『イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル』が本日9月20日から12月11日まで国立新美術館(東京・六本木)で開催される。
1960年代、まだ男性のものという認識が根強かったパンツスタイルを積極的に取り入れるなど、ジェンダー規範にとらわれないデザインを生み出してきたイヴ・サンローラン。
同展はイヴ・サンローランの死後、初めて日本で開催される大回顧展。1958年にディオールのデザイナーとしてデビューを果たしてから、自身のブランドとして初のコレクションを成功させ、美術作品や舞台芸術、日本にも影響を受けながら独自のスタイルを確立するまでの歴史を、ルック110体を含む262点の展示物で紹介する。
開催に先立って行なわれた内覧会の様子をレポートする。
トンネルを抜けると現れる、はじまりのランウェイ
展示は12の章で構成。第0章となる「ある才能の誕生」では、イヴ・サンローランのポートレートや、16歳の頃にデザインしたペーパードール、メゾン・ディオールでデザイナーを務めた初の春夏コレクションで発表した「品行方正」シャツ・ドレスなどが展示されている。
アーチ状の壁をくぐると、ランウェイを再現するかのように作品が並べられた展示が出現。第1章「1962年 初となるオートクチュールコレクション」だ。
このセクションでは、ディオールで6つのコレクションを手がけ、自身のブランド「イヴ・サンローラン」を設立した翌年の1962年に発表された初のコレクションを展示。船乗りの作業着に着想を得た「ファースト・ピーコート」や、活動的な女性のニーズに応えた「スカート・スーツ」などが並んでいる。
紳士服からヒントを得て作られた衣装たち
第2章では、イヴ・サンローランの革新的なデザインとして、紳士服からヒントを得てつくられた「タキシード」や「ジャンプスーツ」「サファリ・ルック」「トレンチコート」などを紹介。
紳士服のカットの美しさや快適さ、実用性を維持しながら、シンプルさとエレガンスを組み合わせたデザインは、女性解放運動が興隆した時期とも重なり人気となったという。
第3章「芸術性 刺繍とフェザー」、第4章「想像上の旅」からは会場の雰囲気がよりシックに変化。煌びやかな刺繍が施された作品や異国の文化から着想を得たデザインが色とりどりに輝いている。
第5章「服飾の歴史」では、西洋における服飾の歴史や美術史に触発されたデザインを紹介。ずらりと並んだ作品は古代から始まり、中世、17〜19世紀を経て20世紀の細かい年代ごとのトレンドを反映したデザインへと至る。
このセクションではすべての作品を目の前で見ることが可能。細かい素材感や色の違いを楽しめるのも嬉しい。
第6章「好奇心のキャビネット ジュエリー」では、イヴ・サンローランの表現にとって重要な要素であるアクセサリーを紹介。真っ暗な部屋の中で輝くアクセサリーが並ぶ光景は壮観だ。
イヴ・サンローランは「ドレスをシンプルにし、アクセサリーを風変わりな感じにするのが好きなんだ」と話していたという。
舞台芸術に魅了されたイヴ・サンローランがつくった、さまざまな衣装たち
イヴ・サンローランはコレクションのほかに、演劇やバレエ、ミュージックホール、映画の衣装を数多く制作した。
第7章「舞台芸術――グラフィックアート」と第8章「舞台芸術――テキスタイル」では、サンローランが手がけた初期のスケッチに加えて、映画『昼顔』(1967)をはじめとしたさまざまな演劇、映画などの衣装が展示されている。
第9章「アーティストへのオマージュ」では、イヴ・サンローランがアーティストに敬意を払って制作した作品を紹介。自らが交流した作家に加えて、ピカソ、マティス、ジョルジュ・ブラック、ファン・ゴッホ、ボナールなど過去の画家への強い尊敬と親愛の念が表されているという。
イヴ・サンローランと日本
第10章「花嫁たち」では、ファッションショーのフィナーレを飾るウェデングドレスを展示。
「結婚」というイヴ・サンローラン本人はあまり執着がなかったテーマだからこその幻想性、オリジナリティ、ユーモアがあると解説されており、1965年秋冬コレクションで発表された「バブーシュカ」はその一例と言えるだろう。
展示の最後に現れるのは、金屏風の前に飾られた衣装たち。
ディオール時代から、日本製の絹織物に金糸刺繍を施して輸出用のコレクションに使用していたイヴ・サンローラン。第11章「イヴ・サンローランと日本」では、1963年に初来日し、日本の伝統工芸品をコレクションしていたサンローランと日本の関係を紐解き、展示のラストを飾る。
イヴ・サンローランの「時を超えるスタイル」
衣服が持つジェンダーのイメージに縛られず、現代では女性の服装として定着している普遍的なスタイルをつくり上げたイヴ・サンローラン。
同展を通してブランドの歴史や、サンローランが魅了されたもの、こだわったものを知ることで、時を超え、サンローランの頭の中を少し覗いたような気分になれるのではないだろうか。
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