Grooving Night―“寝る前に、グルーヴ溢れる夜を過ごそう”

SIRUP×SKY-HIインタビュー。音楽業界に新風を吹きこむ二人が示す、社会課題との向き合いかた

3月29日、春の訪れとともに大阪・オリックス劇場で開催された『Grooving Night vol.5』。アーティストSIRUPがホストを務め、「寝る前に、グルーヴあふれる夜を過ごそう」をコンセプトに開催されている本イベント。5回目となるゲストアーティストは、ラッパー、シンガーソングライター、音楽プロデューサー、そしてBE:FIRSTやMAZZELなどのアーティストが所属する音楽プロダクション会社BMSGのCEOを務めるなど、多岐にわたる活動で業界を牽引するSKY-HIだ。

SIRUPとSKY-HI、ともに現在の音楽シーンのゲームチェンジャーとして多くの課題と向き合いながらも、全力で楽しむことを忘れない姿は重なる部分も多く、二人が生み出すグルーヴに誰もが胸を踊らせていた。初共演となる二人が何を感じ、何を眼差しているのか。終演直後に行ったインタビューを、イベントレビューとともにお届けする。

インタビューの模様は『Grooving Night』のSpotifyでも配信中

SIRUP×SKY-HIインタビュー。二人が感じた「ホンマのツーマン」

ーまずは『Grooving Night』お疲れ様です! いかがでしたか?

SIRUP、SKY-HI:楽しかったでーす!(笑)。

SKY-HI:特に最後のトークセッションではパジャマっていうのもあって、何かを着飾らずにリアルなテンション感でやれたのがすげえよかった。

ー事前のインタビューでSKY-HIさんは「社会問題についても楽しんで発信している現場の空気に興味がある」と話していましたが、「楽しむこと」と「社会について考えること」の二軸がある『Grooving Night』に参加してみていかがでしたか?

SKY-HI:やっぱり、その空気があったのがよかったですね。自分のライブやフェスで同じようなセットリストでやるときはもう少し攻撃的なセットをつくって、闘いに行くみたいな自分がいるんだけど、すでにお客さんが踊ってくれる空間ができている感じがして、すごく楽しかったです。

ーSIRUPさんは、SKY-HIさんとの共演はいかがでしたか?

SIRUP:マジで普通に喋ってる感じでしたよね。やっぱりSKY-HIってすごいじゃないですか。そのSKY-HIのリアルな状態を見れたし、みんなにも見てもらえた感じがして、それは個人的に今回のイベントの目的でもあったからうれしかった。

明らかに音楽業界に新風を吹きこんでいる二人なんで、強いテンション感ではなく、楽しく「イェーイ!」ってやってるテンションの曲やトーク、セッションを見せられたのは、この業界にとってもすごくいいことだったなと思います。

SKY-HI:トークも含めて、非常に音楽的なセッションだったよね。

SIRUP:文脈をだいぶ大事にしている二人が、いまさっき文脈が構築された状態でセッションをしているのを見てもらえたのが、すごく嬉しかったな。

ー完成したものを見るだけじゃなく、構築するプロセスを目撃した感じがしました。

SKY-HI:二人で喋ってるんだけど、お客さんも置いていかないで済んだなと思っていて。二人の会話を見てもらうというより、二人を中心に、空間全体でみんなと喋ってる感じがあったのはすげえよかった。

ーお二人は「歌とラップのバランスが真逆」だとステージ上でも話していましたが、そんな二人が共演することによって、どんなグルーヴが生まれましたか。さらに新たな気づきなどがあれば、教えてください。

SKY-HI:突き詰めると二人ともやりたいことは一緒なんですけど、各々が自分にとって登るべき山を見つけていて、今日は自分が登っていない山の尊さを知れた感じがします。登っていない山の尊さを知ると、自分の登っている山の尊さも知れるんで、結果的には自己肯定感も上がりましたし、お客さんみんなの自己肯定感も上がるようなイベントだったなと思います。

SIRUP:そう言ってもらえてホストとしてすごくいい気持ちになった……。ツーマンライブって音楽性やバイブス、お客さんに投げられる部分とか、出演者に共通の文脈がないと伝わらないものがあると思っていて。いままで『Grooving Night』のゲストに来てくれたアーティストは、フィールドも含めて近い人も多かったと思うんです。ただ、聞いてくれている層やアプローチ、聞かせ方も違うSKY-HIとも共通点があるんだっていうことをイベント全体で伝えられたのは、ホンマのツーマンって感じがする。

SKY-HI:総じて一言で表すと、楽しい日でした!

社会について考えることと楽しむことの両立を考える

ー今回は『Grooving Room』と題して、視聴覚障害者鑑賞サポート、性的マイノリティ、ダウン症のある人、福祉、自然災害による被災者への支援活動団体によるブース出展も拡充されていました。お二人も実際に回ったり、体験されたと思うのですが、いかがでしたか?

SIRUP:5回目にして、今回が一番多方面にできたかな。特にこれまでは『Grooving Night』で被災地支援に関することをできていなかったので、能登地震を風化させないためのアクションができて個人的にはよかった。

ライブに行くことをライフワークとしている人たちもたくさんいると思うんだけど、そんな人たちにアプローチしていけたのかな。それに今回は、ブースを回ってもらえる仕組みづくりとしてクイズラリーがあって、ゲーム形式でみんなの楽しみかたを導いていけたのがよかったですね。

SKY-HI:全ブースが楽しそうだったのが一番よかったですね。一般的な音楽イベントって、カルチャーやバックグラウンド、思考含めて、何もかも異なった人が集まる場所だからこそ、わざわざどんな人がいるのかって考えないことが普通だと思うんです。でも、何もしないと無自覚になってしまうところを、自覚的になれるチャンスがあるというのは、人が集まる場所の存在意義としていいことだと思うし、それが押し付けがましくなく、楽しい空気でやれているのがめっちゃいいですよね。ライブを楽しむことと、社会課題について知ることが分離してたら社会と向き合うのも楽しくなくなっちゃって結果広まらないじゃないですか。それが全部グルーヴしてる感じがあってすげぇいいなって思いました。

ー出展者の方々もみんな、「知ってもらえるのは音楽の力だと思う」とお話しされていました。

SIRUP:今日のトークパートでもSKY-HIが「音楽は心の鍵を一個開ける」っていう話をしていたけど、このブース出展っていうのはすごく相性がいいなと思った。

SKY-HI:普段言わないことを言えたり、普段考えないことを考えたりするきっかけになるなと、本当に思う。それに、今回のブース出展が盛り上がっているのって、普段のSIRUPの意欲的な発信を受け取ってきた人たちからすると、すごくありがたいと思うんだよね。というのも、受け取るのと加わるのとではだいぶ差があると思っていて。受け取ったメッセージに賛同している人たちからすると、実際に加われる場所が用意されているのってすごくうれしいことだと思う。誰かのためにやっているというよりは、自分たちの楽しみとリンクしている感じがした。お客さんがそういうことを考えたり、取り組んだりすることを能動的に感じているって、現時点だとなくてはならないことな気がする。それが音楽イベントでできているのはうれしいですよね。

ー今日のイベントでも、このインタビューでも、「楽しむ」という言葉がキーワードとして出てきました。同時に、現状の社会課題や情勢に目を向けることと、楽しむことのバランスがまだまだ難しいとも感じていて。楽しむことが何かに加担している可能性もあるし、かといってそんなことを気にせず楽しむことも正しいと思えない。社会に目を向けることと、楽しむことのバランスをどのように考えていますか?

SKY-HI:前提として楽しむべきでもあるし、社会について考え続けるべきでもある。そのなかで、「何かに加担していたかもしれない」「ルールや自分の考え方が少し古かったかもしれない」と気づいたときにちゃんと直していくマインドが大事な気がする。

「絶対に他者に害がない」「自分が絶対に良いと思うこと以外はしない」みたいに、「そうじゃないといけない」と決めることってすごく危ない。社会課題も、善悪も、インターネットの浸透以降、見える視野が広がったのもあって、変化するスピードがすごく早いと思うんです。だからこそ、都度都度、考えていかないといけない。

SIRUP:「人間だもの」と思っていて。個人的にはここ数年そのことについて曲やアルバムをつくっているんです。アップデートといっても、いきなり0から10にすることは難しくて、だけど「今回はこうしました」っていうのをやれる人がやり続けていくことが大事なんじゃないかな。

まず自分も一人の人間だということを忘れないことが大事。つねに学び続けることは大切だし、正しいかたちだけど、学び続けるにはエネルギーがいる。だから一番大事なのは、答えを出すことよりも話し合いをすることだと思うんです。今日みたいなテンションで話して共感しあったり、「一旦休んでいいよ」と言い合えたり、そういう環境をもっとつくっていかないといけないなと思っています。

SKY-HI:変わらずにいるためには、変わり続けないといけないと思うんです。音楽を始めたときのような、一人ひとりが抱えているピュアな衝動性を大事にするためには、その都度アップデートする必要がある。

それを怠らないのはなぜかと言うと、音楽や人に対しての純粋性を失いたくないから。昨日より今日を、今日より明日を良くするのって良いことだと思うし、白黒つけられないことばかりだけど、白に近いグレーに近づけていきたいと思っているんです。

人間はどうしても矛盾をはらむし、アーティストだって環境について声をあげていても、ライブやフェスをするとなったら電気は大量に使うし功罪は生まれる。だからといって、楽しむことを阻害したり束縛したりするのではなく、楽しい毎日をつくりながらも今日より明日を良くする、悪いことをしたら反省して考え直すという許容を、社会も自分自身も持つことが必要だと思います。

ー確固たるブレないものがかっこいいと言われてきた時代から、変容することの重要さが少しずつ語られ始めてきたのもあって、二人からそのお話をしてもらえるのはすごくうれしいです。

SKY-HI:僕、自信を持って言えることがあって、本当に譲れないものって一個でいいと思ってるんです。その軸足がしっかりしていればしているほど、フレキシブルにもう一本の足を持てるから、両立できると思っています。根っこがしっかりしてる枝ほどぐにゃぐにゃ曲がって折れないので。

SIRUP:自分のブレない軸がわからない人もいると思うけど、それを見つける作業のなかで大事なのが、いろんなことをすること。もちろん誰かに対して加害になるようなことは絶対やってはいけないけど、自分が普段選ばなそうなこと、やらなそうなことをやることで、自分が何にワクワクするのかを知ることができるんです。

例えば寝る前に5分だけ画用紙に絵を描くというルーティンを入れてみることで、今日どんな気分だったのかがわかるし、それがたまっていくことで、変化や成長する自分も見れる。何かをやることで反射して自分が見えていくので、実践してみてほしいです。

SKY-HI:やってみることで、やりたくないこともわかるしね。やりたくないこと100個やったら、「残ったこれがやりたい気がするぞ!」ってなるかもしれないし。足を伸ばすのは豊かなことだと思う。経験がないことに挑戦するのが億劫なのもわかるんだけど、その先にある喜びを知っている身としては、一歩ずつでいいから踏み入れる心を持ってほしいなと思う。その気持ちへの応援を、音楽は担えると思っています。

見逃し配信リンク(Hulu) 見逃し配信リンク(U-NEXT)

より包括的に、進化を続ける音楽イベント

つねにアップデートを続ける『Grooving Night』。視聴覚障害鑑賞サポート、LGBTQ+支援に取り組む音楽イベントとして、放送文化基金に新設された助成金対象イベント(※)にこのほど選出された。それによって、聴覚障害がある人を対象に導入された、パフォーマンス中に楽曲の歌詞やMC、音の波形がリアルタイムで映し出されるメガネ型ディスプレイを改良。かけたときに耳や頭が痛くならないようフィット感を軽減し、見た目をおしゃれなサングラスタイプに変更。さらに、HuluとU-NEXTで初めてライブを生配信し、画面にはリアルタイム字幕を表示して疑似体験の場も設けた。また、『Grooving Room』と名付けた出展ブースエリアの拡充も行った。

※放送文化基金の助成は、公益財団法人放送文化基金が、放送文化の発展向上に寄与することを目的として、放送に関連する調査・研究、事業に対する助成を行っている。『Grooving Night』は、2024年度に新設された「イベント事業部門」に選出された。すべての人々が安心して楽しめる音楽イベントとして、視聴覚障害鑑賞サポートとLGBTQ+の支援に取り組んでいることが評価された。

『Grooving Room』にはもちろん、第3回目から参加している、性的マイノリティとその家族やアライの尊厳を守る「虹色ダイバーシティ」も参加。それに加えて新たに加わったのは、ダウン症のある方々と共創するカフェ&ブランド「HIKARU COFFEE」によるコーヒー販売、災害支援を通して得た教訓を全国に伝える「ソナエル食堂」による能登半島地震の被災者に応援の想いを送るメッセージボードの設置、福祉をたずねるクリエイティブマガジン「こここ」と、東大阪の「本と音楽のお店、ときどきゼミ」をコンセプトにしたショップ「とか」がコラボしたセレクトショップ「ここことか」による福祉施設でつくられたユニークな商品の販売、2018年に発足したダウン症のある方々の理解や支援につながる啓発を目的としたチャリティーウォークイベント「Buddy Walk KANSAI」による活動報告展示とチャリティグッズ販売。各ブースで購入されたグッズの売上は、団体の運営金や福祉施設の支援につながっていく。

これまでの活動がこうして評価され、より包括的な社会課題支援に取り組めるようになったことは、『Grooving Night』、そしてSIRUPが目指す「誰も取り残さない」音楽体験へと確実につながっていく。

今回、SIRUPたっての希望であったという能登半島地震支援は、長年、音楽ライブでの震災支援に密着取材を続けてきた『Grooving Night』ディレクター、吉田陽の取材先から協力を得た。障害者福祉プロダクトの販売は、プロデューサーの門上由佳がゲスト講師として授業をした近畿大学の准教授の取り組みだという。「音楽・社会・人」をつなげる——『Grooving Night』のその強い信念は、SIRUPらアーティストはもちろん、スタッフの熱い思いも脈打っている。

また、今回は各ブースを回ってもらえるようクイズラリーも実施され、客席に座るまでブースで楽しみながら学ぶ仕組みづくりも行われていた。音楽を楽しみにこのイベントに向かうことで、自然と自分自身、他者、社会へと意識が向けられる。これが『Grooving Night』が目指す、新たな音楽イベントのありかただろう。

会場全員の思いを動員するSKY-HIのグルーヴ

事前インタビューで語られた「ラップと歌のバランスが真逆」のSIRUPとSKY-HIが、その夜、どのようなグルーヴを生み出したのか。先行はラップを主軸にあらゆるジャンルを横断するSKY-HI。SIRUPによる「ずっと呼びたかったアーティストSKY-HI!」のアナウンスとともに登場すると、自身のこれまでの人生を辿り、今現在のアティチュードを“タイトル未定”と“To The First”で魅せた。

楽曲を通してセルフイントロデュースを行ったSKY-HIは「遊びましょう」の一言に続けて“ID”、“何様”を披露。会場全体が手拍子でSKY-HIの生み出す力強く重みのあるグルーヴに応えていく。

続けて披露された“It’s OK”では、<It’s OK 嫌いたきゃ嫌いなよ 皆様ありがとう>と歌ったSKY-HI。このリリックはSKY-HI自身がこれまであらゆる規範と闘ってきたからこそ投げられる言葉ではあるが、同時に私たち自身もありのままの、そして追い求めたい姿を追い求めてもいい、まさに「It’s OK」と感じさせてくれる力が宿っていた。

これまでのパワフルなグルーヴを“Stray Cat”のアコースティックヴァージョンで一変させ、“Bitter Dream”、“Tokyo Night Dreaming”を披露。ステージ上で踊るSKY-HIの姿からは、彼自身が音楽を、ライブを楽しんでいることがよくわかる。そのグルーヴが人を踊らせ、楽しませるのだ。

“Dramatic”で会場をダンスホールへと進化させ、“Double Down”のコールアンドレスポンスで会場のボルテージを上げていく。そしてラストを飾るのは踊り、遊び、歌うことの喜びを叫ぶ“D.U.N.K.”だ。どんなアイデンティティ、バックグラウンドがあろうとも、SKY-HIが会場全員の心を動員し楽しむこと、楽しませることの覚悟が響き渡った。

SIRUPによる、苦しみから解き放たれた多幸感溢れる時間

続くSIRUPは、バンドによる壮大なイントロとともに登場し“Need You Bad”、昨年末韓国のR&B界を牽引するZion.Tとのコラボが話題になった“CHEESE CAKE”、そして“MAIGO”を立て続けに披露し、SKY-HIのパフォーマンスに共鳴するかのように多幸感溢れるライブを演出。

「ここからメロウなお時間です」と告げると“GAME OVER”、“LOOP”、“Ready For You”を披露。SIRUPの甘い歌声が会場を包むと、私たちの身体は無重力の空に沈んでいく。

そしてここからは日頃のストレスや圧力から解放され、楽しむことに全力で進んでいく時間。“No Stress”を披露すると、会場にいる人々は再び席を立ち、両手をあげて自らを解放していく。SIRUPはみんなの苦しみを、この時間だけは吹き飛ばしてくれるかのように笑顔で歌いあげた。

続く“GO!!”で一人ひとりが楽しもうとする一歩を応援したのち、ラストを飾るのは“Do Well”。自由に踊り、自由に楽しみ、自由に自分であることを肯定するSIRUPのパフォーマンスのおかげで、私たちは今日からもまた、自由に生きていくことを志すのだ。

変わりゆく社会、価値観のなかで、対話を続け生きていく二人

SIRUPとSKY-HIによるトークセッションでは、恒例のパジャマ姿で会場を沸かすと、さっきまでの勢いのある力強い二人から一転、リラックスしたプライベートな表情を見せ、私たちもついリラックスしてしまう。

今回はトークテーマを事前に来場者や配信視聴者から募り、より「みんなで話す」ことが強調されていた。支援員をしている「両利きサウスポー」さんからの「生きがいや幸せについて話を聞きたい」というテーマに対して、「『幸せですか?』と聞かれたときに『幸せです』って答えづらいのもわかる。だけど、支援員もアーティストも同じで、お互い健康で幸せでいないといい関係性は築けない。だから僕はメンタルヘルスについて意識的に取り組むようにしている」とSIRUPは話した。それに共感するかたちでSKY-HIも「まず『幸せである』と言い切ってしまって、『なぜなら』の理由を探したらきっと出てくると思う」と具体的なアクションにつながるアイデアを共有してくれた。

小学校教員をしている「ao」さんからの「個を活かすために大切にしていることは何ですか? 多様性を尊重する部分と規律を守るバランスが難しい」という問いに対して、SIRUPは「勘違いされやすいけど、多様性って何でもありってことではない。誰かを差別、排除しないという倫理観が規律としてあるべきで、これまで『普通』とされてきた枠組みのなかに入っていなかった人たちを包括することが多様性」と前提を話すと、「才能を殺さないために。」をスローガンに掲げる音楽プロダクション「BMSG」のCEOを務めるSKY-HIは「個性は必ずみんな持っている。いろんな個性があるなかで、規律は規律と縛るのではなくて、何のために規律があるのかを一緒にちゃんと考えて、大人側が相手の立場に立って話すことができれば、一人ひとりの個性が守られたまま一定の秩序が生まれるはず」と語った。続けて「ルール、マナー、法律って先人たちの経験と知見から生まれている。だからこそ深みもあれば時代にそぐわないものもあって、今後も変わっていく」と、現状の規律とされているものも絶対ではないことを強調した。

二人は一貫して、答えを提示するのではなく、答えの出ない問いを話し合い続けることの重要性を見せてくれた。難しくて考えることを放棄したくなることばかりの世の中だが、そのなかでもこうして問いを立てみんなと一緒に考え、対話することを諦めないアーティストの姿が見られること。それが『Grooving Night』が社会にもたらす希望なのだ。

最後に二人はSIRUPの弾き語りに乗せて、愛についてのオリジナルセッションを披露した。そこで歌われた<こんな世界が憎いわけじゃない 誰かの痛みの上で踊りたくないだけ そんな些細な思いを渡し合い 笑い合う夜を止めないで>という歌詞が、まさにSIRUPとSKY-HIが共通して目指す、みんなで楽しく生きたいという思いを体現していた。そんな世界を諦めたくない人によって『Grooving Night』は作られ、続いていくのだろう。

イベント情報
『Grooving Night vol.5』

会場:大阪・オリックス劇場
日時:2025年3月29日(土)17:00 開場/18:00 開演

主催:読売テレビ/キョードー関西
企画制作:読売テレビ
助成:放送文化基金
協賛:キリンビール株式会社/Billboard Live OSAKA/OSM
協力:CINRA/The ONOE FURNITURE/特定非営利活動法人日本ミュージックフェスティバル協会
特別協力:ytvサステナBloom
視聴覚障害鑑賞サポート:読売テレビ/キョードー関西、協力:一般社団法人コンサートプロモーターズ協会 関西支部会
サービス情報
『Grooving Night vol.5』SIRUP×SKY-HIライブ全編をHulu、U-NEXTでアーカイブ配信中!

【見逃し配信】4/30(水)23:59まで
【配信チケット】3,850円(税込)

【配信チケット販売期間】4/30(水)21:00まで
【販売ページ】
Hulu: https://www.hulu.jp/store/grooving-night-vol5
U-NEXT:https://t.unext.jp/r/groovingnight

読売テレビ「音道楽√」で『Grooving Night vol.5』独占密着取材を放送!
4/18(金)深夜1:00放送(関西圏、TVer見逃し配信あり)
プロフィール
SIRUP

ラップと歌を自由に行き来するボーカルスタイルと、自身のルーツであるネオソウルやR&BにゴスペルとHIPHOPを融合した、ジャンルにとらわれず洗練されたサウンドで、誰もがFEEL GOODとなれる音楽を発信している。 2021年には2nd フルアルバム「cure」をリリースし、同年「FUJI ROCK FESTIVALʼ21」に、国内のR&Bアーティストでは異例となる初出演でメインステージ GREENSTAGEに立ち、圧巻のパフォーマンスを魅せた。 これまでにイギリス・韓国・オーストラリア・台湾などのアーティストとのコラボ曲をリリースしている他、アイリッシュ・ウイスキー「JAMESON」、オーディオブランド「BOSE」、自動車メーカー「MINI」とのタイアップ、2022年には自身初となる日本武道館公演を開催するなど、日本を代表するR&Bシンガーとして音楽のみならず様々な分野でその活躍を広げている。

SKY-HI

圧倒的なRAPスキルのみならず、卓越したボーカル&ダンス&トラックメイキングスキルでエンターテインメント性溢れるコンテンツをセルフプロデュースで創り上げ、常に世に提示し続ける。2020年には、マネジメントレーベル「BMSG」を立ち上げ代表取締役CEOに就任。ボーイズグループBE:FIRSTやMAZZELをプロデュース。アーティスト・プロデューサー・経営者と多岐に渡り才能を発揮している。



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