創業者のジャニー喜多川氏による性暴力問題について、ジャニーズ事務所が10月2日に都内で記者会見を開き、ジャニーズ事務所の社名を「SMILE-UP.」に変更し、被害者への補償業務のみを行なっていくことを発表した。タレントのマネジメントや育成業務は新たに設立する会社で担い、現ジャニーズ事務所は補償を終えた後に廃業するという。
会見には、代表取締役社長の東山紀之氏、ジャニーズアイランドの代表取締役社長の井ノ原快彦氏、弁護士の木目田裕氏、山田将之氏が登壇。東山氏は冒頭に、被害者に向けて謝罪。さらに井ノ原氏はSNS上で被害者への誹謗中傷が悪化していることに触れ、「被害に遭われた方は一人でずっと抱え込んでいたと思います。それがやっと声を上げられた。その勇気を無駄にしたくないですし、その勇気があったからこそ 何卒誹謗中傷はやめていただきたいと思います」と呼びかけた。
東山氏はジャニーズ事務所の社名を変更した上で、被害補償業務のみを行なっていくことを発表。9月に設置した被害者救済委員会には同30日までに478人から申し出があり、そのうち325人が補償を求めているという。
マネジメント業務などは新たに設立する会社で担う。新会社の社名についてはファンクラブから公募するという。
東山氏の冒頭発言全文は以下の通り。
「本日は私どもが再出発するにあたり、現時点でどのようなビジョンや方針を持っているかご説明させていただきたいと思っています。前回9月7日に記者会見をさせていただいてから約1か月、喜多川氏によって被害にあった方々、去っていった仲間達、スポンサー企業の皆様、放送局をはじめとするコンテンツ企業の皆様、ひいてはエンターテイメント関係の皆様、本当にいかに自分たちが内向きでいけなかったということを感じております。そして何よりも当社所属のタレントたちを応援していただいているファンの皆様、その方達からも信頼を大きく損なってしまったなと思っております。
前回の記者会見ではジャニーズ事務所という社名を残すと申しましたが、それこそがまさに私たちが内向き体制であったと批判されて当然のことだと感じていました。私どもは、そうした反省の上に、再出発とはどういうものか考えてきました。井ノ原とも真剣に討論をして参りました。
そこで、現在のジャニーズ事務所は社名を変更いたします。そして、タレントマネジメント及び育成の業務からは完全に撤退させていただきます。被害に遭われ苦しんでいる方々の補償、救済、心のケア、これを時間がかかっても最後まで全うさせていただきたいと考えております。
そして、これからのエンターテイメント業界の行く末を見極めるなかで、自分たちで新しい会社を立ち上げ、ファンの皆さんのお力を借りながら、従来のマネジメント、育成業務をアップデートさせていき、その向上を図っていくこととしました。
つまり自分たちでジャニーズ事務所を解体し、被害に遭われた方々に真摯に向き合いながら、最後まで補償を行ない、新しい会社でファンの方々と一緒に、新しい未来を切り開いていく。これが私たちのビジョンです。このビジョンを実現させていくためにはたくさんのことを検討し解決していかなければならないと思っています。本日の時点では具体的な説明ができない点が多々ありますが、今後決まったことは皆様に別の機会をいただきながらご説明していきたいと思っております。
まず、今後の方針のうち、現在のジャニーズ事務所ですが、被害に遭われ今もなお苦しんでいらっしゃる方への補償業務のみを行なっていくこととします。被害補償の受付窓口として9月13日付けで3名の弁護士から構成される被害者救済委員会を設置いたしました。9月30日までにこちらの委員会には478人の方の申し出があったとご連絡をいただいております。そのうち被害を申告して補償を求めている方は325人であります。補償は11月からスタートさせていただきたいと思っております。今後は被害者のご相談窓口について、臨床心理士などにご協力をいただき、被害者の方に寄り添うかたちを作っていきたいと考えております。
そして、故喜多川氏と完全に決別する決意を示すため、社名を10月17日付けで「SMILE-UP.」と変更していきます。この「SMILE-UP.」という名称は、3年前に社会貢献プロジェクトを推進していくために取得した商標であります。「スマイル」という言葉に違和感を感じている方もいらっしゃるとは思いますが、まずは被害に遭われた方々への支援や補償を少しでも進めていくことがSMILE-UP社の社会的責任と考えております。
SMILE-UP社は引き続き私が代表取締役社長として務めます。そして藤島ジュリー系景子氏は100%株主として取締役に留まります。これは今後法を超えた補償を行なうには、第三者の資本を入れるとできなくなるからです。そして、被害を受けられた方々への補償をきちんと最後まで行ない、廃業いたします」
<メイン写真:東山紀之氏(9月7日撮影)>
ジュリー氏のレター全文 「ジャニー喜多川の痕跡をこの世から一切なくしたいと思います」
東山氏の冒頭発言の後、会見に欠席した藤島ジュリー景子氏の手紙が井ノ原氏によって読み上げられた。手紙の全文は以下の通り。
「この度叔父ジャニー喜多川により、性被害に遭われた方々に、あらためて心からお詫び申し上げます。5月2日に被害に遭われた方と初めてお会いしました。その後もいろいろと実際にお話を伺うなかで、この方々にどのように補償していくのがいいのか、加害者の親族としてやれることが何なのか、考え続けております。
そして、ジャニーズ事務所は名称を変えるだけではなく、廃業する方針を決めました。これから私は被害に遭われた方々への補償や心のケアに引き続きしっかり対応させていただきます。叔父ジャニー、母メリーがつくったものを閉じていくことが、加害者の親族として私ができる償いなのだと思っております。
私は4年前に母親であるメリーからジャニーズ事務所を相続いたしました。ジャニーズ事務所はジャニーだけではなく、私の母であるメリーも権力を握っていたと思います。ジャニーはメリーからお小遣いをもらうというかたちでしたので、経営的なことはすべてメリーが決めていたと思います。
ジャニーと私は、生まれてから一度も2人だけで食事をしたことがありません。会えば普通に話をしていましたが、深い話をする関係ではありませんでした。ジャニーが裁判で負けた時も、メリーから『ジャニーは無実だから、こちらから裁判を起こした。もしも有罪なら私たちから騒ぎ立てるはずがない。本人も最後まで無実だと言い切っている。負けてしまったのは弁護士のせい』と聞かされておりました。
当時、メリーの下で働いていた人たちも、同じような内容を聞かされていて、それを信じていたと思います。そんなはずはないだろうと思われるかもしれませんが、ジャニーがある種、天才的に魅力的であり、皆が洗脳されていたのかもしれません。私も含め、良い面を信じたかったのだと思います。
そして、母メリーは私が従順な時はとても優しいのですが、私が少しでも彼女と違う意見を言うと気が狂ったように怒り、叩き潰すようなことを平気でする人でした。20代の時から私はときどき過呼吸になり、倒れてしまうようになりました。当時病名はなかったのですが、今ではパニック障害と診断されております。
私はそんなメリーからの命令で、ジャニーズ事務所の取締役にされておりましたが、事実上私には、経営に関する権限はありませんでした。そして、2008年春から新社屋が完成した2018年まで、一度もジャニーズ事務所のオフィスには足を踏み入れておりません。これは性加害とはまったく違う話で、私が事務所の改革をしようとしたり、タレントや社員の環境を整えようとしたことなどで2人を怒らせてしまったことが発端です。
ジャニーとも2008年ごろから2016年ごろまで、ライブ会場ですれ違うことがあっても、会話はしておりませんでした。その後、ジャニーの稽古場に呼び出されてひさしぶりに話しましたが、それ以降もジャニー本人に会ったのは数回です。その期間のジュニアからのデビューや管轄外のグループの解散のプロセスにも関わっておりません。
メリーからは私の娘である孫に会いたいと切望され、一年に数回、一緒に食事をすることやお正月には孫と旅行することを決められておりましたが、私自身はメリーと話をすること極力避けて生きてきた人生でした。このような説明をすると嘘だとか、親子で仲が良かったのを見たことがあるなど、またバッシングされる記事が大量に流れるのだと思いますが、近い関係者の皆様、タレントの方々、社員などであれば、こうした事情を知っていると思います。
心療内科の先生に『メリーさんはライオンであなたはシマウマだから、パニック障害を起こさないようにするには、この状態から逃げるしかない』と言われ、自分で小さな会社を立ち上げ、そこに慕ってくれるグループが何組か集まり、メリー、ジャニーとはまったく関わることなく長年仕事をしておりました。
このような理由でジャニーがいる稽古場とはまったく違う場所で働いており、ジュニアの皆さんとの接点もなかったので、今回申し出てくださった中で、私がお会いしたことがあるのは9人です。それ以外の多くの方々とは、お会いしたことがないのです。いまから思えば、ジャニーの親族であり女性である私に、ジュニアの皆さんはもちろんのこと、タレントの皆さんも噂話をすることや相談もしにくかったのではないかと思います。
いま被害を申告されている方々の中で、私を含めて現在の役員が被害者の方々について直接知る情報は在籍していたかどうか以外にほぼございません。そこで、ジャニーやジュニアと私以上に近い距離で接していらした元役員、元社員、そして外部スタッフの皆様には、被害者救済のご協力をぜひお願いできたらと思っております。
ジャニーズ事務所は廃業に向かっておりますが、1人たりとも被害者を漏らすことなく、ケアしていきたいと思っております。知らなかったということを言い訳にするつもりはまったくありません。メリーが言うことを信じてしまっていたことや、そしてそれを放置してきた自分の鈍感さ、すべて私の責任です。
また、今回なぜ私が100%の株主で残るかと多くの方々から批判されました。実は、多くのファンドの方々や企業の方々から、私個人に有利な条件で買収のお話もたくさんいただいております。そのお金で相続税をお支払いし、株主としていなくなるのは、補償責任もなくなり一番楽な道だとも何度も何度も多くの専門家の方々からアドバイスされました。
しかし、100%株主として残る決心をしたのは、ほかの方々が株主で入られた場合、被害者の方々に法を超えた救済が事実上できなくなると伺ったからでした。そういう理由で現在の会社には株主100%として残りますが、チーフコンプライアンスオフィサーを外部から招聘し、今後私は、補償とタレントの心のケアに専念し、それ以外の業務には一切当たりません。
また、今後私はすべての関連会社からも、代表取締役を降ります。また、ジャニーとメリーから相続をしたとき、ジャニーズ事務所を維持するためには事業承継税制を活用しましたが、私は代表権を返上することでこれをやめて、速やかに納めるべき税金をすべてお支払いし、会社を終わらせます。
ジャニーズ事務所を廃業することが、私が加害者の親族としてやり切らねばならないことだと思っております。ジャニー喜多川の痕跡をこの世から一切なくしたいと思います。
最後にジャニーズ事務所に所属するタレントを、これまで応援してくださった世界中のファンの方々のお気持ちを考えると、本当に本当に申し訳なく、言葉にもなりません。また、関係各所の皆様、ご迷惑ご心配をおかけして大変申し訳ございません。今日、記者会見に出席せず、このようなお手紙を出すことで逃げた、卑怯だと言われることは重々承知です。
今回初めて公にお話ししたメリーは本当にひどい面も多くあったのですが、優しい時もあり、自分の母でもあり、皆様の前でお話ししたいことを過呼吸にならずにお伝えできる自信がなく、このようなお手紙にさせていただきました。誠に申し訳ございません。
あらためて被害者の皆様。ジャニーのしたことを私も許すことができません。心から申し訳ないと思っております。また、タレント、社員の皆さんがこれから新しい道に思いっきり羽ばたき、みんなが幸せになれるよう、私はそれを後押しできるような形になるよう、精一杯頑張っていきたいと思っております。どうか引き続きご指導、ご鞭撻いただきますようよろしくお願いいたします。
2023年10月2日 藤島ジュリー景子」
関ジャニ∞、ジャニーズWESTなどのグループ名も変更へ
また、関ジャニ∞、ジャニーズWESTなどの「ジャニーズ」という名称がつくグループ名や、グループ企業名についても、変更する方針という。
東山氏は、「たくさんのファンの方に愛されてきた名前ですから、本人たちもすごく葛藤はあると思う。ただ、やはり変えていくということは聞いております。本人たちも苦渋の決断をしたと思うんですが、そういうかたちになっていくと思います。すべて『ジャニーズ』と付くものはなくなります」と説明した。
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