ジャック&ベティを後にした2人は、そこから歩いてすぐの近所にある「nitehi works」で休憩。もともと金融機関のビルだったものを、その名残りを活かしながら改装した多目的スペースで、展覧会や演劇、コンサートなどに利用されているほか、イベントのない日はカフェ&バーとしても営業しています。9月には奄美島唄の第一人者である朝崎郁恵のライブや、80年代に行われたドイツ・メールスジャズフェスティバルの貴重な8mmフィルム記録映像の上映会なども開催され大盛況。音響面でも独特のハコ鳴りを持った店内には、Neat'sさんも興味津々でした。
店内は美術作家としても活躍する代表の稲吉稔さんによる内装が特徴的で、地下の貯水タンクを利用して水を循環させた噴水や、屋上にあった室外機の羽根を再利用したシーリングファン、外につけられていた看板にガラスを張って作ったテーブルなど、使われなくなった建物の一部をアートとして再生。金庫室をまるまる活かして個室にした座席は、VIPルームのような特別感のある雰囲気で、親密な話をするにはうってつけ。
ここで軽く一杯お酒を飲んだ2人は、クリエイティブな雰囲気に包まれた店内に感化され、またまた話に花が咲いた様子。後ほど何を話していたのか聞いてみると…。
Neat's「作品作りをするときに、制限があったほうが新しいアイデアが生まれやすいんじゃないかっていう話をしていたんです」
冨永「その制限っていうのが、新しく何かを買ってくるとかではなくて、そこにあるモノでやってみるっていう。だからここのお店は、クリエーターとしてすごくお手本になりますよね」
創作意欲を刺激する空間にすっかり酔いしれ、慌ただしい日常から少し離れた楽しいひとときを過ごしていました。
続いて2人が向かった先は、簡易宿泊所が立ち並び、労働者が集う「ドヤ街」として知られる寿町。独特の雰囲気を持った街に降り立ち、「こういう場所に来たのは初めてだったので、正直びっくりしました」というNeat'sさん。一方、「実家が山奥で宿をやっていて、林道工事をする労働者の人たちがよく泊まっていたんです。なんかそのときの雰囲気に似てて、懐かしい気持ちになりました」という冨永さん。しかし最近ではこの街の在り方も変わってきていて、変わらぬドヤ街としての顔を持つ反面、高齢者や生活保護受給者も多い福祉の街として、そして宿泊施設や街なかを活用したアートな街としての面も持つようになりました。
今回2人が訪れたのは、簡易宿泊所を改装した「Hostel Zen」。ここでは現在「Hostel Zen Art Project」として、客室を含むホステル内全体をアート化する試みが行われています。階段には学校風の装飾が施され、架空の校内ニュースが貼られた掲示板があったり、視力検査表や昆虫の標本があったり、客室までの道のりをわくわくさせるものに演出。踊り場には葛飾北斎の富嶽三十六景をモチーフにした壁面画『denial scape』(松下徹・作)があり、屋上も砂漠の中のオアシスのような緑化がされ、ドヤ街のイメージとはかけ離れた空間を作り上げていました。
Neat's「ドヤ街という場所を意識しすぎるのはよくないのかもしれないですけど、どうしてもいろんなことを考えてしまいますよね…」
冨永「そういうことは意識する必要はないと思いますよ。おもしろいものがあって、そこに行ってみたらたまたまドヤ街だったって」
と、ここでも長々と話し込む2人。やはり場所柄もあり、「思想がひっくり返るくらいインパクトがありました」(Neat's)と考えさせられる部分が多くあったようです。
そしていよいよ客室へのドアを開けると、そこには宿泊施設とは思えない異空間が。『Splash』(曽谷朝絵・作)と名付けられた部屋は、螺旋状に加工した特殊なシートが天井に散りばめられ、光と影が織り成すファンタジックな空間に。ほかにも、特殊な鏡にLED照明を組み合わせて、電気を消すとプラネタリウムのような世界が広がる部屋など、いずれも夜眠るのが楽しみな部屋ばかり。なお、基本的には宿泊者にしか利用できませんが、定期的に開催される一般公開やツアーでも見学可能となっています。
電話:045-342-9553
HP:http://zen.ilee.jp/
Hostel Zen Art Project
HP:http://koto-buki.info/zen/
コトブキ案内2011
HP:http://koto-buki.info/2011/
夕暮れ時も過ぎ、お腹も空いてきた2人は今日の最終目的地、桜木町駅近くの「とんかつパリ一」へ。野毛エリアの多くの飲食店で利用できる「野毛通手形」を使うと、お通しとカツの盛り合わせ、ドリンクが登場。創業50年以上、父の代から続くこの店では、まるい形をしたヒレカツが看板メニュー。ヒレ肉を自家製のラードを使って揚げ、自家製ソースをかけて食べるとんかつは、2人も思わず「うま〜い!」と声を挙げる絶品。「私、あんまりとんかつは食べないんですけど、ここは油が重たくないし、衣が薄くて女子にもうれしいですね」とNeat'sさんもご満悦。
また、野毛エリアはもともと鯨料理の文化があり、多くの飲食店が鯨料理を提供する「野毛くじら横丁」というイベントも開催中。パリ一でも1年中鯨料理を提供していて、特に9月中旬から10月上旬までは、釧路から直送された生のミンククジラが食べられる貴重なチャンス。この日は残念ながら9月上旬だったためミンクは食べられなかったものの、きれいなピンク色をした生ミンクの刺身は冷凍とは比べ物にならないほどおいしいと聞き、2人とも「また来なきゃ」と目を輝かせていました。
一日中横浜を巡り、取材中だけでなく移動中にも意見の交換をしあっていた2人。改めて横浜という街の印象を聞いてみると…。
Neat's「以前ニューヨークに行ったときに、廃工場をギャラリーにしている地域があったんですが、今日まわった横浜と似ていたと思います。どちらも、街のなかにアートを起こそうという精神が素敵なんです。『外に出たら公園がある』みたいな感じでアートが存在するっていう文化は、日本ではまだ根付く途中だと思いますけど、もっともっと育っていけばいいと思いました」
冨永「今日一日を通して、『説明がない作品』にふれることが多かったですね。僕なんかは、きわめて商業的な論理で作品制作をしているので、宣伝のためにいろいろな説明をつけなければならないことも多いんです。でも、黄金町一帯をはじめ、アーティストたちが自由に創作できる場所を提供している横浜の街って、すごく豊かだなと思いました」
OPEN YOKOHAMA 2011来場者アンケート実施中!
回答者全員にオリジナル壁紙プレゼント中です。
さらに抽選で5名様に豪華プレゼントも。
http://cs-t.jp/yokohama2011/welcome.php
10/3(月)〜10/10(月・祝)
時間:9:30〜16:30
※パフォーマンスは8日〜10日のみ。14時開演。
会場:横浜市立野毛山動物園
料金:無料
2011年で4年目を迎える、『急な坂スタジオ』と『野毛山動物園』の協働企画。今回はレジデントアーティストであるダンサー/振付家の矢内原美邦が、動物園職員へのインタビューをもとに、展示、映像、パフォーマンスで野毛山動物園の魅力に迫る。いつもとは違った角度から、動物園と舞台芸術の新たな魅力に出会ってほしい。
http://kyunasaka.jp/
8/6(土)〜11/6(日)
時間:11:30〜19:00
会場:新港ピア
『ヨコハマトリエンナーレ2011』期間中は、特別提携プログラムとしてBankART1929主催による「新・港村―小さな未来都市―BankART Life 3」が行われている。主に廃材や粗大ゴミなどを用いてデザインされた家や図書館、劇場が建ち並ぶ新・港村は、あらゆる国の150組以上のクリエイターがスタジオとして使用する小さな未来都市。外部からほとんど電気をいれず、太陽光などの人力発電で成り立っているこの施設は、東北と横浜の間を人や物資や知恵や力を積んで、何度も往来するためのプラットフォームになっている。また、展示やトークショーをはじめ、様々なイベントが連日開催されている。
http://shinminatomura.com/
10/16(日)
時間:14:00、15:00、16:00
会場:帆船日本丸
料金:前売3,300円 当日3,800円
横浜のシンボル「帆船日本丸」を舞台に、ファッションブランド「シアタープロダクツ」が作り上げるサイトスペシフィックなファッションショー。阿部海太郎による書き下ろしのバレエ組曲の生演奏に導かれ、真鍮の階段や、ヤシの実で磨き抜かれた甲板、羅針盤のある海図室や、船内の教室など、物語あふれる帆船のあちこちに生まれては消える儚いバレエ公演。
http://spectacleonthebay.com
10/28(金)〜11/1(火)
時間:16:30、17:30、18:30
会場:横浜ホームコレクション内 「ハウゼ」モデルホーム
料金:前売/当日 1,500円
一軒のモデル住宅を舞台に展開される、日本とヨーロッパのアーティストによるインスタレーション・パフォーマンス。伝統的な風景鑑賞法である借景の技法をパフォーミングアーツに用いて、都市の風景と人との関係を問い直す。ベルギーから『deepblue』のハイネ・アヴダルと篠崎由紀子、ダンサーの社本多加、音響デザイナーのファブリス・モワネが参加するほか、チェルフィッチュの岡田利規がテキストを手がけ、小浜正寛、神村恵らが出演。観客は15名ずつ入場、約45分入替制。スペースのみならず、展示物、観客の存在自体も作品の一部として取り込むインスタレーション・パフォーマンスを世界初演する。
http://borrowed-landscape.jp/
10/7(金)〜10/9(日)
時間:18:00〜23:00
会場:象の鼻テラス、象の鼻パーク、山下公園、横浜マリンタワー、元町商店街、日本大通り ほか
料金:無料(一部有料)
参加アーティスト:高橋匡太、藤本隆行 ほか
「スマートイルミネーション横浜」は、東日本大震災の発生以降、省エネが社会的なテーマとなっていることを踏まえた夜景開発プロジェクトです。消費電力を抑制しつつ、アートのイマジネーションを生かし、象の鼻テラスを中心とする臨海部に新たな夜景を生み出します。国際的に活躍する7組のアーティストのほか、学生、地元市民や商店街など、多彩な参加によって実現される新たな夜景開発の試みです。
http://www.zounohana.com/
10/15(土)〜10/16(日)
会場:山下公園
「ディワリ」とは、インドの新年を祝う光のお祭りのこと。横浜インド文化交流会はそんな習慣に倣い、横浜と繋がりが深いインドの文化交流として、毎年「ディワリ・イン・ヨコハマ」を開催する。ラーマヤーナ劇やポリウッドダンスをはじめ、シタールコンサート、インドレストラン、インドバザールなど、観て、食べて、触れてインド文化を五感で楽しめる。イベントの最後は、"Pray For Tohoku"として石巻のキャンドルで光の祈りのフィナーレを飾る。
http://www.diwaliyokohama.org/
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