各シーンを細かく想定したうえで、
慎重に積み重ねられていく制作工程
アニメーションの制作は、どれほど作家性の強い作品であっても、1人だけで作品を完成させるというのは難しいものです。分業化とデジタル化がどのような制作プロセスに活かされているのか、再現していただきました。
絵コンテ
脚本をもとに絵を描き起こし、作品全体から詳細までをスタッフ同士で共有するための重要な設計図。半年を費やして完成させたという絵コンテには、膨大な情報量が詰め込まれていました。
稲葉:人によっては、あまり絵コンテで決めないで、その後の作業で作品を拡げていく方もいますが、僕は最初にかっちり決めておかないと心配なタイプなんです。『ゴールデンタイム』は全部で178カット。プロデューサーにも制作チームにもきちんと理解してもらうために、細かく指示を書いています。アニメ—ション作りにおいて、絵コンテの段階が一番大事だと思っています。
原画
絵コンテが固まれば、1カット分を動画用紙に描き起こし、動きをコマに落としこみます。監督である稲葉さんはカットのレイアウト設計、さらにキーフレームの原画を描き、その間のコマをアニメーターに補完してもらうことで、一連の動画が生まれていきます。
稲葉:ここでもかなり細かく指示をすることが多いです。アニメーターの方に書いてもらった原画が上がってきたら、チェックをしつつ、細かな表情、動きなどに修正を入れて次の動画へと進めます。やはりそれぞれの描き手の方の個性もあるので、大体は直しを入れてしまいますね(苦笑)。
デジタル作画
完成した原画をスキャンし、ここから先がデジタルの工程になります。しかしデジタルとは言っても稲葉さんならではの創意工夫、使いこなし術があるようです。
稲葉:スキャンしたデータをもとに、液晶ペンタブレットで実線を入れたり、着色を行います。「手作り感」を出すために、「擦れ」や「ムラ」のあるペン先をカスタムブラシで作っておき、それを使って描くのですが、液晶ペンタブレットだとモニターに直接描いていくアナログ感覚も合わさって、没入感が全然違いますね。
動画作成、編集
作画工程で制作した各カットを「AfterEffects」で、エフェクトを加えたり、アニメーションさせた後、「Premiere」といったデジタル動画編集ソフトを使ってタイムライン上に並べ、音楽やセリフとタイミングを合わせていきます。
稲葉:絵コンテで想定していた流れと、実際に動いたものを比べてみて、イメージが違っている場合もあるので、この段階で動画を修正することもあります。また、同じ背景やキャラクターでも、作品内での時間経過によって色のトーンを調整することもありますね。『ゴールデンタイム』は昼夜の展開が多かったので、そこは気をつけました。液晶ペンタブレットに変えてからは、デュアルモニターでプレビューしながら作業できるので、タイムライン編集作業がとても快適になりました。
アニメーション制作への細やかで真摯なこだわりを随所に感じさせる、稲葉さんのインタビュー、いかがでしたでしょうか? 『ゴールデンタイム』は国外でも評価が高く、新たに描きおこした関連の絵本も4月に発売。さらには個展の開催など、稲葉さんの周囲は急激にザワザワとし始めています。今後の作品を楽しみに待ちましょう。
- 「wacom」
- 『ボクの練金時間(ゴールデンタイム)』
- 『手仕事のアニメーション』元・立誠小学校 特設シアター(京都)
Information
ペンタブレットの製品情報や活用ガイド
稲葉卓也個展
『ゴールデンタイム』の上映情報
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