4 画家たちのアトリエ訪問 ―エコール・ド・パリ―
第2章のエコール・ド・パリとピカソの展示室の壁は深い藍色に塗られ、それまでの白い壁の部屋とは、ガラリと雰囲気が変わります。
このセクションでまず出会うのが、パブロ・ピカソの『海辺の母子像』。あいにく画像を載せることはできませんが、今回初めてポーラ美術館以外で展示されることになった必見の1点です。
「青の時代」と呼ばれる、青い色彩で貧しいなかでも力強く生きる人々の姿を描いた時期の代表的な作品ですが、ワンポイントで目の覚めるような赤が入っているのが本当に印象的。その鮮やかさは、ぜひ会場で確かめてみてください。
展示空間は細かく区切られ、それぞれの作家の作品を数点ずつまとめて観ることができます。アトリエを一部屋ずつ訪ねて歩いているような感覚で観てみると、ぐっと作品に親しみが感じられて面白いかもしれません。それぞれの作家がどんな表現をめざし、どのように変化していったのか、よくわかる展示になっています。
長い首、うつろな目が特徴的なモディリアーニの肖像画のように、この時代の作家達が描く人物はどれもユニークで、かなり個性的。
たとえば、次の作品もそうです。
スーティンの『青い服を着た子供の肖像』に描かれた女の子の、腰に手をあて、顔を赤くして怒っている瞬間の表情は、子供らしくて思わず微笑んでしまう出来。
同じ子供でも、レオナール・フジタ(藤田嗣治)が描く子供の絵は、どの子も大きなおでこと離れた目で、まるで人形のよう。フジタの目にはそうした姿に見えていたのかと想像すると、とても不思議です。
5 美術館でタイムトラベル
さて、写真のコレクションが充実している横浜美術館では、今回の企画展に合わせ、印象派が登場する直前の1840年代にはじまり1940年代にいたるパリを舞台に撮影された写真を展示しています。
企画展を観た後は、ぜひ写真展示室に足を伸ばしてみてください。
絵に描かれていたのと同じ時代のドレスを着た女性や車、街並みが写っているので、パリの実際の風景が印象派やエコール・ド・パリのテーマになっていることが一目瞭然。作品を通して、それが描かれた時代に遡ることができるのも、過去の作品を観る醍醐味のひとつです。
「美術館はひとつのタイムトラベル」と語るのは、この展覧会を担当した横浜美術館学芸員の坂本恭子さん。「作品の解釈に正解はありませんので、自由に感想をぶつけてみて下さい」。敷居が高いと思われがちな美術ですが、本展は、何が描いてあるのかわからない抽象的な絵画や難解な表現はありません。家族や友人と一緒に、自由に感想を語り合う。それがこの展覧会の一番の楽しみ方なのでしょう。
夏休み期間中には、楽しく遊べるイベントも開催!
夏休み子どもフェスタ2010
横浜美術館コレクション作品をもとに、サポーターが鑑賞キットやワークシートを使い、子どもたちの鑑賞のお手伝いをします。
2010年8月13日(金)〜8月21日(土) 19日(木)は休館
時間:12:00〜16:00(受付は15:30まで)
対象:小学校高学年〜中学生
参加費:小学生無料、中学生は当日有効のコレクション展チケットが必要(土曜日は無料)
図工カフェ
夏休み期間限定カフェで楽しい図工の一時間。宿題もらくらく解決!
図工カフェのメニューは、横浜美術館オリジナル木工キットとドリンクがセットになったバリューセット。子どもイス、ハンガー、パズルなど(3,000円〜4,000円、2ドリンクと材料費込み)
2010年8月13日(金)〜8月21日(土) 19日(木)は休館
時間:10:30〜17:00(最終入場16:00) 先着入場
対象:親子向け
ポーラ美術館コレクション展 スライド・レクチャー
坂本恭子(横浜美術館 学芸員)
2010年8月15日(日)14:00〜15:00 横浜美術館レクチャーホール
定員:240人(先着順)
参加費:無料
ポーラ美術館コレクション展 子どもクルーズ
担当学芸員と展示室を一緒にめぐりながら、「絵の見方、見え方」を考えます。
対象:小学校高学年〜中学生
2010年8月16日(月)、18日(水)、20日(金)14:00〜15:00
参加費:小学生無料、中学生は当日有効の企画展チケットが必要
ポーラ美術館コレクション展 ギャラリートーク
2010年8月23日(月)14:00〜14:30、8月27日(金)18:00〜18:30
対象:一般
当日有効の企画展チケットが必要
詳しくは、横浜美術館ウェブサイトを参照ください
『ポーラ美術館コレクション展 印象派とエコール・ド・パリ』
2010年7月2日(金)〜9月4日(土)
会場:横浜美術館
時間:10:00〜18:00(金曜日は20:00まで開館、入館は閉館の30分前まで)
休館日:木曜日
料金:一般1,300円 大学・高校生800円 中学生400円 小学生以下無料
毎週土曜日は中高生無料(要学生証、生徒手帳)
山岸かおる
東京芸術大学大学院美術研究科修了。「横浜トリエンナーレ2005」キュレーターアシスタント、東京芸術大学美術学部芸術学科教育研究助手、『ART iT』編集部を経て、現代美術関連の記事を中心にライター・編集者として活動。
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