世界観を創りだす、手描き・デジタル・プロの経験則の絶妙なバランス
普段当たり前のように楽しんでいるアニメーションですが、細かいコマ撮りなど、長時間かけて綿密な作業を行った末に出来上がっていることを忘れてはいけません。今回は、意外と知られていないアニメーション作業の裏側を稲葉さんに教えてもらいました。
イラスト制作
まずは、アニメーションの元になるイラスト制作。今回のSMAPのライブで使用する映像の場合ではパラパラ漫画の手法を採用したため、3曲で1,000枚ほどのイラストを描いたと言います。パラパラ漫画と言えば、小学生の時に教科書の隅っこに書いて遊んでいた記憶がありますが、素人が作ると、どうしてもぎこちない動きになってしまうもの。さぞや神経を使って動きをチェックしているのかと思いきや、「キャリアを重ねるにつれて、描きながら経験則でわかるようになってきました」とのこと。まさに、プロのクリエイターの職人ワザ!
コマ撮り
ヒミツ道具でも紹介したスタジオセットで行う、コマ撮りの作業。通常は、パーツごとに切り分けた切り絵を少しずつ動かしながら撮影し、アニメーションの元を作っていきます。この際のポイントは、発砲スチロールの上げ底で奥行きや影を作りながら撮影すること。PC上で合成するよりも空気感が出て、親しみが持てるアニメーションに仕上がるそうです。一方、今回のようにパラパラ漫画の場合は、スキャンしてPhotoshopに落としていく作業が基本。
いずれも原画は手描きで行うなどアナログの質感にこだわるのは、モーションひとつとっても、PC上の作業だけで完結させるより親しみが持てる動画になり、自分の世界観を表現できるからだと言います。
アニメーション制作(After Effectsでの作業)
撮影した画像やスキャンで取り込んだパラパラ漫画は、After Effects上で動きを確認していきます。パラパラ漫画の場合は、PCの横にアニメーションの進行順にイラストを置いて調整。万が一、動きがぎこちなくなってしまった場合は、間のイラストをペンタブレットを使って描き足していきます。その際のコツは「ヘタウマほど崩れないように動きを整えていくこと」。Intuos5であれば、手書きの良さを活かしたままで作業をすることができ、ニュアンスが出せるのだそう。絵筆やペンに慣れ親しんだ稲葉さんにとってペンタブレットは、直感的なツールなのでしょうね。また、ほとんどの場合が色づけは手描きで行いますが、このSMAPのライブ映像のようにLED照明でアニメーションが流される際などには、色が沈まぬようPC上で色を付けていくとのことです。
アニメーション編集(Final Cutでの作業)
最後は、プロのビデオエディターが使用するFinal Cutで、アニメーションの編集をしていく作業です。MVを制作することも多い稲葉さんですが、「実はAfter Effects上では音楽とぴったり連動させることはあまり気にしていない」と言います。After Effectsで制作したアニメーションの断片を、Final Cut上で音とのハマりを考えて編集していくとのことです。もちろんMVを制作する際にはイメージ段階で、歌詞やメロディーをすべて記憶してしまうくらい聴き込みますが、最終的にはこの作業工程で実際に音楽を聴きながら、音楽と映像が同期するように調整していくのです。
手描きとデジタル、そしてプロのクリエイターとして培った経験則を、色使い同様絶妙のバランスで配合していくのが、稲葉さん流。自身の作品に対するこだわりが随所に現れていて、どれも稲葉作品の世界観を創りだすのに欠かせない作業ばかりでした。作品を見る際には、その裏にある制作工程に、またそこに込められた作り手の想いに、想像を膨らませてみるのもいいかもしれませんね。
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