『クリエイターのヒミツ基地』

『クリエイターのヒミツ基地』Volume25 SwimmyDesignLab(クリエイティブ集団)

『クリエイターのヒミツ基地』Volume25 SwimmyDesignLab(クリエイティブ集団)

既存概念を取り払うことで持ち得た絶妙なバランス

SwimmyDesignLabの作品の魅力のひとつは、アートディレクター兼メインデザイナーとして活躍する吉水さんの手描きイラストをデジタル処理することで生まれる、アナログとデジタルの融合感。それは作品においても、他企業のプロダクトを請け負う仕事の場合でも、同じです。手描きイラストの温かさと、キュートさとキャッチーさをスタイリッシュにブレンドしたSwimmyDesignLabの作品群。そこには、アナログの良さとデジタルの良さ、両方がシンプルに組み合わされた独自のセンスにあふれています。今回は海外企業からオーダーされた調味料のラベルデザインなどを一例に、作品作りの基本的なプロセスをご紹介いただきました。

自作のカラーパレットをスキャン

自作のカラーパレットをスキャン

単色のベタ塗りで終わらない作品を仕上げるために、市販の紙パレットに各色のアクリル絵の具を塗り込めた、自作の色パレットを用意します。その自作の色パレットをスキャンし、データとして保存しておくことで、さまざまな用途に活用できるそうです。

吉水:僕が今使っている色パレットは、学生時代、アクリル画を描いていたときに、余った絵の具を塗りつけておいたものなんです。色パレットといっても、いくつか色をブレンドして濁していたり、大雑把にグラデーションをつけてあったりと、綺麗な色を残したというよりは、雑な殴り塗りですね。それがかえって、雰囲気のある塗りのタッチに繋がっているかな、と。このパレットを切り取ったデータは、どんなサイズの作品にも使えるように、かなり高解像度でスキャンしてあります。

手描きの線画をスキャン

手描きの線画をスキャン

「ヒミツ道具」のコーナーでもご紹介したように、吉水さんがデザインに使う絵は、オーダー内容によって新規に描き下ろすだけでなく、単体のモチーフとして日頃描き貯めているものから、コンセプトにマッチしたものをスキャンして使用することも多いとか。ポストカードはクリアファイルに綺麗にファイリングされていて、すべてを合わせるとファイル20冊分にもなるそうです。

吉水:僕の絵は、すべて下書きなしのフリーハンド。学生時代からこのスタイルです。これまでSwimmyDesignLabで手がけてきたデザインには、学生時代に描いていたモチーフもよく使っていますね。本当なら線画に直接着色した絵を取り込んでデザイン加工してもいいんですが、線画のみをデータ化しておいたほうが、複数のモチーフを組み合わせたり、イメージに合わせた絵も作りやすいですし、彩色やカラーバリエーション作りもラクになります。モチーフを組み合わせることで、決め込んで描いた構図からは生まれない、面白いデザインが閃くこともありますよね。

ペンタブレットで色づけ・修正

ペンタブレットで色づけ・修正

先ほどスキャンした線画にIntuos5を使い、PC上で色づけと修正を施します。色づけも作品によって作業はいろいろ。新規に塗り上げることもあれば、最初の行程でスキャンしたカラーパレットのデータを使って処理していくこともあります。スキャンした線画も、ペンタブレットを使って加筆、修正されます。

吉水:グラフィックツールはPhotoshopを使っています……、というより、それしかまともに使えないと言ったほうが正しいですね(笑)。絵に関しては基本、アナログな人間なので、PC周りはセッティングしてもらったままで使っています。絵の具パレットのスキャンデータはいくつかバリエーションがあるので、使いたい色の部分を切り取って線画に貼り込み、ブラッシングして風合いを出したり、他の色となじませたりといった作業を行います。

仕上げ・チェック

仕上げ・チェック

吉水さんが制作したデザイン原画は、自身のディレクションにより、他のスタッフが手がけるテキストデータの貼り込みや全体の彩色などのブラッシュアップ作業を経て、再び吉水さんの元へ。吉水さんのOKが出れば、作品は完成となります。

吉水:SwimmyDesignLabのメンバーは社内に僕を含めて4名、他にも事務所には常駐しない外部スタッフがいますが、それぞれ得意分野があるので、僕の手の回らないところはお任せしています。そのあたりは分業制で。僕はチームで物を作るのが好きなので、このやり方がベストですね。

吉水さんの作品に向かう姿勢には、若い頃から物作りを志向し、一直線にアートの道を目指してきたデザイナーにはない、独自のスタンスがあります。自らがもっともやりがいを感じるチームプレイ思考をもとに、ひとつの作品にだけこだわることなく、フレキシブルな発想でアートやエンターテイメント、そしてコマーシャルの境界線を自由に泳ぎ回る吉水さん。次はどんな試みで、私たちに魅力的な作品を届けてくれるのでしょう。SwimmyDesignLabのこれからが楽しみでしょうがありません。

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