相鉄線が人と人、街と街をつなげる回遊型音楽フェスを開催

音楽と電車。その親和性はどこにあるのか?

音楽と電車は相性がいい。電車をモチーフにした有名曲も多々ある。たとえば、京急線のテーマソングである、くるりの“赤い電車”。あるいは、「小田急線」が歌詞に出てくる銀杏BOYZの“東京”のように、特定の電車の存在が歌の叙情性を見事に引き立てる場合もあるし、THE BLUE HEARTS“TRAIN-TRAIN”のように、歌詞のメッセージ性と電車が見事に合致している名曲もある。この親和性の高さの正体は一体なんだろうか? と考えてみれば、そこにはきっと、その両方が「何かを伝播させるもの」であるという共通点があるのではないだろうか。

駅と駅、街と街を繋ぎながら地道に、様々な人々を伝播させてゆく電車は、それが神に捧げられる祈りであろうと、隣にいる人への「愛している」であろうと、人の営みのなかにある喜びも困難も受け止めながら他者へ想いを伝播する「音楽」という表現形態に近いものがあるのだろう。

京急線でも東横線でもない。相鉄線が行う「沿線おこし」

神奈川県に、相鉄線という鉄道路線がある。横浜駅と海老名駅を結ぶこの路線は、たとえば、ペリー来航でも有名な浦賀と品川を結び、そこから羽田空港へも繋がる、いわば「海」と「空」を繋ぐ開かれた存在感を持つ京急線や、渋谷と横浜という大都市を繋ぎ、元町・中華街へも直通する洗練された存在感のある東横線~みなとみらい線とは違い、神奈川の内陸部から横浜へ出るための、周辺の土地に暮らす人たちの生活に寄り添った路線。この相鉄線が近年、音楽とコラボレーションをすることで、「街おこし」ならぬ「沿線おこし」を行っている。それが、『相鉄ロックオンミュージック』である。

『相鉄ロックオンミュージック』は、「人と人、街と街が音楽でつながる。」をテーマに、2013年より相鉄線沿線で開催されている音楽イベント。2013~2014年の2回は、約1か月間、毎週末を使って行われるコンテスト形式での開催となっていたが、2015年からは、2日間にわたるフェス形式での開催となっている。今年も、11月12日~13日の2日間、相鉄線の各駅周辺がフェス会場へと変化する予定だ。

『相鉄ロックオンミュージック』から考える、地域活性化のために必要なこととは?

『相鉄ロックオンミュージック』の面白さを挙げると、第一に、出演者が「一般公募」であるという点。そしてもうひとつ、鉄道会社主催ならではの「回遊型フェス」である、という点がある。年齢も性別も国籍もジャンルもキャリアも関係なく、一般公募により選ばれたアーティストが、相鉄線の複数の会場を回遊しながら演奏する『相鉄ロックオンミュージック』。出演者は、決してプロのミュージシャンばかりではないし、相鉄線沿線を拠点にしている参加者ばかりではない。

しかし、だからこそ、『相鉄ロックオンミュージック』は相鉄線沿線の音楽カルチャーの未来を生み出す可能性に満ちている。きっと、この2日間に将来への可能性を求めて参加するアマチュアミュージシャンもいるだろう。彼らは未来に何かを成し得たとき、たとえ生まれ故郷ではなくても、相鉄線を自分たちのルーツのひとつと捉えるかもしれない。それに、たとえこの2日間しか存在しなかったアーティストの演奏だったとしても、それを目撃した地元の人たちが新たに音楽を始めるきっかけになるかもしれない。『相鉄ロックオンミュージック』は、地域を外部から「閉ざす」のではなく「開く」ことで、相鉄線沿線の未来を切り開こうとする。きっと、これこそが本当の「ローカリズム(地域性)」であり、「地元を活性化させる」ということなのだ。

ちなみに、どんなアーティストたちが出演するのかを事前に知りたい方は、8秒動画ブログ「Octo」に、全アーティストの「8秒動画」が順次投稿されていくので、そちらをチェックしてほしい。たかが8秒、されど8秒。本当にいろんな人たちがいて面白いし、いろんな想いが、8秒のなかから滲んでくる。

8秒動画ブログ「Octo」)
8秒動画ブログ「Octo」(Octoで動画を見る

『相鉄ロックオンミュージック』が提示する「開かれた地域性」は、沿線に何をもたらすのか?

そして、今年の『相鉄ロックオンミュージック』には横浜を代表するレゲエグループ・FIRE BALLがオフィシャルサポーターとして参加する。彼らが『相鉄ロックオンミュージック』に寄せたコメントのなかで、とても印象的な部分があったので、本当に一部分だけなのだが抜粋する。

来年で結成20周年なのですが、自分たちが本当にアンダーグラウンドから活動を続けて来た結果こうしたオフィシャルな場にも呼ばれるようになれてうれしいです。

FIRE BALLは、その母体となるレゲエクルー「MIGHTY CROWN」として『横浜レゲエ祭』を主催するなど、横浜という地元に根差した活動をしてきた歴史がある。「FIRE BALL=横浜」というイメージを持つ人も多いと思うが、彼らは決して始めから「オフィシャル」な存在ではなかった。少なくとも、彼ら自身はそうは思っていなかったし、「アンダーグラウンド」という言葉を使うくらい、むしろ自分たちを地元から「弾かれた」存在だと思っていたのかもしれない。

しかしながら、今、FIRE BALLは誰もが認める横浜代表アーティストだ。それは、横浜という街が、海外との交流のなかで自らのローカリズムを作り上げたように、FIRE BALLが何より地元を愛しながら、同時に、世界へと飛び立つ開かれた感性と、世界から認められる確固とした実力を持っていたからこそ掴んだ立ち位置なのだろう。ローカリズムを成立させるのは、外部からの視点と承認――FIRE BALLは、その事実を証明する貴重なアーティストと言えるし、だからこそ、『相鉄ロックオンミュージック』のオフィシャルサポーターとして、これ以上の適任はいないだろう。

FIRE BALL
FIRE BALL(Octoで動画を見る

最初に、音楽と電車の共通点について書いたが、人も街も音楽も、その魅力は他者に伝播してこそ初めて「魅力」となり「個性」となる。相鉄線が『相鉄ロックオンミュージック』を通じて提示する「開かれたローカリズム」は、きっと近い将来、相鉄線をモチーフにした名曲も生み出すかもしれない……そんな希望も感じさせるのだ。

イベント情報
『SOTETSU LOCK ON MUSIC 2016』

2016年11月12日(土)~11月13日(日)
会場:神奈川県 さがみ野相鉄ライフ内広場(海老名市)、相鉄ライフ南まきが原前広場(旭区)、相鉄ライフいずみ野前広場(泉区)、大和駅東口駅前広場(大和市)、緑園都市相鉄ライフ内広場(泉区)、瀬谷駅北口駅前広場(瀬谷区)、湘南台駅地下通路イベント広場(藤沢市)、横浜駅西口VIVRE前広場特設ステージ(西区)



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