『奏劇vol.4「ミュージック・ダイアリー」』が6月20日から東京・よみうり大手町ホールで上演される。
岩代太郎が2018年に旗揚げした、音楽と演劇の融合を目指す『奏劇』の第4弾となる『ミュージック・ダイアリー』は、敵国同士で恋人になった男女が、戦争という抗えない強大な力に翻弄され離れ離れになりながら、音楽を通して「交換音楽日記/ミュージック・ダイアリー」で心を通わせ、言葉を交わし合う物語。恋人たちの愛し合う姿とピアノで紡ぐ音楽を通して、戦争の不合理さ、犠牲者への追悼、世界平和を唱える。
舞台に登場するのは、3人の俳優と2人のピアニストのみ。ピアノの名手で音楽大学で作曲を教えるミカエル・ハインズ役を、2022年の『奏劇vol.2』に引き続き、2度目の出演となる三宅健、同じ音楽大学でピアノを教えているミカエルの恋人ナザレンコ・ローラ役を馬場ふみか、2人の恋物語を語るストーリーテラー久遠泰平役を西村まさ彦が演じる。演出をダンサーの首藤康之、脚本を須貝英が担当。
チケットの一般販売は5月17日11:00からスタート。
【岩代太郎のコメント】
「戦争」は、たった一発の銃弾から始まる。「音楽」は、たった一音の響きから始まる。
人の心は全ての源であり、「殺めたい」と思うのも心であり、「奏でたい」と思うのも心である。
そんな想いを込めて、本作の企画をスタートさせた。
「音楽」は時として、人の心を惑わし、国威発揚の為にも利用されてきた。
だが私は、そんな「音楽」を創りたくもないし、奏でたくもない。そもそも「音楽」としては認めない。
世界を見渡せば、「殺戮」と「音楽」が溢れている。
人間とは無慈悲な生き物なのだろうか。人間とは慈愛に満ちた生き物なのだろうか。
その様を、「Music Diary」で体感して欲しいと願う。
【首藤康之のコメント】
長らくダンスの世界に関わらせていただいていた私にとって、音楽は絶対的で必要不可欠なものでした。
これまで音楽そのものが戯曲という概念で踊ってきたので、この「奏劇」という一見新しいスタイルの舞台は、とても身近で慣れ親しんできたものに感じました。
いつも美しく想像力を掻き立てられる岩代さんの音楽に身を委ね、素敵な出演者、スタッフと共に、丁寧にこの作品を創作していきたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。
【須貝英のコメント】
今回、山田能龍さんの原作を受け継ぐ形で脚本を担当させていただきました。
企画・原案、そして作曲の岩代太郎さんのパワーに、演出の首藤康之さんの理知的なまなざし、強力なキャスト陣、三宅健さん、馬場ふみかさん、西村まさ彦さんが加わった素晴らしい座組に参加させていただけて、大変光栄です。
現在進行形で揺らぐ世界の中で、だからこそ愛をストレートに訴える作品があるべきだと感じます。是非ご堪能ください。
【三宅健のコメント】
この作品は、音楽を通じて紡がれた二人の愛の物語であり、同時に、戦争という理不尽な運命に翻弄された人々の姿を描いた作品です。
音楽が本来持つ力とは、国境や立場を超えて人の心を繋ぎ、対話を生み、共感を呼び起こすものではないでしょうか。
しかし、争いの中ではそれさえも許されなくなる。
愛し合う二人が音楽という“日記”を通じて心を交わし続けたように、私たちも、どんな状況であれ“対話”を止めてはいけない。
この物語が、音楽の持つ力、そして平和を願うすべての人々の想いを、改めて考えるきっかけになればと願っています。
【馬場ふみかのコメント】
お話をいただいた時はとても嬉しかったのですが、朗読劇が初めてなので不安もありました。ただ新しいことに挑戦出来るということに、非常にワクワクもしていて。生の音楽とともに演じていく「奏劇」のスタイルにも大きな魅力を感じましたし、今はドキドキしながらも楽しみな気持ちでいっぱいです。
私が演じるローラは、“愛を信じる強さ”のある女性だと思っています。とはいえまだプロットの段階なので、これから台本を読み進める中でどんな新しいローラの顔が見えてくるのか。お稽古が始まるのが非常に楽しみです。
平和に対する祈り、自由の大切さなど、改めて考えさせられる作品だと思います。ぜひ劇場に足を運んでくださる皆様にも、ミカエルとローラ、ふたりの人生からなにかを感じ取っていただけたら嬉しいです。
【西村まさ彦のコメント】
お話をいただいた時はまず、「なぜ僕に?」と思いました。
朗読劇への出演経験はありますが、僕としては目の前のことに向き合うだけと言いますか、お客様に楽しんでもらえるよう、精一杯務めているだけですから。
ただ岩代太郎さんが作曲されたピアノの演奏を聴きながら、朗読することが出来る。
そこには言葉で言い表せないくらいの喜びがございますし、非常に興奮しています。
今回僕は講談師の久遠泰平を演じます。今はまだプロットの段階ですし、実際に動き出すのは台本を読んでからですね。
楽しみにしているのは、これがどういった形でお客様に届くのか。会場の空気がどのように変わっていくのか。
演じながらそういったことを少しでも味わえたらいいな、と思っています
【あらすじ】
講談師、久遠泰平(西村まさ彦)から語られるのは、涙の恋物語。
始まりは、東ヨーロッパ、2021年12月。
「ミール音楽院」という音楽大学に、優れたピアノ奏者で作曲家としても類稀なる才能を持つ、ミカエル(三宅健)という青年教授がいた。
同じ大学に隣国から通いながらピアノの教鞭を取る、ローラ(馬場ふみか)と、相思相愛であった。
クリスマスに、ローラへ愛を告げるミカエル。そして彼女を想う愛の曲を弾いて聴かせた。
その調べに聴き惚れたローラだったが、ミカエルは手を止めて、「さぁ、この続きは君が作るんだよ」ミカエルはローラに曲の続きを作って欲しいと言う。
『交換日記』ならぬ『交換音楽日記/ミュージック・ダイアリー』を交わそうと。
そして2人のミュージック・ダイアリーは、スタートした。
ところが、ミカエルの生まれた国が、翌年2月──ローラの祖国へ向けた軍事侵攻を開始し、二国間で戦争が勃発する。
市街地にも容赦ない軍事攻撃が仕掛けられ、被害者には罪なき子供もたくさん出てしまう。
世界中から批判を浴びる中、国内では「この戦争は正しい」と支持する声が上がる。
ミカエルの尊敬する教授すらも、戦争を支持する。
しかしミカエルは「戦争は芸術の対極にある愚行だ。僕は断固反対します」と、戦争に異を唱える。
だが教授からは、思想は自由だが、この国で音楽家として大成したいなら、慎重に行動すべきだ、と、叱責を受け、失望と共に途方に暮れてしまう。
敵国出身のローラは、国外退去命令が出されてしまう。
離れ離れになっても2人はSNSを通じて、ミュージック・ダイアリーを続けた。
戦争を反対し続けるミカエルは、捕えられ、軍に強制入隊させられてしまう。
激しい戦争の中、クリスマスが近づいた日、ついに両国が休戦に合意した。
たった24時間だが、クリスマス休戦と称し、それぞれの捕虜が交換、解放される運びとなった。
SNS上で二人は「私たちが初めて愛し合った聖なる日に、国境にある小さな橋で会いましょう」と落ち合う場所を伝え合い、約束した。
休戦前夜、クリスマス・イブ。
ミカエルがローラと落ち合う橋を目指している。ミカエルは物陰に身を潜めながら、ローラの面影を思い浮かべていた。
翌日の早朝、クリスマス休戦の訪れをけたたましいサイレンが告げる。
ミカエルは国境を目指した。ローラも目的地へと歩み始めていた。
そして二人の視界に、朽ちた小さな橋が現れた。
そんな橋の真ん中にも、目には見えない国境線が横切っているのだ。
ミカエルとローラは同時に、走り始めた。会える!やっと会える!不思議と涙が溢れてくる!
そして2人を待ち受けていた運命とは・・・。
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