霊はいつもあなたを監視している?映画『新・三茶のポルターガイスト』豊島圭介監督と角由紀子に聞く

気温の上昇とともに世間で盛り上がりを増していくのが、ホラーやオカルトの世界。まさに夏真っ盛りのホラー日和がつづくいま、ゾッと寒気を感じたい読者におすすめしたいのが、『新・三茶のポルターガイスト』というホラー映画だ。

本作は、東京・三軒茶屋の心霊スポットに潜入取材した様子を描いた心霊ドキュメント『三茶のポルターガイスト』の続編であり、出演者の角由紀子さんが徹底的に霊現象を検証していくドキュメンタリー映画となっている。

心霊現象と聞くと郊外の廃墟ビルなどを連想するが、この映画の舞台は東京・三軒茶屋のど真ん中。インタビュー内で角さんが教えてくれた「じつは渋谷のスクランブル交差点みたいな人混みの方が霊が多いんです」という話も印象的だったが、はたして私たちの身近に心霊スポットなど存在するのだろうか?

プロデューサーでもある角さんと、監督の豊島圭介さんに、映画の制作背景はもちろん、身近な心霊現象や霊との向き合い方についてもインタビューを行なった。

あらすじ:東京・三軒茶屋の心霊スポットに潜入取材した様子を描いた心霊ドキュメント『三茶のポルターガイスト』の続編。東京・三軒茶屋にある芸能プロダクションが入居する雑居ビルで多発する心霊現象を収めた「三茶のポルターガイスト」。同作が公開された後も、怪現象は続いていた。数々のYouTuberやテレビの取材がやってきたものの、某テレビ番組では放送不可能とされ、その真相を突き止められなかった場所にオカルト編集者・角由紀子が再び潜入。定点カメラや降霊術、サーモグラフィ、物理学者・超心理学者らの意見も交えて心霊現象を徹底検証していく。そしてカメラは、想像を超える、ある物体の撮影に成功する。

100年に1度出会えるかどうか。オカルトクイーンが衝撃を受けた物件へ

ー今作は、前作『三茶のポルターガイスト』の続編にあたるドキュメンタリー映画になっています。まだ前作を見たことがない人も多くいると思いますので、まずこのドキュメンタリーをつくろうと思ったきっかけを教えてください。

角由紀子(以下、角):一番最初に取り上げた映画は、『怪談新耳袋Gメンラスト・ツアー』です。その映画を通してヨコザワ・プロダクションの存在を知り、「これは100年に一度会えるか会えないかのすごい物件だ」と実感しました。どうにかして世間に広めたい。そんな思いから制作はスタートしました。

ーヨコザワ・プロダクションは、どういったところが特別なのでしょうか?

角:ヨコザワ・プロダクションに行けば、かならずと言っていいほど物が動いたり、お線香の匂いがしたりします。いわゆるポルターガイスト現象ですね。だいたい3回に1回は大きな現象を捉えることができる、きわめて稀な場所です。

豊島圭介(以下、豊島):たいがいの心霊スポットは、それなりのいわくがあります。何かの事故や事件があったりして、その当時の人が亡くなられたときの格好で霊となって出てくる。そうして心霊スポットと言われる場所ができて、そこに人が訪れる。私も数多くのスポットに行っていますが、大概の場合は見ることができません。だけど、ヨコザワ・プロダクションは、ほんとうに色々な現象が起きるんですよ。

ー前作では映画のなかで明らかに人の手が映っていたり、今作ではさらにすごいものが映ったそうですね。私は正直「これはヤラセなのでは?」と思ってしまうタイプなのですが、そんな意見についてどう思いますか?

豊島:映像に関して何か言われること自体は僕は歓迎していますし、そういう議論や賛否両論が生まれる映画ができたら良いな、と思って始めたところもあります。

そして私は、撮影場所のヨコザワ・プロダクションのオーナーである横澤さんや、霊現象を検証している科学者とのバトルを客観的に見る立場でもありました。「嘘か本当か」という結論を出すためにつくった映画ではないですね。それをロマンといったらそうなのかもしれないです。

ー今作の上映前に配信された生放送でも「今日は映らないのかな?」のような疑わしい発言をしていましたが、それもあえてなのですか?

豊島:それで言うと、横澤さんが映画の中で「もっと凄いものを出してほしいな」なんて言うんですよ。もし横澤さんが仕掛け人だったとすれば、すごいウカツな発言だと思いませんか? 逆にそういった危うい発言も信憑性があったりするし、こんなスキのある発言をする人なんだ、というパーソナリティも面白いですよね。

ドキュメンタリーには、映っている人が面白くないと成り立たない特性があると思うんです。そんな横澤さんという稀有な存在と学者さん、角さんやその他登場している人も含めて、心霊現象をめぐるドキュメンタリーになっているんです。そんな意図があって、あえて発言を残すことにしました。

ー前作も今作も、科学者やマジシャンなど、いろいろな人が出演して「本当に心霊現象が起きているかどうか」の検証をしています。それはやらせではないことを証明したかったからでしょうか?

角:そもそも私のなかでは、「嘘か本当か」の検証は前作で完結したと思っていまして。今回はヨコザワ・プロダクションで起きる現象にクローズアップして、現象が起きるタイミングや床や壁から出てくる白い手の物質は何なのか? というところを調査したかったんです。もちろんそれをやることで、ヤラセじゃないということも自然とわかってくるとも思いますが。

豊島:これは本作の見どころの一つなんですが、検証してくださった科学者の方とのバトルが描かれているんです。それは「やらせではない」と思う我々と、「やらせだ」と言う科学者とのバトルですね。もともとは、依頼した科学者も「何か発見できたら論文に載せます!」と言ってくださっていたのですが、結果的には検証が甘いとお叱りをうけてしまいました。詳細はぜひ映画館でご覧になってほしいです。

馬鹿にされがちなホラー映画に無限のポテンシャルを感じて

ー現場に入るときや撮影中に気を付けていることはありますか?

豊島:基本的にはありませんね。何も撮れないと困りますので(笑)。

角:気を付けていることは、茶化さない、無礼な態度を取らないという点です。霊たちも協力して映画をつくってくれていると思っています。

ーヨコザワ・プロダクションで霊現象が起きる一番の原因は何だと思いますか?

角:ヨコザワ・プロダクションに関しては、場所が原因だと思います。建物の下に井戸が埋まっているそうで、それが原因で前作にもあったような水漏れが起きているんじゃないかと。それと、個人的には横澤さんがキーパーソンになっていると思います。

ーどうしてそう思われますか?

角:横澤さんはとても霊感が強い人なんです。だからヨコザワ・プロダクションでも横澤さんが媒介となって、現象が起きているんじゃないかなと思います。

たとえば、横澤さんとコックリさんをしたらスイスイとコインが動くんです。前作でも「わかばやし」という具体的な地名を引き出すことができました。また、私たちにどうしてほしいかなど、具体的なメッセージや受け答えができるんです。そんなふうに会話ができること自体とても希な出来事なんです。

豊島:たしかにそう考えると辻褄が合いますね。先ほどの横澤さんの怪しい発言というのも、彼自身が霊の気持ちを代弁したり思いを反映する、媒介としての役割を持っているから生まれる発言なのかもしれません。

ー今回の制作を通して霊といわれる存在から強いメッセージを受けた感覚はありますか?

豊島:霊というよりは、何か別の存在のような感覚を受けましたね。ショーのようなものを見せられている印象です。まるで「何か」が人間の真似をしているようか感覚。僕は、あの現場にいる物が霊だとは思えないんです。「人間の真似をしている何か」である気がします。

人間の真似ができたことを「見て」と言わんばかりに出てくる。そんな、子どものような存在です。でも、だからこそ怖いんですよ。子どもって残酷なことも平気でするじゃないですか? いつか自分も平気で何か危険なことをされるんじゃないかな? と感じることも多々ありました。

角:私はオカルトの研究もしているので、その観点から考えると何か大きな現象には、理由や背景があるんじゃないかと思っているんです。バチカンがエクソシズムのガイドラインを変えたり、昨今では未確認飛行物体などの話題も多く取り上げられています。ヨコザワ・プロダクションでの現象も、この一連の流れのなかで、出るべくして出てきたと感じます。

ー豊島監督におうかがいします。数々のホラー映画を撮られていますが、このようなホラー映画を世に送り出すことについてどう思われますか?

豊島:ホラー映画は、観る側のチャイルディッシュな欲望に応えられると思うんです。お客さんの「怖がりたい」という欲望に、純粋に応えることができる。だからこそ、リテラシーの高い方からしたらホラー映画は馬鹿にされるジャンルでもあるんですよ。

しかし、我々は怖いだけではなく、社会性のある部分やウィットに富んだ映画をつくろうとしているんです。海外だとA24ホラー的な映画ですね。でも、キャスティングをしている段階でも、俳優側から「ホラーですよね?」なんて軽々しく扱われてしまうことも多々あります。

ホラー映画って凄くポテンシャルを秘めていると思うんですけどね。僕はそんなホラー映画を見直してほしいと感じています。

ーそれでもホラー映画を続けるのはなぜでしょうか?

豊島:もともと怖いものが得意ではなかったので、子供の頃はほとんど見たことがありませんでした。見始めた年代は遅くて、30代の頃に呪怨の監督でもある清水崇監督から師事を受けてからなんです。ホラー映画って映画づくりのすべてが詰まっているんですよね。どの順番でどの情報を見せるかという、映画文法の基本的なところが詰まっています。

たとえば、どのタイミングで霊を出すか? その順番は? そんな見せ方一つで、物語自体は変わらないのに印象が変わってくる。それを知ったときに、ホラー映画づくりがやめられなくなりました。

ー角さんがオカルトやホラーに魅せられたキッカケや時期はいつ頃ですか?

角:高校受験の受験日に、友達と『リング』を映画館まで見にいったんですよ。そこで貞子が出てくるシーンを見て、ものすごく怖いと感じたんです。でもそれ以上に、その貞子のシーンが怖すぎて腰を抜かした人が、映画館を四つん這いで出ていったのを見たんです(笑)。そのときに、ホラー映画ってすごいなーっと感じたのを覚えてますね。オカルトに関しては、父が霊感のある人だったので、そこから影響を受けているのもあると思います。

ー少し話を戻しますが、先ほど「何かされるかもしれない」という恐怖と隣合わせだったという話がでましたね。お二人なりの霊現象に対する対処法などはありますか?

豊島:対処法は、基本的には「喜ぶ」ですかね(笑)。僕はいわゆる呪いと言われるような酷い目に遭ったことがないんですよ。角さんはどうですか?

角:無礼はしないということが一番大切です。無礼なことをすると、呪われたりしてしまう危険性があると思います。霊に対してはいつも「ありがとうございました」とお礼の言葉を言うようにしています。敵意がないことを、しっかり伝えたほうが良いですね。

「霊がいるかもしれない」という意識が、生き方を変える

ーいわゆる呪われている場所というのはどれくらいある物なのでしょうか? 私たちが普段生活している、身近な場所にあると思いますか?

角:家のなかですら心霊スポットになりますよ。ゴミが溜まっていたり掃除ができていない場所は心霊スポットになりやすいですね。あとは、人混み。霊感のある人は、渋谷のスクランブル交差点は東京で一番霊がいるって言いますね。

ーここまで聞くと霊現象がかなり身近な物に感じてきます。現象に触れたくないと思っている人たちは、どのような心持ちでいるべきだと思いますか?

豊島:心の持ち様一つで変わってくると思います。たとえば何も無い道で転んでしまったとして、その原因を「さっき通りかかった神社にお参りしなかったからだ」と捉えることもできますよね。先ほどの角さんのお話にもあったと思いますが、礼を尽くすというのも一つの手なのではないでしょうか。

あとは、何がタブーなのかということを自分のなかで決めておくこと。角さんは自分のなかでルールを決めて、タブーを犯さないようにしているんじゃないかと思います。もしも良くないことが起きたときに、自分の行動に原因があると感じないためにも必要なことですよね。

角:霊がいる、あるいは霊現象があるということを信じるか信じないかではなく、いるのかも? くらいで考えて欲しいです。たとえば相手に自分の日常を見られていると考えてみてください。そうすることで、行動が少しずつ変わってきたり生き方が変わったりするんじゃないかな? 信じることは、決して悪いことではないですよね。

ー最後に今回の映画を通して、あたらめて視聴者に伝えたいことなどがありましたらお願いします。

豊島:今回も前回同様にすごい物が撮れています。今回の映画をぜひ観ていただき、霊を信じる気持ちが強まったのか、それとも逆に疑わしく思う気持ちが高まったのか。自分のなかでどんな変化があったのか聞かせてほしいですね。ぜひご自身の目で確かめて見てほしいです。

角:ヨコザワ・プロダクションで手が撮れたり見れたりすると、怖いというよりも感動するんですよ。なんとなく光って見えて、なにか崇高な物に触れたような感覚です。そんな感覚を視聴者さんにもぜひ味わっていただきたいと感じています。最後に言っておきたいのは、私が4年間取材をしてきた限り、ヤラセでは決してないということです。

作品情報
『新・三茶のポルターガイスト』

2024年6月21日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、池袋シネマ・ロサほか全国公開

監督:豊島圭介
出演:
角由紀子
横澤丈二
小久保秀之
山崎詩郎
児玉和俊
滝田和弘
ひなたまる
森脇梨々夏
三上丈晴
小野佳菜恵
大久保浩
オカルトセブン7★
配給:エクストリーム


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