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パリオリンピックで「ブレイキン」の競技が8月9日23:00からスタートする。
初めてオリンピックで開催されるブレイキン。2020年の東京オリンピックから採用されたスケートボードと同じくストリートカルチャーが発祥であることに加えて、競技にDJやMCが存在することも大きな特徴だ。
日本人選手の活躍も期待される同競技の歴史やルール、技などについて解説する。
「平和の象徴」のような存在でもあるブレイキン
ブレイキンは1970年代にアメリカ・ニューヨークのサウスブロンクス地区で、アフリカ系アメリカ人やラテン系アメリカ人の若者たちによって誕生したストリートダンス。
1970年代のブロンクスは社会的な危機に直面しており、特に南部のいくつかの地区は、異なるギャングが支配する区域に分かれていたが、平和を願う人々の尽力により数十人のギャングのリーダーたちによる話し合いが行なわれ、平和協定が結ばれた。
協定が結ばれると、対立していたギャングのメンバーは「ブロックパーティ」といわれる即興のパーティで顔をあわせるように。DJやダンス、ヒップホップの文化が育まれ、暴力で争うのではなく、音楽でダンサーたちが「バトル」をする文化が誕生したのだ。
DJが存在し、選手も事前に踊る曲を知らない。ブレイキンの特徴的なルール
ブレイキンを踊るダンサーは「ブレイカー」と呼ばれ、なかでも男性のダンサーは「B-Boy」、女性のダンサーは「B-Girl」と呼ばれることも。競技では基本的に本名は使わず、「Bネーム」というニックネームを名乗る。
「バトル」と呼ばれるブレイキンの試合。通常のルールでは1対1か2対2、または多数のメンバーからなるチーム同士で対決し、それぞれがソロのムーブを交互に披露しあう。
ほかのダンススポーツと大きく違う特徴は、音楽を担当するDJと進行を司るMCが存在することだ。音楽はDJが選曲するため、選手たちは事前に楽曲を知ることができない。ダンスの技術はもちろん、流れる音楽に合わせてダンスを披露できる即興性や創造性も重要となる。
パリオリンピックでは、男女それぞれ16名ずつの選手が1対1で直接対決。採点は9人の審判が「技術性」「多様性」「完成度」「独創性」「音楽性」という5つの基準に基づいて行なう。
ブレイキンを構成する4つの要素
ブレイキンの動きは主に以下の4つの要素から構成されている。
「トップロック」は立った状態でステップを踏む動き。それぞれのムーブに移行する前の段階で行われるもので、体の前でクロスした両手を左右に開き、片足を前に出す動作を繰り返す。
「フットワーク」は床に手をついて体を支えながら、素早く足を動かすなどの振り付け。フロアの上で両手を使い、それぞれが独自の脚さばきを展開する。
「パワームーブ」はブレイキンを象徴するダイナミックかつアクロバティックな動き。上半身を使った回転や跳躍などをともなう技が多く存在し、背中や肩で回転するウィンドミルや、頭で回転するヘッドスピンなどが代表的だ。それぞれのトリックで基本の動きは決まっているが、足の曲げ方などが選手によって違うのも注目のポイントだ。
「フリーズ」は、技と技のあいだの締めなどに、音にあわせて体の動きを数秒間ストップさせるもの。肘や頭で身体を支えるポーズや逆立ちなどが特徴となっている。
日本代表選手は4人。全日本選手権3連覇の実力者や41歳のブレイカーも
パリオリンピックでは日本代表として男子でShigekix(半井重幸)、Hiro10(大能寛飛)、女子でAmi(湯浅亜実)、AYUMI(福島あゆみ)が出場。
開会式で旗手を務めたShigekixは2023年アジア大会で金メダルを獲得したほか、全日本選手権で3連覇を果たすなど、日本のエースとして活躍が期待されている。
また、女子代表のAYUMIは41歳。ブレイキンの選手は10代、20代が多いが、3年前の世界選手権では金メダル、去年の世界選手権でも銀メダルを獲得するなど、年齢を感じさせない実力でパリオリンピックに挑戦する。
ブレイキンの予選は日本時間の8月9日23:00からスタート。決勝は女子が8月10日4:19、男子が8月11日4:19から開催される。
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