IMALUとめぐる「エルマーのぼうけん」展。オーディオテクニカのサポートによる「音を感じる展覧会」で魅力を再発見

道具や食料をリュックいっぱいに詰め込んで、船に乗って冒険の旅に出るーー。こんなワンシーンを懐かしく思う人は多いのではないだろうか。9歳の男の子エルマーが、どうぶつ島に囚われているりゅうの子どもボリスを助ける物語『エルマーのぼうけん』。国内でシリーズ累計発行部数が700万部を超すベストセラーとして親しまれる本作の展覧会が、現在東京・立川の「PLAY! MUSEUM」で開催されている。

展覧会では、約130点の貴重な原画などが初公開されている。その魅力の一つは、物語の世界が「音」によって表現されていることだ。音響の部分には、日本の音響機器メーカーのオーディオテクニカが協力。来場者はジャングルの音を感じながら原画を鑑賞したり、ワニの背中をジャンプして川を渡るシーンを体験したり……まさにエルマーになったような気分で冒険の世界を堪能できる。

今回はそんな臨場感あふれる「エルマーのぼうけん」展を、PLAY! MUSEUMプロデューサー・草刈大介が案内人となり、IMALUが体験。ピンチが訪れても、機転をきかせ、誰とも対立せずにさまざまな困難を乗り越えていくエルマーの物語にいまあらためて触れてみると、きっと新しい発見があるはずだ。

IMALUと『エルマーのぼうけん』、絵本との関わりは?

『エルマーのぼうけん』シリーズとして、1948年から1951年にかけて出版された『エルマーのぼうけん』『エルマーとりゅう』『エルマーと16ぴきのりゅう』3作の世界観を楽しめる本展。

今回展示を一緒にめぐるのは、「大人になって、改めて絵本の重要性に気付き、興味を持つようになった」というIMALU。子どもの頃はどのような絵本が好きだったのだろうか?

IMALU:私が何度も読みかえすほど好きだった絵本は、『ぐりとぐら』(なかがわ りえこ 作 / おおむら ゆりこ 絵)や『かいじゅうたちのいるところ』( モーリス・センダック作 / じんぐう てるお 訳)。それに、『がいこつさん』(五味太郎 作)のお話もかわいくてお気に入りでした。

『エルマーのぼうけん』も、子どもの頃に読みましたね。子どもから大人まで楽しめる物語って、人によっていろいろな感じ方ができて、身近に感じられるけれど奥行きがあるんですよね。だから長く愛され続けるんだろうなと思います。

今回の展覧会で目玉として展示されているのが、物語をつくり出した作家ルース・S・ガネット(1923~)の義理の母、ルース・C・ガネット(1896~1979)によって描かれた、息を飲むほどに美しい約130点の原画だ。

鉛筆で丁寧に細かく描かれた挿絵や、色彩豊かで想像が膨らむ表紙や地図の原画の数々は、70年前に描かれた作品だとは思えないほど生き生きとした魅力を放つ。そんなシリーズ3作に使われている挿絵の原画がほぼすべて揃った、貴重な展覧会となっている。

IMALU:『エルマーのぼうけん』は、たしか国語の教科書だったかな、そこにも載っていた記憶があって。作品自体はかなり昔に読んだので、正直に言うとストーリーはあまり覚えていないけれど、絵がすごく印象的で、いま見ても好きだなって思うんですよね。今回は気になる原画をじっくり見ながら、新しい魅力を発見したいです。

原画とともに物語を体感。IMALUと楽しむ「音を感じる展覧会」

『エルマーのぼうけん』『エルマーとりゅう』『エルマーと16ぴきのりゅう』のストーリーに沿って構成されている本展。ここからは、PLAY! MUSEUMプロデューサー・草刈大介が合流し、会場をめぐりながら見どころを紹介する。

最初に足を踏み入れたのは、シリーズ1作目の『エルマーのぼうけん』の世界。エルマーが船に乗り込むときの桟橋を彷彿とさせる足場を歩いていると、等身大の動物たちが次々と登場する。壁には物語をたどるように原画が展示され、のらねことの出会いやどうぶつ島でジャングルの茂みの中を歩く様子、次々と出会う動物たちとのエピソードが思い出されていく。

まずはIMALUが気になるという原画からチェックした。

草刈大介(以下、草刈):日本では、『エルマーのぼうけん』は1963年に渡辺茂男さんによって翻訳され福音館書店から出版されました。

以来、幅広い世代から愛され続けていますが、じつは日本での展覧会は今回が初めて。アメリカ・ミネソタ大学図書館のカーラン・コレクションに全面協力していただき、作品に使われている原画のほとんどが展示できることになりました。

IMALU:原画ってこんなに小さいんですね! それに、ほとんどがモノクロで描かれています。カラーのイメージが強かったので驚きました。

草刈:想像を膨らませて読むから、モノクロの絵でも頭の中では鮮やかに映るのかもしれませんね。鉛筆で描かれているからか、どこかぬくもりも感じられます。それに、よく見ると、ハイライトの部分はあえて白く塗られていて、印刷の仕上がりを考えながら描かれていたことがわかり、作者のこだわりも垣間見えるはずです。

IMALU:本当ですね。パネルは原画を等身大まで大きくしていますが、細かく繊細に描かれているから全然違和感がないです。動物たちの表現も、リアルなのにキャラクターとしてデフォルメされているから、すごく魅力的に感じる。この絵が描かれたのはインターネットもない時代なのに、ジャングルに住む動物たちをどうやって観察して描いたのかも気になります。

「音」はどうやって生み出された?

展覧会では、絵本の世界に没入できる体験型の展覧会として、音や光、映像、立体造作によって演出され、わくわくする冒険の旅を楽しむことができる点も見どころだ。

薄暗い中を歩いていると、ざわめくジャングルの草木の音とともに、どこかから動物の唸るような声が聴こえてくる。島に侵入したエルマーを警戒するような声だ。主人公のエルマーも、冒険をしながら「次はどんな動物が出てくるんだろう」と、ドキドキしながらりゅうを探していたのだろう。

そんな臨場感あふれる音響効果の制作には、「音を通して心豊かな人生を」という理念を掲げるオーディオテクニカが協力。

同社は昨年も、同施設内の子ども用屋内広場PLAY! PARKで「音」を活用した創作遊具やワークショップを体験できるイベントを実施しており、親子で音のおもしろさに触れられる機会を創出してきた。今回の展覧会では、本を読むときにイメージで聞こえてくる音を体験できる新しい展覧会にしたいという想いがあり、美術館PLAY! MUSEUMでも、オーディオテクニカとのコラボレーションが実現したのだという。

IMALU:子どもの頃、『エルマーのぼうけん』を読みながら、ジャングルってこういう感じかな? と想像していたけれど、それが音でも再現されているというか。リアルに体感できるのが面白いです。

草刈: 音響には、映像などに効果音を足して臨場感や緊張感などを演出する、サウンドデザイナーの染谷和孝さんが参加し、展示空間の演出をしているんです。よかったらエルマーが持ってきた棒つきキャンデーに釣られてできた、ワニの背中の飛び石を渡ってみてください。

IMALU:わ! ワニの背中って意外と柔らかい。あと、どこかから鳴き声が聴こえてくるような……。

草刈:そうなんです。これはワニの唸り声なんですが、染谷さんのアイデアでそれぞれ違う音声を収録しています。顔は見えないけれど、ワニたちの性格の違いが楽しめるはずです。

シリーズ2作目『エルマーとりゅう』で、ボリスとエルマーが嵐の中で空を飛ぶシーンを通り抜けると、シリーズ3作目の『エルマーと16ぴきのりゅう』の舞台、「そらいろこうげん」のエリアに出る。

じつは、このエリアで聞こえる「風の音」の制作には、マイクにスプレーのノズルを近づけて空気を噴射する手法が一部に使われているという。

実際に音を聞いたIMALUも「想像がつかなかった」と言う驚きの制作方法だ。

クライマックスシーンの演出にはアナログレコードの響きを活用。再発見した物語の魅力とは?

原作がつくられた1950年代前後のアメリカでは、印刷技術も大きく進化していた。特に2作目、3作目が制作された頃は、カラースキャナが登場したことで、分版することなく印刷することができるようになり、実際に展示されている原画もカラーのものが増えていることが見て取れる。

IMALU:原画に色が増えていくのは見ていて楽しめるし、時代背景を掘り下げるとより作者がどんなことを考えながら描いていたか想像できて、より世界観にのめり込めます。見れば見るほど発見がある展示で、何時間でもいたくなりますね!

そして一行は、『エルマーと16ぴきのりゅう』のクライマックスをイメージした展示空間へ。洞窟の中に捕らわれていた15匹のりゅうをエルマーが助けるシーンだ。

ここでは、1950年代のフリージャズのアナログレコードを用いて物語が描かれた時代背景を表現しているというから驚きだ。

IMALU:りゅうの家族がたくさん! 等身大のカラフルなりゅうたちがいっぱいいるのにはテンションが上がります。

草刈:洞穴の暗がりの中、エルマーが懐中電灯を照らして、りゅうの家族を見つけていくシーンがあるのですが、ここでは設置されているパッドのボタンを押すことで、エルマーになりきってりゅうの家族を探していくことができます。

そして15匹みんなを見つけることができたら、捕らえていた人間たちを脅かせるラッパや笛の音が鳴り、その隙に一斉にりゅうたちが逃げ出すんです。

草刈:そのときの大騒ぎの様子や解放されたりゅうたちの喜びを表現するため、オーディオテクニカにアナログのレコードプレーヤーをお借りして、絵本と同時代である1950年代のフリージャズを流しているんです。 

IMALU:デジタルとは違う、やわらかな音の響きが素敵ですね。

『エルマーのぼうけん』が生まれた当時のアメリカのカルチャーが感じられ、大人も「おっ」となるはず。それにアナログレコードに触れる機会が少ない子どもたちにとっても、いい機会になると思います。体験していて楽しいし、あたたかい気持ちになれました。

最後に、エルマーが親友になったりゅうの子ボリスとお別れするシーンへ。足元に投影された鉄道の線路の映像とともに、冒険の世界から現実の世界へと戻っていく。

展覧会を見て、IMALUは何を感じたのか。

IMALU:音を感じる展覧会と聞いたときは、最新技術を使っていたり、アトラクションのように激しい演出があったりするのかなと思っていました。でも、実際に体験してみると、子どもの頃『エルマーのぼうけん』を読んでイメージしていた世界をそのまま再現してくれるような、物語の世界観にのめり込める音響効果だなと感じました。

没入するにつれて、自分と異なる他者を受け入れて、争わずに知恵を使ってりゅうを助けようとするエルマーに、自然と共感している自分がいました。物語を改めて読み返してから行けば、よりいっそう楽しめる展覧会だと思います。

メインの展示以外にも、エルマーシリーズの作者ルース・S・ガネットが所有するダミー本や絵を描くために作られたりゅうのぬいぐるみなど、貴重な資料も見ることができる。さらに各界で活躍する100人が推薦した、古今東西の「ぼうけん」の本が大集合する「ぼうけん図書館」も設置。

ミュージアムショップでは、『エルマーのぼうけん』の世界からそのまま飛び出してきたような棒つきキャンデーやぬいぐるみ、ウォータードームなどを手に入れることができる。

大人も子どもも楽しめる展覧会は、2023年10月1日(日)まで開催中。いまこそ冒険の世界に飛び込もう。

イベント情報
「エルマーのぼうけん」展

開催期間:2023年7月15日(土)〜10月1日(日)
場所:PLAY! MUSEUM(東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3棟)
パートナー企業情報
オーディオテクニカ

1962年フォノカートリッジの製造・販売で創業した日本の音響機器メーカー。 振動を電気信号に変えるトランスデューサー(変換器)メーカーとして、 ヘッドホンやマイクロホン、ターンテーブル(レコードプレーヤー)など様々な音響機器を開発。 音質にこだわった高品質な製品は、世界中のオーディオ愛好家やプロの現場で活躍するエンジニア・アーティストに愛され、音楽イベントやスポーツイベント、 ビジネスシーンのコミュニケーションを支えている。
プロフィール
IMALU
IMALU

タレント。1989年東京生まれ。語学を学ぶためカナダの高校へ留学。帰国後、ファッション誌でモデルデビューし、現在はタレントとして活動中。2021年より身体や性の悩み、対人関係や恋愛、社会課題について語るPodcast番組「ハダカベヤ」を配信中。現在、東京と奄美大島で二拠点生活をしている。

草刈大介
草刈大介

朝日新聞社勤務を経て、2015年に展覧会を企画し、書籍を出版する株式会社「ブルーシープ」を設立して代表に。PLAY! MUSEUMのプロデューサーとして展覧会、書籍のプロデュース、美術館や施設の企画・運営などをてがける。

染谷和孝
染谷和孝

株式会社ソナ制作技術部、サウンドデザイナー/リレコーディングミキサー。1963年東京生まれ。東京工学院専門学校卒業後、(株)ビクター青山スタジオ、(株)IMAGICA、(株)イメージスタジオ109、ソニーPCL株式会社を経て、2007年に(株)ダイマジックの7.1ch対応スタジオ、2014年には(株)ビー・ブルーのDolby Atmos対応スタジオの設立に参加。2020年に株式会社ソナ制作技術部に所属を移し、サウンドデザイナー/リレコーディングミキサーとして活動中。2006年よりAES(オーディオ・エンジニアリング・ソサエティー)「Audio for Games部門」のバイスチェアーを務める。また、2019年9月よりAES日本支部 広報理事を担当。



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