2 自分の部屋に飾るとしたらどの一枚?
展示室に入って感じるのは、片側の壁にだけ作品が掛かっていたり、作品と作品の間が広く取られているので、ゆったりとした空間になっていること。印象派の作品は、画面との距離の取り方を変えることにより違った景色が見えてくるので、引いて観たり近づいたりして自分なりのビューポイントを見つけてみましょう。
ひとり静かにじっくりと作品を眺めるのも良いし、「自分の部屋に飾るとしたらどれが良いか」「自分だったらどれが好きか」など、誰かと一緒に感想を話し合いながら観るのも楽しめます。
具象的な絵画が多いので分かりやすいのもこの展示の特徴の一つ。たとえばこのセザンヌの作品『ラム酒の瓶のある静物』では、右の瓶のフタが塗り残されていますが、これにはどんな解釈ができるでしょう?
1 制作に没頭しすぎてうっかり塗り忘れた
2 完成させることを嫌ってわざと塗り残した
3 この塗らない状態を「完成」だとした
うっかりがもたらした失敗だったのか、「塗らないことこそが完成なんだ!」という積極的な姿勢だったのか。この「塗り残し」の謎の真実はもちろん作家のみ知るところですが、絵を見ながら想像をふくらませてみても楽しいですね。
3 印象派といえば、モネ。
展覧会の目玉のひとつがクロード・モネの『睡蓮の池』。じつは現在六本木の国立新美術館で開催されている『オルセー美術館展2010 ポスト印象派』にもこれとそっくりな作品が出ています。2つの作品を国内で見比べることができるのは今だけ。後期印象派を中心とするオルセー展と併せて観れば、かなり印象派に詳しくなれるかも。
次の展示室には、点描表現を用いた作品が並びます。海面に反射する光のきらめきを細かい点で表現したジョルジュ・スーラの『グランカンの干潮』など、水辺の風景が描かれた作品にはどこか涼しげで静寂な雰囲気が漂います。
同じ部屋に、分析的な点描画とは趣きが違う幻想的なルドンの作品があり、ちょっと不思議な気配が漂っています。じつはこの部屋、1886年に開かれた最後の印象派展がイメージされているとのこと。この頃になると、印象派の中でもさまざまな表現をする画家達が現れてきます。
カミーユ・ピサロの点描画『エラニーの花咲く梨の木、朝』は、実際にその最後の展覧会に出品されたもの。こうした点描表現から、ルドンのような内面性を追求する象徴主義の作品まで、印象派が次の展開に移る過渡期の様子が分かります。
山岸かおる
東京芸術大学大学院美術研究科修了。「横浜トリエンナーレ2005」キュレーターアシスタント、東京芸術大学美術学部芸術学科教育研究助手、『ART iT』編集部を経て、現代美術関連の記事を中心にライター・編集者として活動。
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