漫才の祭典『M-1グランプリ』は、いまや年末の風物詩となった。今年の決勝はクリスマスイブの12月24日(日)に行なわれる。
予選を勝ち抜いて決勝に駒を進めたのは、カベポスター、くらげ、さや香、真空ジェシカ、ダンビラムーチョ、マユリカ、モグライダー、ヤーレンズ、令和ロマンの9組。ここに決勝当日に行なわれる敗者復活戦の勝者1組を加えた10組が、決勝の舞台で争うことになる。
準決勝の模様は配信動画で一通りチェックした。ここまで勝ち上がっているコンビは、いずれも実力者揃いということもあり、例年通りのハイレベルな戦いが繰り広げられていた。
爆笑をさらっているコンビが何十組もいて、誰が勝ち上がるのかはほとんど読めなかった。個人的な感覚では、ウケ具合やネタのクオリティから考えて、真空ジェシカとカベポスターはほぼ間違いなく決勝に行っただろうと思えたが、それ以外は絞り切れなかった。そのぐらいの大混戦だったのだ。ファイナリスト9組の見どころについて、五十音順に解説する。
メインビジュアル:©M-1グランプリ事務局
カベポスター(2014年結成/吉本興業)
カベポスターは昨年に続いて2年連続の決勝進出を果たした。昨年は『ytv漫才新人賞』『ABCお笑いグランプリ』という2つの賞レースを制し、勢いに乗った状態で決勝に挑んでいたが、1番手という順番だったこともあり、空気をつかみ切れず10組中8位に終わった。
永見大吾の淡々とした口調のボケと、浜田順平の落ち着いたトーンのツッコミの魅力は健在。準決勝で披露したストーリー性のある漫才は、映画1本分ぐらいの満足感があった。
くらげ(2018年結成/吉本興業)
くらげは、2019年にも準決勝まで進んだ経験があり、このときにも斬新なフォーマットの漫才を演じて、決勝に進んでもおかしくないぐらいのインパクトを残していた。見た目は無骨な感じがするが、ネタの切り口は新しく、漫才の技術もある。派手さはないが確実に良い仕事をする職人肌の漫才師だ。
さや香(2014年結成/吉本興業)
さや香は、昨年に続いて3度目の決勝進出。昨年は決勝ファーストラウンドを1位で通過したが、最終決戦でウエストランドに逆転され、惜しくも準優勝に終わっている。
2人とも卓越した話術を持っていて、感情のこもった掛け合いで観客を自分たちの世界に引き込んでいく。間違いなく優勝候補の筆頭である。
真空ジェシカ(2012年結成/プロダクション人力舎)
真空ジェシカは3年連続の決勝進出を果たした。これは問答無用で称賛すべき快挙である。なぜなら、しゃべりの上手さ、フォーマットの新しさ、キャラクターの強さなどが評価されがちなこの大会で、彼らは純粋に面白いだけの漫才で真っ向勝負を挑んで結果を残しているからだ。
不気味なたたずまいの川北茂澄が自由奔放にボケを放ち、ガクがおびえながらツッコミをいれていく。説明不足のボケにツッコミで情報を補って笑いを取る手法も多用される。一昨年と昨年に続いて決勝の舞台でその圧倒的なセンスを見せつけてほしい。
ダンビラムーチョ(2011年結成/吉本興業)
ダンビラムーチョは昨年準決勝で敗れていたが、独創的なネタを披露して敗者復活戦でも話題になっていた。どちらかというと内向的な芸人が多いなかで、彼らの芸風は一貫して明るくポップな感じがする。
今年の準決勝でも、自分たちの持ち味を出し切るネタで大きな笑いを巻き起こし、見事に決勝行きの切符をつかんだ。大舞台でこそ真価を発揮する芸風なので、決勝でも活躍が期待できそうだ。
マユリカ(2011年結成/吉本興業)
マユリカは、最近の若手お笑い界でも屈指の人気を誇るアイドル芸人である。ラジオ番組のグッズとして男性芸人初の「ビキニ写真集」を発売したところ、2,700冊があっという間に完売してしまったこともあった。
お世辞にもイケメンとは言えないように見える2人だが、人気は抜群。そして、実力も備えている。マユリカの漫才においては、阪本のボケにも中谷のツッコミにもそれぞれひと癖あって、見る側がどちらにも感情移入できない感じがするのが新しい。決勝の舞台をきっかけに、さらに彼らの魅力に気付くファンが増えるかもしれない。
モグライダー(2009年結成/マセキ芸能社)
モグライダーは、2021年に決勝に進んだことをきっかけに一気に大ブレークした。10月に始まったTBSの『ジョンソン』では、かまいたち、見取り図、ニューヨークと並んでレギュラーメンバーに選ばれている。
すっかりテレビの人気者になった彼らが、見事に決勝に返り咲きを果たした。「番組を盛り上げるために知名度優先で選ばれたのではないか」などと邪推をする人もいるかもしれないが、準決勝を見ている立場から言うと、断じてそれはない。準決勝でもアドリブ性の高いモグライダー流の漫才を披露して、大きな笑いを起こしていた。
芝大輔が相方のともしげに何かをやらせて、上手くできないとすかさず的確なツッコミをいれていく。往年のコント55号を思わせるそのスタイルは、同じネタでもやるたびに展開が変わるので、何度見ても飽きずに楽しめる。
ヤーレンズ(2011年結成/ケイダッシュステージ)
ヤーレンズは昨年初めて準決勝に進み、決勝進出まであと一歩というところまで行っていた。そして今年、満を持して悲願の決勝進出を決めた。彼らは大阪で別名義で活動していた時期もある苦労人である。
淡々とした調子の脱力系漫才を得意としていたが、ここ数年で芸風をがらりと変えて、ボケの楢原真樹がハイテンションなキャラクターを演じるコント漫才をやるようになってから、業界内でも一段と注目されるようになった。
最近の『M-1』では変則的なネタが増えていて、オーソドックスなコント漫才をやる人はむしろ少なくなっている。そんななかで、ヤーレンズは正統派のコント漫才で安定した笑いを取ることができる貴重な存在である。2007年王者のサンドウィッチマンのように、王道のコント漫才の強さを見せつけてほしい。
令和ロマン(2018年結成/吉本興業)
令和ロマンは、近年頭角を現している「大学お笑いサークル出身芸人」の出世頭である。2020年には『NHK新人お笑い大賞』でも優勝を果たしている。
ネタの切れ味とツッコミの安定感には定評があり、数年前から若手の注目株として業界内では知られた存在だった。そこからさらにボケの髙比良くるまの演技力と表現力に磨きがかかり、彼らの漫才は新しいステージに到達した。決勝でも存分に暴れてほしい。
敗者復活戦の審査方法を一新
最後に、決勝当日の昼間に行なわれる敗者復活戦について解説しよう。敗者復活戦は、準決勝で敗れた21組のコンビによって争われる。勝ち残った1組だけが決勝に進むことができる。
今年から敗者復活戦の審査方法が変わった。昨年までは視聴者投票で審査されていたのだが、これについては否定的な意見も多かった。結果を見ると、明らかに人気や知名度があるコンビの方が有利になっていたからだ。昨年までの敗者復活戦は、実質的には知名度がないとほぼ勝ち目がない戦いだった。
それが今年は大きく変わり、観客審査員と芸人審査員による投票を組み合わせるかたちになった。まず、21組を7組ずつの3ブロックに分け、漫才を披露してもらう。そして、会場からランダムで選ばれた観客審査員が投票を行ない、各ブロックから1組ずつコンビを選出。その後、芸人審査員の投票によって、その3組のなかから決勝に勝ち上がる1組を選ぶ。この方式ならば、知名度に関係なく、その日のネタの出来が良い芸人が勝ち上がる可能性が高い。
昨年まで4年連続決勝進出のオズワルド、2年連続決勝進出のロングコートダディをはじめとして、実力者がひしめいている敗者復活戦は、決勝と同じくらいレベルが高い戦いになる。『ツギクル芸人グランプリ2023』優勝のナイチンゲールダンス、ハイテンション漫才のフースーヤなど、有力候補を挙げればきりがない。個人的には、無邪気なボケと技巧的なツッコミのバランスが良いスタミナパン、ハゲ漫才の新境地を開拓し続けるシシガシラを推したい。
今年は、敗者復活戦と決勝が立て続けに放送されることになる。文字通り息つく暇もない熱戦が期待できそうだ。
- 番組情報
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M-1グランプリ2023
12月24日(日)午後6時30分~10時10分
ABCテレビ・テレビ朝日系列全国ネット生放送
M-1グランプリ2023 敗者復活戦
12月24日(日)午後3時~よる6時30分
ABCテレビ・テレビ朝日系列全国ネット生放送
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