映画『怪獣ヤロウ!』が1月31日から公開される。
お笑い芸人のぐんぴぃ(春とヒコーキ)が主演を務める同作の舞台は岐阜県関市。市役所の観光課に務める山田一郎は市長から「ご当地映画」の製作を命じられるが、どこにでもある「凡庸なご当地映画」に疑念を持ち、かねてからの夢だった怪獣映画を製作するために奮闘。市政を巻き込んだ大事件へと発展していくというあらすじだ。
今回の記事では、失敗ばかりの公務員である山田役を演じるぐんぴぃにインタビュー。チャンネル登録者数180万人(2025年1月時点)のYouTubeチャンネル「バキ童チャンネル」で人気のぐんぴぃは、いかにして初の映画主演という挑戦に臨んだのか。映画に出たことで起こった意外な影響や、夢を持ちつつも公務員として働く山田に対してぐんぴぃが感じるシンパシー、ぐんぴぃが持つ「夢」などについても話を聞いた。
映画初主演は「阿佐ヶ谷のバカ狭居酒屋」でオファー。「俺が関市の櫻井翔だというつもりでやってました」
─主演が決まったときの感想はいかがでしたか?
ぐんぴぃ:全然嘘だと思ってました(笑)。阿佐ヶ谷の場末にバカ狭い居酒屋で八木監督から「映画を撮ろうと思って」みたいな感じで台本を見せられて、「面白いっすね、いいんじゃないすか」って話をしたら、「これぐんぴぃにお願いしたくて」って言われました。
他の人のほうがいいんじゃないですかって一回断っちゃったんですが、何回かお声掛けいただいて、やるかあってなりました。バカ狭居酒屋で聞いた話だし、たいしたことないだろと軽い気持ちでOKしたら、座組も脇を固めるメンツもすごくて、後に引けないなと(笑)。
─初主演として、撮影はいかがでしたか?
ぐんぴぃ:「座組の雰囲気を決めるのが主演だ」と以前出演したドラマで主演だった櫻井翔さんがおっしゃっていたんです。その時の櫻井さんはピリついた雰囲気があれば盛り上げるし、何回かミスしちゃった人は必ずフォローするし、キャストさんだけじゃなくてスタッフにも声を掛けるんですよね。現場の全部が見えてる完璧な座長仕草でした。
櫻井さんのように完璧にできるわけではないですが、俺が関市の櫻井翔だというつもりでやってましたね。
─コントや落語の経験などが映画での演技に与えた影響はありましたか?
ぐんぴぃ:主人公は普通の青年ではなく、キモオタの「子供部屋おじさん」で、親に「あんたどうしてそうなった」って言われちゃうような奴ですが、そういう奴のコントをめっちゃやってきたので、まんまで演じられたのがよかったです。
─逆に、映画撮影を通して芸人としての活動に良い影響はありましたか?
ぐんぴぃ:むしろ悪い影響もちょっとありましたね(笑)。映画の撮影ではピンマイクを付けるじゃないですか。芸人として舞台に立つ時は声を張る必要があるのに、ピンマイクの声量になっちゃって。誰かがボケてもボソッとツッコむので「俳優の声量だったよ」みたいにしばらくいじられましたね。
あと、ドラマの撮影が終わった2日後に映画の撮影が始まるようなスケジュールだったので、4か月ぐらい俳優をやっていて、ボケ方を忘れたことがありました。何をやるのもワンテンポ遅いみたいな状態になって怖かったのを覚えています。
良い影響としては、コントでの演技力がアップしたり、監督の演出からコントでも使える良い部分を見つけたりすることがありました。
─他の俳優さんの演技から受けた影響はありましたか?
ぐんぴぃ:山田の上司である武藤役の手塚とおるさんがダントツでアドリブを入れるんです。本当は全然違うセリフでも、手塚さんが言ったほうが面白かったりするんですよね。
こんなふざけたらバランス崩れない? って思うぐらいふざけるんで、それを超えなきゃと思って僕ももっとふざけるし、こんなやっていいんだって勉強になりました。
完成した本編を見て「もっとはしゃいでもよかったな」と思うくらい、手塚さんはすごいと思いましたね。
「バカだったから」こそ、芸人になれた
─ぐんぴぃさんが演じた山田への最初の第一印象はいかがでしたか?
ぐんぴぃ:キモい奴ですが、シンパシーは感じていました。僕は芸人になったのが会社員を3年やったあとの27歳の時で、みんな大体18歳から20歳くらいで芸人になるので遅かったんですよね。なので、本当は夢を持ちつつも公務員として働く山田の気持ちがよくわかりました。
もう1つシンパシーを感じている点があって、僕が実際に芸人になれたのは「芸人のことをあんまりわかってなかったから」だと思うんですよ。
いま振り返るとバカだったんですけど、芸人って全体で30人ぐらいしかいないと思ってたんです。テレビに出ている司会者と、M-1に出てる人、みたいな。実際はM-1だけで1万組いるわけじゃないですか。それを知らないのに飛び出しちゃったのはめっちゃバカだと思うんですけど、だからこそ夢を追えたなとも思うんです。
この映画でもそういう「バカ騒ぎ感」みたいなものがコミカルに描かれていると思います。ずっと公務員として働いているけれど、「怪獣映画を作る」っていう夢が叶いそうになったら周りの迷惑も気にせずガンギマリで進んでいくっていう。
ぐんぴぃ:山田はバカだから夢を追えているんだよな、逆にバカじゃないと夢なんか追えないよなっていうのを肯定してくれる役柄だと思います。
─作中でぐんぴぃさん演じる山田が夢に向かって大暴れするのは、印象的かつ魅力的でした。
ぐんぴぃ:なんなら暴れすぎてズボンが破れちゃって。パンツが見えた状態で演技していたのが一瞬映ってるので、ぐんぴぃのポロリもあるということで。
「ありのままをさらけ出すこと」をぐんぴぃはどう考える?
─SNSで話題になった「バキ童」のインタビューやYouTubeチャンネル「バキ童チャンネル」の企画でも自分の趣味やありのままの姿を見せている印象があります。自分のありのままの姿をさらけ出すことにハードルは感じていますか?
ぐんぴぃ:実際ほとんどありのままで、自分が好きなことしかやってないですね。
よくネットミーム(編注:ネットで流行した文化)をネタにするので「ネットミームばっかりやってる」とか、逆に「このミームは知らないのかよ」とかよく言われるんですが、ネットミームだからやるんじゃなくて、僕が好きだったのがたまたまネットミームで、それをネタにしているだけなんです。
ぐんぴぃ:僕も自分について話せないほうで、童貞だったことは街頭インタビューで事故的にさらけ出されました(笑)。でも、言っても意外と大丈夫なことは多くて、周りのことを気にして「どうしよう」と考えても、想像よりひどいことにはならないと、いつも思いますね。
ぐんぴぃ:この前『佐久間宣行のNOBROCK TV』の企画で僕が急に告白するドッキリをやったんですけど、「好きです」と言ったら普通に断られて終わったんです。
ドッキリ後に「僕が好きって言ったとき、ビビリませんでした?」って聞いたら「誰にでもアタックする人なのかなと思ったんで、サクッと断りましたね」って言われて、「あ、そんなもんなんだ」って気付かされました。
グラビアアイドルに急に告白するなんてハードルが高そうですが、相手はそんな重く捉えないっていう。自分をさらけだしたところで70億分の1のちっぽけで吹けば飛ぶような命ですから、何ともないよっていうことなんじゃないすかね。
「笑われる」であってもいい。ぐんぴぃが語る「夢」
─本作では「夢」が題材になっていますが、ぐんぴぃさんにはどんな夢がありますか?
ぐんぴぃ:夢はずっと「爆笑王」って言っています。神社でお賽銭を入れるときには「爆笑王になれますように、あと彼女ができますように」って2個頼んでます。たぶん2個頼んでるから、なかなか叶わないと思うんですけど(笑)。
爆笑と言っても種類があって、麒麟の川島さんだったり、ラランドのサーヤだったり、令和ロマンの髙比良くるまだったりと芯を食った面白いことを言える人がめっちゃいるんでそれも良いし、「こいつがいたらなんか笑っちゃうな」っていうタイプもありだと思っています。「笑わせる」じゃなくて「笑われる」であってもいいんです。
「バキ童チャンネル」が見る人を選ぶチャンネルなので、大人から子供まで、誰が見ても笑えるような存在になりたいですね。YouTuberにならないのはそこなんだろうなと。「別に自分の好きな人のことだけを愛せばいいじゃん」というふうにはなかなかならないというか。
─ちなみに、芸人になる以前はどんな夢を持っていましたか?
ぐんぴぃ:本に関わる仕事をしてみたかったのと、映画監督とかもやってみたかったですね。あと、ニコニコ動画の音MAD(編注:既存の音声や映像などを組み合わせて再編集した動画)を作る人にもなりたかったです。
先日ちょうど音MADを作る人のイベントに出たんですが、当時有名な音MADを作っていた人たちは12、3年たったいまテレビのカッコいい映像を作っていたり、音楽系の分野で活躍していたりして、音MADはやっぱりすごいんですよ。僕は音MADを作れなかったから芸人になっているみたいなところもあるので(笑)。
─最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。
ぐんぴぃ:皆さんこの映画を舐めてると思うので、舐めたままでいいので何とか来ていただけたら。想像より面白いと思うので。舐めてもいいけど、舐めんじゃねえぞっていう具合です。
あと、大画面で見たほうが面白いと思います。どうせいつもYouTubeのちっさな画面でぐんぴぃを無料で見てるわけですから、投げ銭だと思ってください(笑)。とにかく、そのぐらい来て欲しいって思ってます。
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