絵画作品だからこそ、必然的だったデジタルデバイス
埼玉県入間郡にある「カイカイキキ」の制作スタジオ。まるで港町の倉庫のように無骨で、天井の高い大きな建物の一角に、JNTHEDさんの仕事場はあります。室内にお邪魔すると、制作途中の作品や画材がびっしり。納期が迫っているときには泊り込みで作業することもあるというJNTHEDさんのヒミツ基地で、作品作りに欠かせない「ヒミツ道具」を紹介してもらいました。
お手製のアクリル定規
まず、JNTHEDさんが「ヒミツ道具」として取り出したのは、アクリル板とアルミ板にガムテープを巻いたお手製の定規。作品の特徴でもある幾何学的な線を描くのに必須のアイテムだというのですが、どのように使用するのでしょうか?
JNTHED:定規をキャンバスに立たせ、そこを筆でなぞることで幾何学的な模様に不可欠なブレのない直線が描けるんです。本当はもっと長いストロークで描いたほうがダイナミックになるんでしょうが、CGのときに行っていた細かい作業の癖が抜けなくて、20cmくらいの単位が僕には合ってるんですね。アクリルは筆が多少滑って線を描きにくいものの、金属ではないので飛行機に持ち込んでも取り上げられないのがいいです(笑)。海外で作品を制作することもあるので重宝しています。
プロジェクター「QUMI」
次に紹介されたのは、絵画の制作には一見関係ないように思えるプロジェクター。手書きで描いた作品をPCに取り込むことは一般的な作業としても行われることですが、JNTHEDさんは逆にPCで制作したイラストをキャンバスに投影しながら絵の具で描いていると言います。
JNTHED:愛用しているのは、VIVITEKのLEDプロジェクター。長時間使うので省エネや持久性の利点から、水銀灯ではなくLEDを実装したプロジェクターを使用しています。ペインティングする際にプロジェクターを利用すると言うとビックリする方も多いと思いますが、CGの表現から入った僕としては、必然的な流れだと思っています。
タブレット端末「IdeaTab」
さらにデジタルツールが続きます。3つめの「ヒミツ道具」は、意外にもLenovo製のタブレット端末。なぜアナログのペインティングにタブレット端末が必要になるのでしょうか?
JNTHED:プロジェクターでキャンバスに投影すると言っても、色はあくまで参考程度。また普通に印刷しても、PCで作った色そのままではないので、このほうが効率が良いのです。画面で想定した色を再現するために、PicasaというソフトでPCと同期して、タブレット端末で色を確認しながら描くようにしています。作業の性質上どうしても絵の具がついてしまうのですが、丈夫なのでありがたいです。あとは、仕事の合間に教育系の音声コンテンツを聞くのにも利用しています。哲学や歴史の知識は、美術と密接に関係しているので、とても刺激になっています。
ペンタブレット「Intuos5」
最後はPCを購入する前から「これでなければデジタルで絵を描くことはできない」と思っていたというペンタブレット。初めてPCを購入してから1か月でペンタブレットを使い始めたというJNTHEDさん。以来、その使用頻度はイラスト制作にはもちろん、ブラウザの閲覧などすべてのPC操作をペンタブレットで行っているほどです。おもにキャンバスに向かうことが多くなった今でも、手放せないツールのようです。
JNTHED:当時、デジタル系の情報をゲットしていたPC専門店で、ペンタブレットの存在を知りました。長く愛用したのはIntuos2とBambooで、会社でもプライベートでも使っていましたね。Intuosシリーズは、プロジェクターに映したときにサイドスイッチの設定でマッピング画面切り替えができるなど、複数画面への対応がコントロールパネルで柔軟にできるので気に入っています。Intuos5は(Intuos2やBambooに比べ)、ペンの感度が大幅に向上し、パネルに置いた瞬間からスラスラとストレスなく描くことができるため、手が疲れないことが素晴らしいです。
CGからアナログ転身したJNTHEDさんですが、なんと4つの中で3つの「ヒミツ道具」がデジタルデバイス。高校生の頃からCG表現に親しんでいたこともあり、クリエイティブの血肉となってJNTHEDさんの身に定着しているのかもしれません。次ページからは、「ヒミツ道具」の具体的な使用法も含めた、作品制作の作業工程を見ていきましょう。
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