快適な根城にしつらえた
ceroの実験を形にする機材たち
世田谷区奥沢にあるPastoral Soundは、日本における舞台音響効果の草分けである園田芳龍氏の精神を受け継ぎ、選曲家・音響効果・音楽プロデューサーの園田芳伸氏によって1977年に設立された会社で、レコーディングスタジオとしてはまだスタートして8年だそうです。録音ブースはメインブース、ピアノブース、単楽器ブースに分かれており、高い天井のブースには太陽の光も差し込み快適な居心地。上のフロアには壁いっぱいに本が並び、オシャレなポスターなども貼ってあって堅苦しさは微塵もありません。ライブのPAエンジニアを務める得能直也氏から勧められたceroは、『My Lost City』からここをメインスタジオとして使用し、『Yellow Magus』のレコーディングもここでおこなったそうです。高城さん曰く、「一番気に入っているのは美味しいコーヒーがたくさん飲めるところ(笑)。それに、スケジュール的に無理な相談にも乗ってくれるから助かっています。自分たちがやりたいサウンドを自由に実験できる場としては、これ以上ない環境ですね」とのこと。
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KORG「KAOSS PAD QUAD」
高城さんの「声のエフェクター」として、ライブで大活躍しているのがこのKORG「KAOSS PAD QUAD」。細かくパラメーターを設定するのではなく、ツマミもシンプルでコンパクトエフェクターのようだし、指を使ったパッド操作が感覚的にできるところが気に入っているそうです。
高城:ライブではいつもマイクは2本立てていて、1本はメイン、もう1本はKAOSS PAD QUADに直接つないでいるんですよ。ceroの曲って、海の中にいるような雰囲気が多いから、フランジャーをかけると「ブクブクブク……」ってなって、水の中からしゃべりかけているような効果が生まれる。そういう演出に一役買っていますね。レコーディングのときは、パーカッションなどにかけて、パッドをランダムにいじると指の位置でディレイタイムが変わるので、それで音程を付けたりしています。
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ZOOM「HD8」
曲作りなど、自宅での制作にはこのMTRを使用しているという高城さん。DAW(デジタルオーディオワークステーション)ソフトによる音楽制作が主流となっている昨今、単体のMTRを使っているのはとても珍しいケースです。高校のとき、初めてZOOMのHDシリーズを買って以来のユーザーで、本機種は2、3年前に中古で買ったとのこと。
高城:僕はceroの中で唯一パソコンで音楽制作ができない人間で……。とても苦手なんですよね。未だにこのHD8にマイクをつないでデモを作ったり、ここで作った音をPro Toolsに流し込んで使ったりしています。そのまま本チャンで使うこともありますよ。操作は慣れているのでとてもスピーディーに動かせますね。リズムマシンも搭載されているし、非常に便利です。今はさすがに単体のMTRを使って曲作りしている人は、そんなにいないだろうなと思って敢えて持ってきました(笑)。
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KORG「KingKORG」
Prophet-5やOberheimなど、往年のアナログシンセを非常にリアルに再現する本機種を最近入手し、『Yellow Magus』のレコーディングではリードシンセとして使いまくったという荒内さん。これまでシミュレーター系のシンセといえば操作の難しさが難点だったのですが、いい意味で簡略化されたインターフェイスが非常にお気に入りだとか。
荒内:オシレーターやフィルターのツマミをいじれば必ず音に反映されるし、感覚的に動かせるのが嬉しいですね。自宅ではUSBでパソコンと繋げて、音楽制作のマスターキーボードとしても使ってます。それに、本体がとても軽いのもポイント高いです。家でいじってて、「あ、この音はライブでも使いたい!」と思っても、重いと持ち運ぶの大変じゃないですか(笑)。これはライブに持って行きたくなるシンセですね。
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KORG「SV-1」
音色の良さに惹かれ、『My Lost City』のツアーから本機種を使い始めた荒内さん。いろいろ試してきたシンセの中で、生の鍵盤楽器、とくにエレクトリックピアノ系の音色が「抜群に良かった」そうです。真空管が搭載されているので、アンプを通したような歪みサウンドを作ることも簡単。バンドサウンドの中でも埋もれず前に出てくれるので重宝しているとか。
荒内:プリセットの選択肢があまり多くないのですが、それが実はポイントだったりします。家で作業するにしても、ライブで使うにしても、プリセットが膨大にあるとかえって迷ってしまうことがあるんですよね。ちゃんと使える音色が最低限入っているのが、実はものすごく重要なんです。生ピアノはもちろん、ウーリッツァーやローズ、クラビネットにオルガンと、どれもいいですね。僕はディレイタイムを無限にかけたエレピの音を登録してあって、ライブの始まりでよく演奏しています。
世界中にあふれかえる様々な音楽スタイルを、縦横無尽にクロスオーバーしながら「ここではない、どこか=エキゾチカ」を求め続けるcero。そんな彼らの活動は、突き詰めていけばきっと「私たち日本人とは何か?」を再発見することに繋がるのではないでしょうか。彼らが敬愛する細野晴臣も、アメリカ音楽を極めていく中で「ディスカバリージャパン」へと行き着いたように、ceroもまた、現代を生きる我々日本人のアイデンティティーを見出してくれることでしょう。
- コンピューター
- Apple「MacPro 12Core(2.4GHz 6core×2)16GB Memory」
- DAWソフト
- AVID「ProTools HD 11 & 10」
- オーディオインターフェース
- AVID「ProTools HD I/O」
- AVID「ProTools 192 I/O」
- レコーダー
- ZOOM「HD8」(高城さん私物)
- SONY「PCM7040」
- SONY「PCM-R700」
- TASCAM「DA-98」
- アウトボード
- Millennia「HV-3D(8ch pre amp)」
- AMEK「9098」
- NEVE「33609」
- 音源
- KORG「KingKORG」(荒内さん私物)
- KORG「SV-1」(荒内さん私物)
- エフェクター
- KORG「KAOSS PAD QUAD」(高城さん私物)
- モニター
- Genelec「S30」
- Genelec「1029A」
- YAMAHA「NS-10MC」
- YAMAHA「YST-SW800(サラウンドウーハー用)」
- モニターアンプ
- Amcron「D-150A」
- マイク
- Neumann「U87ai」×2
- SANKEN「CU-41」×2
- AKG「C414」×3
- ヘッドフォンモニター
- SPL「AUDITOR」
- ヘッドフォン
- SONY「MDR-Z1000」
取材協力:Pastoral Sound Studio
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cero『Yellow Magus』(CD+DVD)
2013年12月18日発売
価格:1,890円(税込)
KSCL-2314
[収録楽曲]
[CD]
1. Yellow Magus
2. 我が名はスカラベ
3. Ship Scrapper
4. 8points[DVD]
1. "My Lost City Tour Document"
『「Yellow Magus」 発売記念ワンマンツアー』
2014年1月18日(土)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:大阪府 梅田CLUB QUATTRO
料金:前売3,300円(ドリンク別)SOLD OUT!
2014年1月19日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
料金:前売3,300円(ドリンク別)
2014年1月25日(土)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:東京都 SHIBUYA-AX
料金:前売3,300円(ドリンク別)SOLD OUT!
『Booked!』
2014年3月8日(土)OPEN 12:00 / START 13:00
会場:東京都 新木場 STUDIO COAST
出演:
cero
toe
mouse on the keys
ROTH BART BARON
NINGEN OK
and more
料金:前売3,500円 当日4,000円(共にドリンク別)
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