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猫のようで猫でなく、のほほんとした表情でちょっぴりオゲレツな下ネタを連発する、ゆるかわいい未確認生物「にゃっちーず」。その作者であるかわベーコンさんは、TwitterやLINEスタンプといったSNSフィールドで人気を獲得し、テレビの情報バラエティー番組でも注目される27歳の新進イラストレーターです。幼い頃から絵を描くのが好きで、今は優しいご主人と二人三脚で子育てと作品作りに励んでいる彼女が「にゃっちーず」を生み出せたのは、好きな絵を仕事にしようとする過程で起こったある出来事がきっかけでした。「『にゃっちーず』がいたから私は救われました」と言うかわベーコンさん。そんな彼女に、イラストレーターとなった紆余曲折の道のりを聞きました。
テキスト:阿部美香
撮影:CINRA.NET編集部
- かわベーコン
- 1988年1月11日生まれ。栃木県出身、在住。一児の母で、子育ての合間にイラストレーター / 漫画家としてお仕事中。オリジナルキャラクター「にゃっちーず」「ふぐりちゃん」などを、LINEスタンプやアプリで展開中。
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クリエイター「かわベーコン」の軌跡
大ブレイクした「にゃっちーず」の意外な誕生秘話
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かわベーコンさんのヒミツ道具をご紹介!
個性的なキャラ作りに必要なヒミツ道具たち
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かわベーコンさんの作品作りをご紹介!
細かいこだわりが詰め込まれた「にゃっちーず」のヒミツ
同人活動にホラー小説の執筆。表現欲をまっすぐに追究した中高時代
テレビやイベントなどに登場する際、オリジナルキャラクター「にゃっちーず」のかぶり物で現れるかわベーコンさんは、現在27歳。顔を出さないのは「単純に恥ずかしいからで、深い意味はないんですよ」と言う彼女は、その姿だけを見るとミステリアスですが、話してみるととても穏やかで落ち着きのある素敵な女性です。
かわベーコン:こうして自分のことを話す機会は滅多にないので、Twitterやブログで私を知ってくれた方とイベントなどで実際に会うと「男性だと思ってました」「主婦だと聞いたので40代くらいかと思ってました」とよく言われます。「にゃっちーず」があまり上品な内容じゃないから……その影響でしょうかね?(笑)
そんなかわベーコンさんが生まれ育ち、今でも暮らすのは栃木県。幼稚園の頃から彼女は、おばあちゃんが用意してくれたカレンダーやチラシの裏紙に、好きなアニメの絵を真似して描くことが大好きな女の子だったそうです。
かわベーコン:絵を好きになったキッカケは覚えていなくて、気がついたら描き出していました。テレビっ子だったので、よく観ていた『美少女戦士セーラームーン』や『クレヨンしんちゃん』『南国少年パプワくん』などのキャラクターを真似て描いてましたね。幼稚園の連絡帳にも「絵が上手いお子さんです」と書いてもらったり、小学生くらいから漫画家になりたいという夢を持っていました。
教室に置いてあった歴史漫画を読み、「こんな面白い漫画が描けたらいいな」と、ノートに4コマ漫画を描いていたかわベーコンさん、中学生になってからは、同人活動をスタートします。
かわベーコン:そのキッカケも本当に偶然。ある漫画を買いに本屋さんに行ったらパロディーコミック集が一緒に並んでいて、「この表紙かわいい!」と間違えて買ってしまったんです(笑)。原作を読むのも面白いけど、キャラクターを使って自由な創作ができる楽しさを知り、幼馴染みの女の子と一緒に作品の模写をしたりして、地元の即売会などに参加するようになりました。まあ、私の黒歴史時代ですね(笑)。
意外な歴史といえば、かわベーコンさんがもう1つ話してくれたエピソードがあります。漫画の同人活動を続けながら始めたもう1つの活動に、オリジナル小説の執筆がありました。高校時代からウェブ上で執筆活動を開始。といっても「小説家に憧れていたとか、文学少女だったという理由で書き始めたわけではなかった」と言います。ではなぜ小説を?
かわベーコン:頭に浮かんだ映像を、絵ではなく文字で表現したいという欲望に駆られていたんです(笑)。ホラー小説などをよく描いていたのですが、映像を妄想しながら、それを文章で表していくのが楽しかったんですね。たぶん当時、漫画では表現しきれなかったアイデアを実現するために、小説という手段をとっていたんだと思います。
どん底状態の精神状態で、唯一描くことができた
自分の分身「にゃっちーず」
同人活動や小説執筆を通じて、中高時代に表現する楽しさに目覚めたかわベーコンさんは、高校を卒業するとデザイン系専門学校のイラストレーターコースに進みました。
かわベーコン:高校卒業を前にして、やはり将来は好きな絵を仕事にしたいと思ったんですが、趣味で描いてただけなので美大受験は難しく、絵画というよりもポップなイラストを描きたかったので、専門学校でイラストの勉強をしようと思いました。ただ……結局1年半くらい通って辞めてしまったんです。恩師だった先生がいなくなってしまったり、新しい先生とはソリが合わなかったり、「自分は本当に絵の仕事に就けるんだろうか?」という不安に襲われたり、色々なストレスが溜まって爆発し、うつ病になってしまいました。学校にも行けなくなり、あと少しで卒業という時期に専門学校を退学し、家に引きこもってしまったんです。
「とても辛い時期で、当時のことは詳しく思い出せない。大好きだったイラストも、自分の顔すらも描けなくなっていた」と当時を振り返るかわベーコンさん。しかし、彼女が「にゃっちーず」を生み出したのは、まさにそんな頃の出来事でした。
かわベーコン:今思えば、熱心に続けていた同人活動もそうですが、結局は人真似ばかりしていて、確固とした「自分の絵」を確立できていなかった。だから、絵の勉強をしながらも不安が募ったんだと思うんです。そしてまったく絵が描けなくなったとき、ふと筆を走らせてみたら、唯一自然に描けたのが「にゃっちーず」のキャラクターでした。なぜかこのキャラクターだけは、どんどん描くことができたんです。おそらく私にとって「にゃっちーず」は分身で、ちょっと下品なことをさせてみたり、シュールな姿にしてみたり……普段やらないこと、心の中に溜まっていたストレスを「にゃっちーず」を描くことで吐き出して、少しずつ元気になっていけました。だから「にゃっちーず」が私を救ってくれたと思っています。
趣味だった「にゃっちーず」がTwitterで大ブレイク。
イラストレーター・かわベーコン誕生
現在、中高生から大人までを巻き込んで大ブレイク中の「にゃっちーず」に、まさかそんな誕生秘話があったなんて驚きを隠せませんが、かわベーコンさんの驚きのストーリーはさらに続きます。うつ病を克服したかわベーコンさんは、アルバイトをしながら生活を続け、結婚もして子どもが産まれます。もちろん、自分の分身でもある「にゃっちーず」は描き続けていましたが、あくまでも趣味の1つでした。そんな折、かわベーコンさんの生活を一変する事件が起こります。
かわベーコン:子育ての合間にTwitterを始めたんです。最初は数十人のフォロワーに向かって普通につぶやいていたんですが、ある時「ストッキングを穿くときはみんな、がに股になってストッキングを伸ばすストレッチするよね?」という内容で「にゃっちーず」の3コマ漫画風の絵をツイートしたんです。するとみるみるうちに1万2千以上もリツイートされて、フォロワーが千人単位で一気に増えていったんです。すごく驚きましたが、もしかしたら「にゃっちーず」をみんなが喜んでくれてる? と思い、それからは思いついたときに「にゃっちーず」のイラストを投稿するようになりました。
Twitterに投稿された「にゃっちーず」のイラスト
まさにSNS時代ならではのクリエイターサクセスストーリー。ここから「にゃっちーず」の人気は、一気に急上昇し、フォロワーが1万人近くまで増えた頃、携帯ゲームアプリや着せ替えテーマ、イラストやグッズ制作の話などが続々とやってくるようになりました。さらに自作でリリースしたLINEスタンプも大ヒットし、「にゃっちーず」人気は決定的に。かわベーコンさんの名前も一躍有名になりました。「にゃっちーず」自体も姿がちょっとふっくらしたり、顔がほんの少し変わったりはしていますが、初期からずっと同じテイスト。下ネタを扱っているのも変わりません。
かわベーコン:学生時代はイラストレーターになりたいと思っていましたが、まさかこんな形でプロになるとは想像もしていませんでした。今は……夢心地というのが一番しっくりきています(笑)。Twitterを通じてみなさんに知ってもらえているのも、私にとってはラッキーなことでした。「にゃっちーず」ファンの方の声は、リプライなどを通じてすぐ伝わるので、みなさんと一緒にキャラクターを育てていくことができる。LINEスタンプを出したのもTwitterで要望が多かったから。去年からは自分で作ったグッズを持って、『デザインフェスタ』と『にゃんこ展』に初めて出展しました。Twitterの告知を見て会場に来てくれた方が私の絵で喜んでくれているのを見るととても嬉しいですし、絵を描くことを辞めなくて良かったと本当に思います。
「自分の分身である『にゃっちーず』は、単なるキャラクターではなくライフワーク」と言うかわベーコンさんに、なぜ「にゃっちーず」がこんなに人気なのか? をあえて聞いてみました。
かわベーコン:誰もが言いたいけど、ちょっと下品でオゲレツなことを代弁してくれるから、見る方もストレスを発散できるのかも。あと、無表情なので、見る方の感情を投影できるからかも知れないですね。だから、無表情の描き方には私もかなりこだわっています。顔の向きやパーツのバランス、唯一感情を表現できる口の開き具合、かわいらしさを象徴するお腹の膨らみ。気分のままに筆を走らせてはいますが、細かいところにはけっこうこだわっています。
今年は、昨年以上に精力的にイベントに顔を出していきたいし、もっと「にゃっちーず」の世界を広めていきたいと語るかわベーコンさん。
かわベーコン:じつは「にゃっちーず」の世界には背景設定もちゃんとあって、住人である「ぬこ」も1種類ではなく、筋肉質な「マッチョぬこ」がいたりと色々なバリエーションが存在します。「ぬこ」同士に相関関係があったりもするので、その全体像をお見せできるような機会が作れたらいいなと思っています。これからも「にゃっちーず」を描き続け、みなさんにもっともっと愛されるキャラクターに育てていきたいですね。
まだまだ奥が深い「にゃっちーず」の世界。かわベーコンさんの分身でもある独特のキャラクターが、今後どこまで広がっていくか楽しみです。
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