「彼女はいつも希望の象徴でした。もう一度、彼女を希望の象徴にしてください」
第2次世界大戦時、ナチスドイツによる迫害から、1,100人以上ものユダヤ人の命を救ったドイツ人実業家オスカー・シンドラーの実話を描いたホロコースト映画『シンドラーのリスト』(1993年)。アカデミー賞で作品賞や監督賞など7部門で受賞した、スティーブン・スピルバーグ監督による不朽の名作だ。
ほぼ全編モノクロで構成されたこの作品で、印象的なのが「赤いコートの少女」だ。ゲットー解散でユダヤ人労働者が逃げ惑うなか、カラーのコートを着て現れるこの少女は、その後シンドラーの心境に大きな変化をもたらすことになる。
この「赤いコートの少女」を演じたのは、当時3歳のオリヴィア・ダブロウスカさん。映画公開から29年が経ち、現在32歳になったダブロウスカさんは現在、コピーライターとして働きながら、ポーランドの国境でウクライナから逃れてきた難民の支援活動に従事している。
ダブロウスカさんは3月上旬、自身のInstagramに、青と黄色のウクライナの国旗のカラーで描いた「赤いコートの少女」の画像をシェアし、世界に向けてメッセージを放った。
She was always the symbol of hope, let her be it again-
彼女はいつも希望の象徴でした。もう一度、彼女を希望の象徴にしてください。
We need your help here at the Polish-Ukrainian border-
ポーランドとウクライナの国境で、あなたの助けが必要です。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は開始から2か月経ったいまも、終わりを見せる様子はなく、両国軍の攻防は激化している。
ポーランドの国境から20キロと近距離で爆撃があったときは、ダブロウスカさんも身の危険を感じたという。しかし、心が折れることは決して無いようだ。
I'm scared, but that only motivates me more to help refugees.-
恐怖を感じていますが、その分、難民を救助する気持ちが高まっています。
「私はずっと、赤いコートの少女と一緒に人生を歩んできました」
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によれば、ウクライナから国外に逃れた難民の数は4月21日時点で513万人余り。そのうちポーランドに避難したのは、半数以上に当たるおよそ286万人に上る(*1)。
地域の難民の輸送を行っているタブロスカさんは3月、ウクライナ人の母親と2人の子どもの家族と出会ったという。彼らはドイツ国境近くの遠い街への移動手段を必要としていた。彼らは誰かに頼るのに必死で、この時ばかりは断ることが出来なかったと振り返る。
I can't tell you everything I saw there, because I don't have rigth words in my mind... Nobody, who have never seen this, can't imagine this nightmare in eyes of those people.-
ここで見たすべてをお話することはできません。なぜなら、私は正確に伝えられる言葉を持ち合わせていないからです。ここを見たことがない人に、彼らの目に映った悪夢を想像することはできないでしょう。
タブロスカさんはボランティア活動のほか、SNSで寄付を呼びかけるなど精力的に活動しているが、あくまで謙虚な姿勢を崩そうとしない。
Even though I do coordinate some actions, I’m just a cog in the machine and I’m pleased there’s so many of us!-
私は確かにいくつかの活動を行っていますが、私は単なる機械の歯車に過ぎません。こんなに大勢の人がいることに、感謝しています。
ダブロウスカさんはなぜ、シンドラーさながらの勇敢な行動ができるのだろうか? その背景には「赤いコートの少女」の存在が大きかったようだ。
You know, this little Girl in the Red Coat was with me all my life. I didn't think about her much, she was hiding somewhere in my mind. I played her when I was just 3YO and since then. More or less, she was with me during my preschool, school, during lessons in music school, at the University and in my first work. And now.-
私はずっと、「赤いコートの少女」と一緒に人生を歩んできました。私が彼女のことを意識していないときでも、心のどこかに隠れていました。彼女を演じた3歳のときからそれ以降、幼稚園、学校、音楽学校、大学、最初の仕事、そしていまもずっと彼女がいます。
And she went with me to the border, she came to the reception points where I saw a lot of little girls in coloured coats. And many little boys in coloured jackets.
彼女は私と一緒に国境に赴き、難民の受付場所に着いたところで、カラーのコートを着たたくさんの小さな女の子を観ました。カラーのジャケットを着たたくさんの男の子もです。
タブロスカさんは現在、クラウドファンディングサイトで難民支援のための資金調達を行っている(*2)。興味のある人はチェックしてほしい。
*1: UNHCR「Situation Ukraine Refugee Situation」(外部サイトを開く)
*2: zrzutka.pl「Dziewczynka w czerwonym płaszczyku dla Ukrainy」(外部サイトを開く)
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