ライブハウス、レコードショップ、劇場、アングラ劇団などの混沌とした文化が根差す、新宿の街
歴史的に様々なアートやカルチャーを生み出してきた新宿の街を「屋根のない博物館」と捉え、音楽やアート、演劇、伝統芸能など200以上のイベントからなる文化事業「新宿フィールドミュージアム」の一環として、10月6日(土)に新宿文化センターで音楽イベント『-shin-音祭』が初開催される。
『-shin-音祭』のコンセプトは、「文化的な混沌」と「今日的な洗練」。チケットはなんと4,800円で、総勢10組以上のアクトをこの料金で観られるのは非常に良心的だ。
新宿といえば、数多くのライブハウスやレコードショップ、大小様々な劇場がひしめき合う街で、そこから数多くの伝説が生まれては、日本のアート&カルチャーを牽引してきた。例えば新宿には、新宿LOFTと、昨年惜しくも閉店してしまった新宿JAM(現在は西永福へ移転)という2つのライブハウスが存在していた。1976年にオープンした新宿LOFTは、オープンセレモニーで若き矢野顕子や鈴木慶一&ムーンライダーズらが名を連ね、以降も山下達郎、サザンオールスターズ、BOØWYといった日本を代表するアーティストを数多く輩出してきた。
一方新宿JAMは1980年にオープンすると、モッズ~ガレージカルチャーの聖地として知られるようになる。他にもスピッツやエレファントカシマシ、氣志團らが出演したが、中でもThe White Stripes(アメリカのロックデュオ / バンド)の初来日公演がここで行なわれ(2000年)、当時の動員10数人だったことは、今も語り草になっている。
また、今はなき新宿ツバキハウスでは、ロック系のクラブイベント『LONDON NITE』が1980年からスタート。主宰者の大貫憲章をはじめ、藤原ヒロシや高木完らがDJで出演していた(現在も場所を変えながら不定期で続いている)。1980年代~1990年代の新宿西口には、Vinyl JapanやRough Tradeといった輸入レコード店のほか、ブートレグショップなどもあった。
演劇の拠点としても賑わいをみせた新宿。今述べた「ロックの時代」より遡ること1950年代には、歌舞伎町に新宿コマ劇場や紀伊國屋ホールがオープンし、舞台俳優たちの登竜門となる一方、唐十郎の状況劇場や寺山修司の天井桟敷、鈴木忠志の早稲田小劇場など、数多くのアングラ劇団が誕生。1960~1970年代の新宿を中心に活動を始める。また、1965年にオープンした新宿ピットインでは、山下洋輔や渡辺貞夫、菊地雅章らのジャズミュージシャンが夜な夜な名演を繰り広げていた。
新宿の街のように、多様性溢れるカオスでエネルギッシュなアーティストが登場
そんなアート&カルチャーの坩堝である新宿で行なわれる『-shin-音祭』の開催場所となる新宿文化センターは、1979年に開館した総合文化施設で、主にオーケストラコンサート、バレエ、ミュージカルなどの公演が行われる場所だ。
出演アーティストのブッキングに関して、TOMMYこと奥冨直人(セレクトショップ「BOY」オーナー)はこのようにコメントしている。
奥冨:今回『-shin-音祭』の制作協力の話をいただいた際、まず、会場の新宿文化センターに魅力を感じました。新宿の中でも40年以上ある古くからのコンサートホールですが、僕自身一度も訪れた事がなく、普段はオーケストラホールという事もあり、僕らの周りでもイベントを打とうとする人のいない会場だと思います。
この場所で、このアーティストのライブが観られたら、という少し違和感というか、なかなか有り得ないであろうイメージを膨らませ、新宿区文化産業観光部の主催ということも意識しながらのラインナップとなりました。
着席ステージの「-真-stage」(大ホール)には、先日6年ぶりとなるソロアルバム、『Blurred』をリリースしたばかりのmabanuaも在籍するOvallをはじめ、PavementらUSオルタナティブに影響を受けつつも、トロピカルでエキゾティックなエレメンツを内包した4人組ロックバンド・ミツメ、そして、3rdアルバム『祝祭』も好評なシンガーソングライター、カネコアヤノ(バンド編成)、おとぎ話の出演が決まっている。
また、先日行われた日比谷野音での、土砂降りの中でのワンマンライブが印象的だった、日本が誇るエクスペリメンタル・ロックバンドOGRE YOU ASSHOLEの出演も発表された。このラインナップを眺めるだけでも、カオスなエネルギーがほとばしっている。ジャンルも音楽性も全く違うが、ルーツを大切にしつつも、常に新たな表現に挑戦しているという意味では、共通点も感じさせるメンツだ。
60年以上もアップデートされ続けてきた新宿の文化は、今後どう変化していくのか
スタンディングステージの「-進-stage」(小ホール)には、jan and naomi、環ROY、羊文学らが名を連ねており「-真-stage」に負けず劣らずのカオスっぷりだ。
なおエントランス特設ステージでは、Aaron Choulai × Daichi Yamamotoや中村月子、ManiManiらが出演。そのほかにもモーガン・フィッシャーによるミニライブや、ピアノ調律師のワークショップ、琵琶の楽器体験など催し物も多数開催されるという。
奥冨直人は、変わりゆく新宿の街でこのようなフェスティバルを開催することの意味を、次のように語っている。
奥冨:個人的にも、所縁ある出演陣が多く、かつファンの1人としてどのステージも楽しみです。
『東京オリンピック』を軸に、東京都のみならず全国の街の姿が目まぐるしく変化していく今。現在から未来へしっかりと刻めるような空間になりますように。
「文化的な混沌」と「今日的な洗練」が60年以上も前からアップデートされ続けてきた新宿。『-shin-音祭』が、この街の新たな「アート&カルチャー震源地」となるか、今から楽しみだ。
- イベント情報
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- 『-shin-音祭』
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2018年10月6日(土)
会場:東京都 新宿区立 新宿文化センター出演:
OGRE YOU ASSHOLE
Ovall
ミツメ
カネコアヤノ
jan and naomi
環ROY
眉村ちあき
おとぎ話
桑原あい ザ・プロジェクト
羊文学
Mom
Aaron Choulai×Daichi Yamamoto
中村月子
ManiMani
airlie
ザ・スパイシー
料金:4,800円
※小学生以上有料、6歳未満入場無料
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