アオイヤマダがMarshallのオーディオで聴く、価値観を変えたあの曲。心を解放する音楽で踊る

Netflixシリーズ『First Love 初恋』やドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダース監督の映画『PERFECT DAYS』での演技、東京2020オリンピック閉会式でのソロパフォーマンス。国内外で多彩な才能を発揮するアオイヤマダは、その独創的な表現力と圧倒的な存在感で見る人々を魅了する。

今回、そんなアオイヤマダが、1962年創業の英国発の老舗ブランドで、世界中の著名ミュージシャンや音楽愛好家に支持されるMarshallとコラボレーション。新商品Major VとWillen IIを実際に使ってもらいながら、取材を行なった。

話題は、Marshallとのつながりをきっかけに、彼女の音楽との関係性や自己表現のこと、宇多田ヒカルのツアーや『PERFECT DAYS』でのエピソード、そして「自分らしさ」について、広がっていった。

Marshallのヘッドホンで音楽を聴くと「空があるみたい」

—アオイヤマダさんとMarshallとの出会いを教えてください。

アオイヤマダ:これまで自分では持っていなかったのですが、バンドをやっている友人たちのあいだでは「お金を貯めてMarshallのアンプを買う」っていう目標があるので、やっぱりそのイメージが強かったです。

ーアオイヤマダさんがMarshallを使っているところは、じつは『First Love 初恋』のシーンで観ている人も多いと思います(※)。

アオイヤマダ:あのシーンを撮るために、何個もヘッドホンをつけて試したんですけど、監督がすぐにMarshallのものに決めた記憶があります。やっぱりビジュアルで決めたのか、監督のことだから何かこだわりがあったのだと思います。

※ アオイヤマダは、古森詩役として出演。荒木飛羽さん扮する綴が、アオイヤマダさん扮する詩に曲を共有してヘッドホンで聞いているシーンがある。

ー今日は撮影をしながら実際にヘッドホンMajor VとスピーカーWillen IIを使用してみてもらいましたが、どうでしたか?

アオイヤマダ:今日の撮影では1日中マーシャルさんのWillen IIで音楽を流していたのですが、(製品のボディが)小さいのに音がすごい広がって感動しました。それに低音が綺麗に聞こえる。私が自分でつくった音源も流してみたんですが、他の製品だとローであんまり聞こえない音もちゃんと響いていて。でも低音でブーブー鳴らないのがいいです。これで防水なのもすごいですね。

ヘッドホンのMajor Vに関しては、ブラウンがすごくいいですね。あまりヘッドホンで茶色って見たことがない。ファッションとして一つのアクセサリーみたいに使えます。つけてみると周りの騒音が制御されて、この小ささなのにすごいなって思いました。音は、専門的なことはわからないですが、すごく空間として高いところまで響いている感じがして、つけながら音楽を聴くと空があるみたいな感じがします。

ー「空があるみたい」って素敵な表現ですね。スピーカーやヘッドホンで聴くお気に入りの曲はありますか?

アオイヤマダ:私は本当にいろんなものを聴くんですよね。撮影のときも家にいるときも歩くときも音楽を聴いてます。なので本当にその時々なのですが、あえて言うとしたら、Young Juvenile Youthさんやハチスノイトさん、池田亮司さん。私の価値観を変えてくれた音楽でもあります。

アオイヤマダの価値観を変えた。音の波や声が持つ魅力を知った音楽

ー挙げていただいたアーティストはどんなふうに価値観を変えてくれたのですか?

アオイヤマダ:一度、一緒にパフォーマンスさせていただいたハチスノイトさんは、自分の声をサンプリングして曲をつくっているんです。彼女の音楽と出会って、声って、出し方とかミックスの仕方でこんなに変わるんだって気づきがあったんです。

ハチスノイトさんを聴きだした頃は、まだお芝居をあんまりしてない時期でした。いまはナレーションなどもやらせてもらっているけど、当時は自分の声があんまり好きじゃなかったんです。自分の声が嫌いだからこそ、踊っていたところもあったから。でも声ってこんなに魅力的なんだって、考え方や価値観が変わりました。私にはこの声は出せないんですけれど、素晴らしいなって。

ー表現活動としてもそうですし、自分自身を受け入れる意味でもきっかけになったんですね。

アオイヤマダ:そうかもしれないですね。 池田亮司さんは、ダブダブ(渋谷のライブハウスWWW)のライブに行ったときに、振動で体のすべての細胞が揺れているという初めての体験をして。

音楽って波なんだ、音って波なんだって、そのときすごく実感したんですよね。 気持ちが和らぐとかそういうことじゃなくて、体が水として揺れる感覚。アート集団のダムタイプの新作で、オーディションに受かって出演させていただいたときに池田さんの曲で踊ったんですけど、大きい舞台でも音の波を感じて踊れました。みんなに体験してほしいくらいすごかった。

ー過去にメディアで松任谷由実さんへの愛も語っていましたね。

アオイヤマダ:16歳のときに初めてもらったレコードが荒井由実さんのアルバムでした。小さいころからジブリなどでもよく聴いてましたが、あらためてとても落ち着く声だなと思いました。

さっきMajor Vを使いながら思ったんですけど、ユーミンさんやハチスノイトさんみたいに、音が高いんだけど層になっている声をこのヘッドホンで聴くと気持ち良さそう。

ユーミンさんは、インタビューか何かで、パイプオルガンの音を教会で聴いたときに、それに声が寄っちゃったっていう話を聞いて。その考え方がすごく好きなんです。それぐらい音って影響を受けるものだし、それを受け止めて変化できるユーミンさんがすごいなと思って。私もそんなふうに、いろんなものに刺激を受けて変わり続けたいなと感じました。

表現者・アオイヤマダにとって音楽とは?——「自由にしてくれるもの」

ーお話を聞いていて、いままで音楽がアオイヤマダさんにとってとても身近で大切な存在だったのだなと感じました。大きな質問になってしまうんですが、アオイヤマダさんの人生において音楽とはどういう存在ですか?

アオイヤマダ:Kアリーナ横浜での宇多田ヒカルさんのツアーで踊らせてもらったときに、宇多田さんの歌で2万人以上の人が一体となった瞬間を見たんです。漠然としたイメージの「平和」を超えて、「ここに平和が生まれた」って目の当たりにして。やっぱり音楽にはそういう力があるんだなって思いました。

私自身、音楽を聞いてるときは、心を開放できる時間でもあって。もしかしたら、そのライブでみんなが一体となれたのは、じつはみんなの心が解放されてたからかもしれない。音楽は自由にしてくれるものかなって思います。

ーダンスは基本的には「音」とともに表現されると思うのですが、表現活動において音楽はどんな存在ですか?

アオイヤマダ:私よりも主役だと思います。 だから、いつも音楽選びにはとても時間をかけているし、妥協で選ぶくらいなら、使わないです。最近は、ポエトリーって呼んでいるんですけど、自分たちで喋りながら踊ったりもします。

ー表現活動されるときは、どういったものからインスピレーションを受けているのですか?

アオイヤマダ:最近は高村月(※)と「アオイツキ」というユニットパフォーマンスをやっていて、ポエトリーダンスをしています。アオイツキの作品のテーマは、高村月との会話から生まれたりするんです。

例えば、今年は冬が来るのが遅かった、と私が言ったとき、高村月は「それは季節がヒッチハイクしてこっちに来ようとしているけどうまくいってなくて、ちょっと遅れているんだよ」って話をしてくれて。地球温暖化をはじめネガティブなワードがいっぱいの世の中だけど、心が和らいだんですよね。そんなふうに作品づくりが始まります。

※ダンサー。2019年、アオイヤマダとのユニット「アオイツキ」を結成している。

アオイヤマダ:ほかにも、こないだは銀杏をテーマにしました。 毎日散歩して見ていたイチョウの葉が、緑色からだんだん黄色になってきて、気づいたら地面にいた。みんな上にずっといたのに、気づいたら下から私たちのことを見ている。

このことが物語になっていって、高村が脚本を書き、それをもとに私が音楽をつくりました。そんなふうにいろんなところからストーリーができていくんです。インスピレーションは意外と身近なものだから拾っています。

コンプレックスと自分らしさ。音楽を聴きながら散歩して、見えてきた豊かさ

ーアオイヤマダさんは独創的な世界観を持って、自分らしく生きてらっしゃる印象があるのですが、コンプレックスを感じていた時期もあったそうですね。どうやってコンプレックスを自分らしさに変えていったのですか?

アオイヤマダ:いまでも、自分らしさって何かと考えると本当にわかんなくなるんです。過去には自分らしさについてインタビューで聞かれてわからなすぎて号泣したこともあります。それくらいたぶん難しいことで。

でもいまたどり着いている場所にいられるのは、自分一人から自分は生まれないということに気づいたからだと思います。赤ちゃんもそうだけど、周りの人にいろいろ教えられて、結果的にそれが自分っていうものを形成していくから。あんまり、「自分らしさ」を追い求めてもいけないんだっていうのが、現時点で考えていることです。

一方でいろんな人に影響を受けたいと思っているんだけど、結果的に変えられない部分、成長できない部分は、結局それが自分らしさとも言えるかもしれないですね。いままで変わらない、変われない、と思ってた部分が、自分の良さだったりするのかな。私の場合、「頑固だね」って言われることが多かったんですが、結局それが自分らしさを形成している一番根っこな部分の気もします。

ー表舞台で活動されている人を見ると遠い存在のように感じがちだけれど、そういう人でも揺らぎながら日々を過ごしていると知れるのは、素敵で大切なメッセージだと思いました。そんな瞬間がありながら人前で自己表現をしていくなかで、自分を見失うこともあると思います。そういったときはどうしているんですか?

アオイヤマダ:自分を見失うときはあります。そういうときは音楽を聴きながら散歩するんです。木とかをずっと見ていると、同じ揺れ方はしないから、「時間っていまだけだな」と思うんです。毎日毎日、景色ってちょっとずつ変わっていくし、鳥がいる位置も変わるし、そんなふうにいまだけだなって思うと、何となく胸が開くような感じがするんです。

ーなんだがまさに、ご出演されていたヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT DAYS』(※)の世界みたいです。

アオイヤマダ:そうなんです。あの作品に出させていただいて、何回か観て、「あぁそういうことか」って教えてもらったことがいっぱいあるんです。

私は英語がそんなに堪能ではないので、監督と多くの言葉を交わさなかったけど、彼は本当にこもれびとか太陽とか、ずっと見ているんです。人のこともずっと見ていて、小さな動作を見逃さなくて。そういったことを作品に取り込もうとしていました。「いまは陽の光がいいから、飛ばして次のシーンを撮ろう」とか、そういう人でした。

人生ってたぶんそんなふうにいかないことのほうが多いんだけれども、それが大事だと思うのと思わないのでは、この人生の豊さが変わってくるのかもなって、監督を見ていて思いました。

※日本では2023年に上映された映画。『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』などで知られるドイツの監督ヴィム・ヴェンダースが、役所広司を主演に迎え、東京・渋谷を舞台にトイレの清掃員の男が送る日々の小さな揺らぎを描いた。

ーそういったふうに、出演作品に影響を受けて自分自身が変わっていくのは素敵ですね。

アオイヤマダ:そういう作品と出会えたきっかけっていうのも、偶然ではあるけど、必然だと思うんです。だってこの限られた時間...…だけど、めちゃくちゃ膨大な出会いのなかで、一つの作品と巡り合うって、とてつもない確率だから。一つひとつ、意味のあるものだと思ってこれからも向き合っていきたいです。

ヘアメイク:TORI
スタイリング:宮崎典子

〈衣装〉
LOOK 1
ジャケット 74,800円、ショーツ 25,300円(ともにHOLIDAY/flagshipsalonOFFICE 03-6805-1273)、中に着たブルゾン 59,400円(BELPER info@oobelper.com)、右手中指のリング 9,350円(Ninfa Handmade)、左手人差し指のリング 23,100円、左手中指のリング 22,000円(NUUK、すべてgrapevine by k3 www.k3coltd.jp)、そのほかスタイリスト私物

LOOK 2
ドレス 46,200円、トップ 28,600円(BAUM UND PFERDGARTEN/S&T 03-4530-3241)、そのほかスタイリスト私物

商品情報
Major V
Brown
Cream
価格:22,980円(税込)
Marshallのアイコンである『Major V』から新色が展開された。前身モデル『Major IV』は最大80時間の再生が可能だったが、その水準をさらに引き上げて100時間再生を達成している。
商品情報
Willen II 
Black&Brass
Cream
価格:18,990円(税込)
Marshallポータブル・スピーカーの最新作。従来モデルよりわずかに大きなフレームを採用し、低音と全体的な音響性能を最大限に高めている。防塵・防水機能を備え、最大約17時間の音楽再生が可能。
プロフィール
アオイヤマダ

東京2020オリンピック閉会式ソロパフォーマンス、ダムタイプ『2020』パフォーマンス、Netflixドラマ『First Love初恋』やヴィム・ヴェンダース 作品『PERFECT DAYS』に俳優としての出演や、宇多田ヒカル「何色でもない花」のMVを振付。NHK『ドキュメント72時間』のナレーションなどに携わるなど、身体と声で活動を広げている。ポエトリーダンスユニット アオイツキ、生き様パフォーマンス集団『東京QQQ』としても活動中。日々、夫にお弁当を作っている。



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