は4人組として活動していたチェコは、1stミニアルバム『erectionary』をタワーレコード限定でリリースすると、各地で徐々に話題となっていきました。武井さんとタカハシさんが出会ったのも、ちょうどその頃です。
武井:「次は全国流通盤を出そう」という話になったとき、「女性の声がどうしても欲しい」と思って。会う人会う人に「誰かいい女性ボーカリストいない?」って聞いて回ってたんですよ。でもなかなかいないんですよね、イメージに合う人が。そんなときにタカハシを紹介されたんですけど、会う前に「読者モデルをやってる」って知って、「じゃあハズレだろうな。ただの歌いたがりだろう」って勝手に決めつけてたんです(笑)。でも実際に会ったら、待ち合わせていたお店に入って来た瞬間に周りの空気が変わるくらい、すごいオーラだった。「異物だ!」って思いましたね。それですぐに「スタジオ入ろうよ」って言って、実際に歌ってもらったらこれが上手くて。
タカハシ:私は、武井さんの第一印象はあまりよくなかったです(笑)。初めて一緒にスタジオに入った日、リハのあとにご飯に行ったんですけど、ずっとネガティブなことばっかり言うんですよ。「俺、かっこよくないしなあ」とか「ボーカルに自信がない」とか。これから一緒にやっていこうっていう話し合いの席で、そんなことばっかり言ってるから「大丈夫なのか、このバンド」って(笑)。
武井:「プライドないんですか?」って言われたよね(笑)。他のバンドを羨むようなことばっかり言ってたから。よくこんな人と一緒にやろうって思ってくれたよね。俺だったら逃げると思う。
タカハシ:逆にそれが、「やってやろうじゃん」っていう気持ちにつながったんだと思う。
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