歴代2位の視聴数で大ヒット。「気候変動」をテーマにしたNetflix映画
みなさん、映画『ドント・ルック・アップ』はもう見ましたか? Netflixのグローバルランキングで『レッド・ノーティス』に続く歴代2位(※1)の視聴数を稼ぎ、世界的ヒットになっているレオナルド・ディカプリオの最新主演作品。
映画のなかでは、じきに地球が巨大隕石と衝突しすべてが滅ぼされると知った2人の天文学者が、人類を救うべく行動に出ます。残された時間はたったの6か月と14日。
しかし、確実に隕石が落下するとわかっているのに、メディアやSNSで茶化されたり、アンチ科学的な政治イデオロギーに火がついたり、「これはビジネスチャンス!」という企業が出てきたり、選挙結果を優先する政治家に無視されたり……いろんな壁が立ちはだかって、必要な行動がまったく起こりません。
映画を観た人たちは、この状況をコロナ禍の社会や、日本の財政状況など、さまざまな問題と重ねた考察をSNSで発信しています。
本作のディレクターのアダム・マッケイが明かしたところによると、隕石はじつは「気候変動」の比喩なのだそうです。
(ちなみに、レオナルド・ディカプリオは熱心な気候活動家であり、『レヴェナント:蘇えりし者』(2015年)で『アカデミー賞』主演男優賞を受賞したときのスピーチを気候変動に捧げています。)
現実世界では、30年以上も前から気候変動が起きていることが知られています(※2)。「発見」からずいぶん長い時間が経ちましたが、いまだに大気中の二酸化炭素は増えていて、温暖化は進行しています。
なぜ対策は先送りされてしまうのか?
環境アクティビストの著者が過去にかけられた「忘れられない一言」
ぼくは大学生のころ、「温暖化とお金の流れ」に興味を持って活動をしていたのですが、そのときに行なった調査である事実を「発見」しました。
それは、二酸化炭素の主な発生源となっている「石炭」というエネルギー源に、日本の銀行が世界で一番お金を出していた、ということでした。
世界ではすでに、温暖化を解決するには「脱石炭」が必要だと叫ばれていました。
これはさすがにやばい! と思い、さまざまな銀行と直接連絡をとったり、一般市民に向けて情報を開示したり、署名を提出したり、いろいろしました。
その活動を離れて数年後。
あるイベントで席に腰を下ろしたら、なんと、隣の人がかつてバチバチに議論しあった銀行員の方でした。そのときに言われた言葉が忘れられません。
「プロパガンダはいまでも続けているんですか?」
人間は、遠い未来に起きる危機を認識するのが下手くそだといわれています(※3)。でも同時に、地球史上最も想像力が豊かな生き物でもあります。
隕石にしろ、温暖化にしろ、対策が遅れるのは私たちが「想像する」という作業をサボっているからなのかもしれません。
科学者や国連がこぞって「危機的」だと警鐘を鳴らす気候変動。目を逸らしても、この問題はどこにも行きません。手遅れになる前に、私たちはあと一歩、踏み込んで想像を膨らませたほうがいいのかもしれません。
『ドント・ルック・アップ』は、私たちにそれを求めようとした映画なんだと、私は思います。
<参考>
※1
公開より28日間の視聴数で統計をとった「Most Popular Films (English)」のデータ(2022年1月28日現在)
https://top10.netflix.com/
※2
全国地球温暖化防止活動推進センターのウェブサイトによれば、 1985年にオーストリアのフィラハで開催された地球温暖化に関する初めての世界会議をきっかけに、二酸化炭素による地球温暖化の問題が大きくとりあげられるようになったという
https://www.jccca.org/faq/15922
※3
イギリスの新聞『The Gurdian』の記事では、私たちがなぜ気候変動に対して行動を起こせないのか、さまざまな研究の例を挙げながら説明している
https://www.theguardian.com/sustainable-business/2014/nov/10/brain-climate-change-science-psychology-environment-elections
- プロフィール
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- 清水イアン (しみず いあん)
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環境アクティビスト。2030までに新たな森林伐採 ZEROを目指す国際環境 NPO 「weMORI」代表。世界中の創造力と10代をつなぐEdTechプログラム「Inspire High」ナビゲーター環境・気候変動に関する先端情報と仲間が集まるオンライン・コミュニティ「GREEN DAIGAKU」を最近スタート(仲間募集中です!)。世界に森を、教育にインスピレーションを、次世代に美しい地球を。
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