コロナを筆頭に暗いニュースが多い昨今。やりたいことが制限される日々は、つい気持ちも塞ぎがちになってしまう。エンターテイメント業界で活躍するアーティストやミュージシャンも同様だが、しかし彼らは模索しながらも作品やパフォーマンスで、私たちの日々を明るくしてくれている。
ロックバンドの初恋(突然少年)は、スピード感を持って前に進んでいけるような楽曲が特徴的だ。今春も、株式会社TENGAとコラボし、気分が「上向きになる」曲をリリースした。一方、BiSHのセントチヒロ・チッチは昨年10月に初恋(突然少年)のMVの監督を務めるなど、グループとしてのパフォーマンスの枠を超え、前向きにチャレンジを続けている。
もともと交流のある初恋(突然少年)とチッチは、いまの世の中をどのように見ているのだろうか? 不安定な時代でも自分たちの持つ音楽やクリエイティブは、どのような輝きを持つと信じているのだろうか。話をうかがった。
(コロナ禍で)みんなこんなに音楽が好きだったんだなと、気づくことができた
―BiSHは2021年1月、コロナ禍で外出もままならなかった状況下で、8時間もの配信ライブを行ないました。また、初恋(突然少年)は、緊急事態宣言の時期を除いて、精力的にライブをされています。現在もアーティストの活動の場が制限される状況が続いていますが、それについていかがですか?
カニユウヤ:じつは初恋(突然少年)メンバーって、全員ライブハウスやスタジオで働いたことがあるんです。だからこそよくわかるんですけど、働いている人も、お客さんも、ものすごくダメージが大きいんです。
でも、すごくポジティブな見方をすると、みんなこんな状況なのに、本当に音楽が大好きなんだなと気づくきっかけにもなりました。コロナを機に何かリセットされたというか。
セントチヒロ・チッチ(以下、チッチ):BiSHのライブは、清掃員(BiSHのファンのこと)と私たちとでつくられています。
ライブができなかったときは正直、生きているんだけど生きていないみたいな気持ちでした。BiSHの音楽を「いまを生きるために必要」と思っている人たちに届けられないのが悲しかったんですよね。
でも、その経験をとおして、生のライブだから感じられるものがあって、リアルだからこそ生まれる感情も絶対あることにあらためて気づきました。
私もみんなも、(コロナ禍で)何かに対する愛情が深くなったり、大事なものに気づいた人が多くて。気づくべき期間だったと思うし、気づいたからこそ生きやすくなることもあった。そういう意味ですごく重要な期間だったとも思いました。
―たしかに、音楽をはじめエンターテイメントの重要性を再確認できましたよね。
大武茜一郎(以下、大武):今日、熊本の小学校でライブしたんです。これまで、ライブはライブハウスでやるのが当たり前だと思っていたのですが、コロナ禍になって、これまでそういう場所を「与えてもらっていた」ことに気づきました。
ライブができなくなった時期、最初は「ちょっと長めの休み」くらいに捉えていましたが、1、2か月経つと、普段の生活もままならなくなってしまって。とにかくぼくは誰かに歌を、バンドの演奏を聴いてもらえることが生き甲斐なんだと再確認できました。
ピエール畳:ぼくは、少し前まで人生でいちばん落ち込んでいて、家から動けない状態だったんです。コロナ禍までは、呪われているのかってくらい、ドラムに全部捧げてきたんで、本当に音楽しかなかったんです。
精神的に追い詰められすぎて、「音楽を辞めよう」とすら本気で考えたのですが、そしたら逆に楽になって、呪縛から解き放たれた感じがしました。それからは、音楽がまっすぐ耳に入ってくるようになった気がします。かえって音楽人生の幅が広がったなと思いました。
「弱さ」は、見方を変えるとその人にしかない魅力
―お二方とも、コロナ禍のなかで自分自身の心の弱い部分を見つめ直し、新たな気づきにつなげているように感じました。お二方の音楽には「弱さ」を抱えている人たちへのメッセージを感じますが、いかがでしょうか?
チッチ:BiSHは「弱さ」を「個性」に変えたグループだと思います。もともと私たちメンバーもすごく生きづらかったんですけど、BiSHを結成して、ダメなところや弱さって、見方を変えるとその人にしかない魅力でもあるんだなって気づいて。
だから、誰かの弱いところやダメなところを見ても、頭ごなしに「それは違う、ダメだ」とは言わなくなりました。「弱い自分のことが嫌いでも、生きていたらなんか楽しくなるんだよ」「上を向いて生きるんだよ」というような気持ちで。
とだげんいちろう(以下、とだ):どれだけ強そうに見える人でも必ず弱いところがあって、大きな目で見たらみんなあんまり変わらないよね。変わらずに接することがいちばんなのかなと思います。
料理や散歩。それぞれの気持ちを「上向きに」する方法
―自分自身の気分が沈んでしまったりすることもあると思います。そんなとき、どうやって気持ちを上げていますか?
カニユウヤ:ラーメンとかお寿司をつくって彼女や友達と食べます。料理はまじでストレス発散になります。音楽と一緒でトライ&エラーなのも面白いです。最近たくさんダシが取れるような大きい鍋を買いました(笑)。
ピエール畳:ぼくは歩きます。散歩ですね。生産性を求める行動をすると煮詰まっちゃうので、ただ歩いて何にも考えないようにします。
大武:ぼくはオナニーですね! 気分がかなり上向きになります(笑)。「頑張ってるね」って自分にご褒美をあげている感じで。その時間はめちゃくちゃ集中してますし。
一同:(笑)。
―チッチさんはいかがでしょうか?
チッチ:私は、内に溜め込まず、信頼できる人に話します。辛い気持ちは聞いてもらうと楽になるし、逆にいいことは倍になるように感じます。
―倍になる?
チッチ:人に話すと自分にない答えが返ってきたりして、そこにすごく意味を感じられるというか。
とだ:ぼくも、辛いときは友達に助けられてきたことが多いから、人に話すっていうのがいちばんかも。いろんな見方があることを知れるだけでも無茶苦茶救われます。
―人に話すこと、あるいは頼ることは、困難を乗り越えるために大切なことですね。
チッチ:でも一方で、頼りたくても頼れない人も結構いて。状況的にも性格的にもそれが難しい場合がありますよね。
そういう人にとっていちばんの味方が音楽なのかなって私は思います。別に友達が「人」じゃなくても良いと思うんですよ。いろんなパワーを持っていて、いろんな人の気持ちに寄り添える存在がそばにいることが大切なんじゃないかな。
「上向き」でいるために、おじさんになっても少年でいたい
―気持ちを上げるといえば、今回、初恋(突然少年)さんは株式会社TENGAとコラボしオリジナルソングを作成しました。経緯とそこに込めた想いなどをお聞かせください。
とだ:今年4月にメンバーが変わって、最初につくったのがこの曲です。メンバー全員がメンタル的に落ちているときにTENGAさんから依頼をいただいて。それなら、お祭り的なイメージの曲で自分たちも高めていこうと、『上向きでいこう』をつくりました。
―どん底の状態からあれだけ明るい曲をつくられたんですね。
とだ:もう落ち込みすぎていたので、逆にいちばんハイなときをイメージして。好きな女の子と会えたときに自分はいちばんハイな気持ちになるんですけど、そういう感じをイメージして、せんちゃん(大武茜一郎)と歌詞やベースになる音をつくりました。
カニユウヤ:結果としてシンプルで良い曲になったなと思いました。ぼくが高校1年生のときにはじめてつくった曲みたいな感じ。初々しさもあるし、でもいろんな曲をつくってきたなかでこれをやる面白さも感じます。
ピエール畳:歌詞が巧妙ですよね。前向きかつTENGAさんとも絡められていて、隠喩もあって。
チッチ:私が初恋(突然少年)を好きになった理由は、「大人になっちゃってるわー」と自分に思わせてくれるところなんです。少女の気持ちを大切にしたい自分にとって、「大人になっている自分が嫌」と確認することって大事なんですよね。
はじめて恋したときの感情って、もう戻ってこないじゃないですか。同じく、いろんなことに対する初期衝動に出会える機会も、歳を重ねるにつれて少なくなっていく。初恋(突然少年)は、それを何度も思い出させくれるし、今回の曲でもそう思いました。
大武:そのときの感情を完全にプレイバックはできないかもしれないけれど、感じた事実は一生ものというのは変わらない。バンドに対する向き合い方もそうあり続けたいですね。
チッチ:初恋(突然少年)は、ずっと素直なままだよね。過去にメンバーやバンド名が変わったこともありましたが、それでもずっと変わらず少年らしく、丸裸で音楽を届けてくれています。だから私は大好きだし、見ている人たちも「こいつらがいてくれるから頑張れる」という気持ちになるというか。
初恋(突然少年)が一生懸命歌を届けていて、受け止めたときにパワーをもらえる。それがすごく良いです。多分おじさんになっても少年なんだろうなと思います。
カニユウヤ:それ、いいね。小さい頃の大人のイメージってもっと強くて頭良くてって感じでしたが、別にそんなことないんだなって。中学のときに好きだったことがいまも好きだし、大人になっても少年でいたいですね。
ピエール畳:ぼくはバンドに加入してまだ日が浅いので、メンバーでもあるけど、リスナー側の気持ちもあって。だから余計チッチさんのいうことに共感しますね。メンバーを見ていて「少年だなあ」と思います。自分も大人になりきれない類の人間だとも思うんですけど。80歳くらいになってもニンテンドーDSやってるみたいな。
カニユウヤ:その頃にDSやってる人は、もういないだろ(笑)。
- サービス情報
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- プロフィール
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- セントチヒロ・チッチ
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アイナ・ジ・エンド、セントチヒロ・チッチ、モモコグミカンパニー、ハシヤスメ・アツコ、リンリン、アユニ・Dからなる“楽器を持たないパンクバンド”BiSHのメンバー。2016年5月4日にシングル『DEADMAN』でメジャーデビュー。エモーショナルなパフォーマンスや個性溢れる歌声で多くのファンを魅了している。
- 初恋(突然少年) (はつこい(とつぜんしょうねん))
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2012年に高校の軽音楽部で結成されたロックバンド。全国各地で熱いライヴを展開しながら、ときには米農家で田植え&稲刈りをするなど音楽以外の活動で身も心も鍛え続ける。コロナ禍はドラムにピエール畳を迎えて「初恋」として活動中。初恋(突然少年)定期公演を11/2に福岡gigiでワンマン、11/18に新宿LOFTで崎山蒼志とツーマンで開催。
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