「できるかぎり、自分でやる」本能をくすぐる作品の作り方
「基本的にデザインに関することは出来る限り自分でやる」というナカムラさん。巨大な商業広告やCDジャケットのデザイン、映像制作など、その多彩な仕事を一口に説明することは不可能ですが、今回は『ミュージックジャケット大賞2012』で大賞を受賞した、きゃりーぱみゅぱみゅ『もしもし原宿』のジャケット制作で、実際に行った作業の一端を教えていただきました。
下書き(ラフ)
大学ではタイポグラフィを専攻していたナカムラさん。キーになるような書体部分に、既存のフォントを使うことは少ないそうです。きゃりーぱみゅぱみゅのすべてのジャケットに共通してそうなのですが、とくに『もしもし原宿』のジャケットで印象的だったポップな文字も、すべて手描きからデータに起こしてレイアウトされています。
まずは普通のコピー用紙にサインペンで文字のラフを描きます。「自分の趣味もそうだし、彼女のイメージも連動されてるけど、あんまり計算されてる世界じゃなくて、ノリがユルくてかわいい感じ」を意識しながら描いたとのこと。カーブの角度の付け方など、ひとつルールを定めると、全部の文字に適用できるか確認しないといけないため、ひと通りの文字を何度も何度も描き直すそうです。
取り込み(写真撮影)
文字をデータに起こすため、ヒミツ道具にも登場したカメラで撮影。パソコンに画像データを取り込みます。この作業は、実演してもらった感じでいうとものの1分。この時点では「どうせ後で直すから」ということで、最低限のピントを合わせる程度だそうです。また、取り込んだ後は、その後の作業がしやすいように、Photoshopでコントラストを調整する場合もあるそうです。
トレース作業
手描きではどうしてもラインが汚い部分が出てきてしまうので、ペンタブレットでパスを取り、Illustratorのデータへ変換。ただ、そのままだと線の太さがすべて均一でつまらないため、ペンタブレットでさらにパスを調整し、上書きしていきます。またここで手書きで書いたものを、一から書き直してしまうことも、よくあるそう。
ナカムラ:きゃりーのアートワークで使う文字は特に人間性が出るようにしたいんですよね。だけど、さすがに手書きのままだとラインがうまく出てないこともあるから、いくつかのジャケットでも結局はじめからこれ(ペンタブレット)で描いたものもありますね。
デザインへ組み込み
それぞれバラバラに描いた文字のサイズや文字間を調整し、別で撮った写真の上に配置して完成です。「こうして見ると、文字だけでも(ジャケットの)世界観が伝わってくるよね」とナカムラさん。『もしもし原宿』の場合、この文字がその後ポスターなどにも展開して使われる予定だったため、タイポだけでも通じるように、よりシビアなデザインが行われたのでしょう。ちなみにこのデータは、さらに別でパス化もして保存し直していたとのことでした。
デザインにおいても、自身の活動姿勢においても、「自分でやる」ことにこだわり、挑戦を繰り返してきたナカムラさん。アメリカ出身という出自を活かして世界のトレンドをチェックし続ける一方、気になったことは徹底的にリサーチすることで増やしてきた引き出しの数は、一朝一夕では到底蓄積できないものであることが、言葉の端々からも感じられました。きっとこの先もナカムラさんは、その知識と経験で我々をあっと驚かせるアプローチを生み出し、時代を個性的に反映した作品を届けてくれるに違いないでしょう。
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