ふたりで描く、ひとつの絵〜三尾あすか・あづち姉妹がひとりの「アーティスト」になるとき〜
第3話:「突然あらわれた、黒い獣」
画面中央に描かれた、真っ黒な、獣。
それは双頭で、ラメで爛々と光る金色の眼球を持つ。身体には数知れぬほどの妖精たちが降りかかり、あるものは力強く、あるものは消え入りそうな筆致で、獣の荒々しさを中和するかのように包み込んでいる。
僕は絵を前にして、そこに込められた「迫力」を感じ、心の底から驚いていた。背景は激しさを感じさせるタッチで金色に塗りつぶされ、これまでにない強烈なコントラストを醸し出している。この『ダレもシラナイ戦い』は、彼女たちの絵にこれまで登場してこなかったような、心の「闇」の部分を強烈に感じさせるモチーフが描かれていたのだ。
8月17日から21日まで、名古屋のノリタケの森ギャラリーで行われた、三尾あすか&あづち双子の姉妹展2011『TRANSFORMATION』in ノリタケの森。この展示では、合作の新作5点を追加し、彼女たちの画業を一望することができた。合作を中心としたフロアと、個々で制作した作品のフロアに分かれ、後者の部屋では作品の色がグラデーションとなるように配置されるなど、色彩豊かな空間が作り上げられていた。
展示における注目作は、なんといっても先ほど述べた黒い獣が登場する『ダレもシラナイ戦い』だろう。さほど目立つ場所に置かれているわけではないのに強烈な存在感を放っていたこの作品は、これまで三尾あすかとあづちを追い続けてきた僕にとって、彼女たちがまたひとつ大きな成長を遂げたことを実感させられるものだった。
さて、それでは、『ダレもシラナイ戦い』という作品の、いったいどんな点に惹きつけられたのだろう?
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