SUPERCARの解散からソロ活動へ
独特の「サイケな声」でできること
2005年、新木場STUDIO COASTにて行われたライブをもってSUPERCARは解散。早くも翌2006年に『Coffee & SingingGirl!!!』でソロデビューしたフルカワさんは、ここで初めて本格的に作曲にも取り組みます。ソロ名義での音楽スタイルについては特に「これ」と決めず、色々聴いていく中で「いいな」と思うものを積極的に取り入れているそうです。それでも、どんなスタイルの音楽を奏でても「フルカワミキの楽曲」になるのは、やはりフルカワさんの不思議な声の魅力もあるのではないでしょうか。
フルカワ:人からはよく「サイケだよね」と言われます(笑)。ちょっと現実的じゃないというか、生活感とかそういうものが見えてこない声なのかもしれないですね。どういう部屋に住んでて、どういうモノを食べてるかがわからないというか……。自分でも、現実とはちょっとズレたような世界観が好きだし、作っていると自然にそうなるから「サイケみたい」って言われるのはわかる気もします(笑)。
2009年12月にAH-Softwareから発売されたソフトウェア、VOCALOID『SF-A2 開発コード miki』の声をフルカワさんが担当することになったのも、そんな「サイケで非現実的」な声が、声を楽器のようにコントロールするボーカロイドの世界観と相性が良かったのかもしれません。
フルカワ:私自身、音声補正技術というものにちょっと興味があったんです。自分で歌いたくない人や、歌える人がいない状況で音楽を作っている人が、こういうソフトで曲を作るのって、何だか面白いじゃないですか。あと、難病で声が出ないスティーヴン・ホーキング博士が、自分の声の代わりにベル研究所時代からの音声合成を好んで使っているという話を聞いたことがあって。たとえば声を失った人が、音声補正技術が進化したり、声のサンプルが増えていくことによって、元に近い自分の声を取り戻すことができる可能性もあるんじゃないかなと思ったんですよね。実際に海外でそういう会社が設立されたりしているみたいなんです。海外版のソフトもどんどん開発されればいいのに、って思いますね。
NUMBER GIRLとSUPERCAR
一世を風靡した女性たちが始めた新バンドLAMA
ソロアーティストとして、順調にキャリアを積み上げていたフルカワさんですが、2011年に再びバンドを結成します。元NUMBER GIRL / bloodthirsty butchersの田渕ひさ子、朋友である中村弘二、agraphの牛尾憲輔がメンバーとなったそのバンドは、LAMAと名付けられました。
フルカワ:そういえば女の人とバンドをやったことがなかったなあ……、と思って。しかもNUMBER GIRLとはデビュー時期が近いのに、対バンする機会も多くなかったし、あまり話す機会もなかったんですよね。ひさ子ちゃんのギターはずっとカッコいいと思っていたし、何か一緒に出来ないかな、と私から声をかけました。二人でお茶をしながら打ち合せをしてたんですけど、そのうち「私たちの音を動物に喩えるとどうなるんだろう?」って話になって。ネコでもないし、イヌでもないし……「ラマが鋲ジャンを着ている感じ!?」って私が言ったとき、ひさ子ちゃんが「ああ!」って(笑)。こういう感覚が通じるのって嬉しいし、大事なことなんだなあって思いましたね。
マイペースだが大事なところで「発起人」
化学反応が見たいからこれからも作っていく
思い返してみれば、SUPERCAR結成もフルカワさんのチラシがキッカケで、LAMAもフルカワさんのアクションで始まったバンド。普段はのんびりマイペースで行動しているように見えても(失礼!)、実は節目節目で「発起人」を彼女は担ってきました。
フルカワ:うーん、自分ではそんなつもりはないんですけどね(笑)。でも、「この人とこの人が同じ場所にいたらどうなるんだろう?」とか、化学反応みたいなことが昔から好きなんだと思います。「この人の音楽はこういう場所だったら、もっと違う聴こえ方がするんじゃないかなあ。そうしたら、もっと多くの人たちに認識してもらえるのになあ」とか。
そんな実はプロデューサー気質? なフルカワさんは最近、通算4枚目のソロアルバム『Moshi Moshi, Kikoemasuka?』をリリースしました。ほぼ全ての楽器をフルカワさん一人で演奏したという初の宅録アルバムは、シンプルかつミニマルなサウンド。研ぎすまされた音と音の隙間からは、彼女の息づかいが聴こえてきそうです。
フルカワ:アルバム用の曲を作っていくうちに、「今回は音数が少ない方がいいな」って、思うようになっていきました。「モシモシ」と話しかけるとき、相手からの声も聴こうと耳を研ぎすませていますよね、そうやって、音の間や呼吸の間からも何かが聴こえてくるような……想像を広げる隙間があるような作品にしたいと思いました。ボーカルをレコーディングするときも、スタジオよりお家でやった方がリラックスして出来るし、そうやってくつろぎながら作っている感覚みたいなものが、ちゃんと音楽の中に注入出来るんじゃないかって思ったんです。ただ、今回はたまたまこういうモードだったんですけど、また外のスタジオでカチッとしたサウンドが作りたくなるときもくるでしょうね、性格的に(笑)。そうやって揺れ動きながら、マイペースに音楽を作っていけたらいいなって思ってます。
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