「“応援する人”を“応援する”店舗」へ
タワーレコード渋谷店が1月19日にリニューアルする。
売場面積約1550坪、在庫数80万枚を誇る世界最大規模のCDショップである同店。2012年に全面リニューアルし、カフェ「TOWER RECORDS CAFE」、ライブスペース「CUTUP STUDIO」、催事場「SpaceHACHIKAI」を擁する現在の形になった。
今回のリニューアルでは3階から7階が対象となる。「アーティストと音楽ファンの“ハブ”になること」を強化し、「“応援する人”を“応援する”店舗」をテーマに据えて、リアル店舗でしか体験できない空間を演出していくという。
実際の変更内容としては、イベントスペースの拡張と移動、計4か所の催事スペース設置、K-POPフロアを約2倍に拡張、「“応援”特化型スペース」の演出、J-POPフロアの拡張、クロスオーバーな洋楽フロアの展開などが挙げられている。各ジャンルの在庫数はそのままに、全音楽ファンに向けた「360°エンターテイメント・ストア」を目指す。
このリニューアルに際して、CINRA.NETではタワーレコード渋谷店の店長・長谷川真人氏からコメントを頂戴した。長谷川氏の言葉と共に、一部が刷新される渋谷店の展望を見ていこう。
人々の消費行動の変化するなかで、店舗の強みである「場」をより活用していく
「応援する人」をより「応援する」というのが今回のリニューアルの軸になっている。「応援する人」というのは音楽ファンであり、CDショップにとっては客ということになるが、なぜ今このような方針でリニューアルすることになったのだろうか。
スマートフォンの登場により、お客様の消費行動が大きく変化する中、店舗の強みである「場」をより活用した売り場にしたいと考えたことです。モノを売るだけの場所だけでなく、お客様が様々な形で音楽、さらにはそれに関わる文化を体験して頂ける施策、企画を提供することで、アーティストとファンを繋ぐハブとしての役割をより明確にしていきたいと考えました。
イベントスペース、催事スペースは、人が実際に足を運ぶリアル店舗ならではの機能だ。リニューアルでは、イベントスペースがこれまでの4階から5階に移され、フロアの約半分ほどのスペースへと拡張される。約2倍の集客が可能となるほか、16面の縦2m×横4mの巨大LEDモニターをステージバックに導入することで、より華やかなライブ演出や、モニターを使った映像展開などの企画を行なっていく。
催事スペースは4階、5階に2か所ずつ、計4か所設けられる。展示やポップアップショップなど多目的に使用し、リアル店舗ならではの「体験」の場を創出していくねらいだ。
K-POPフロアは約2倍に拡張、「世界NO.1のK-POPストア」を目指す
K-POPフロアを約2倍に拡張するというのも大きなトピックの1つだ。K-POPフロアは4階から5階に移動し、フロアの半分以上を占める巨大スペースとなる。展示や独占商品の展開、イベント開催などを通して、「K-POPファンの聖地」「世界NO.1のK-POPストア」を目指していくと宣言している。
BTSの全米1位を筆頭に、K-POPは近年世界でも大きな注目を集めており、日本も例外ではない。タワーレコード渋谷店では以前からK-POPグループのイベントや衣装展示などの企画を行なってきたが、そうした実績で得た手応えやファンの反響が今回のフロア拡張の背景にあるようだ。
今回増床した売り場はK-POPだけではなく、アイドルやジャニーズ、坂道グループなども大きく売り場面積を増やしましたが、K-POPに関しては、これまでも多くのアーティストにご協力頂き、多数のイベントや施策を実施し、ファンの方々の反響を目の当たりにしていたことが売り場拡張の背景にあります。
イベント時のファンの方々の反応はいつも圧倒されます。また(K-POPは)全体的に先進的な音を取り込み、ダンスなどのパフォーマンスも非常に高いと感じます。
「世界NO.1のK-POPストア」を目指すにあたっては、ここでもリアル店舗ならではの「場」を活用する。
どの店舗でも実施したことがないイベントや施策を実施していく予定ですが、とにかくファンの方々が売り場で見て、感じ、オンラインでは決して体験できない「場」、「空間」、「時間」を創出したいと考えています。
リニューアルを記念して5階の催事場では、1月19日から「K-POPお宝展示」を実施する。2012年の同店のリモデル以降に渋谷店が収集・所蔵してきたサイン色紙やポスター、写真といった「お宝」が一挙展示される。
ジャニーズ、アイドル、ボーイズポップのコーナーを独立させ、「“応援”特化型スペース」を演出
「“応援”特化型スペースの演出」というのも気になるトピックだ。
ジャニーズ、アイドル、ボーイズポップというファンダムの大きさや結びつきが強い3カテゴリについては、現在の3階から4階に移動して、独立させる。在庫数もこれまでの約2倍になるという。催事スペースとの連動など、これまで以上にファン同士が集まりやすいコミュニティーの場を作り出すことを意図している。
より満足度の高いインストアイベントを実施するために、イベントスペースを拡張、音響機材も入れ替えました。また4Fには常設の催事スペースを設置したことで、ファンの方々が集まる「場」として機能させ、喜びやアーティストへの想いや共感を共有できる空間にしたいと考えています。
ボーイズポップコーナーの新設を記念して、1月19日から5人組男性ダンスボーカルグループ・FlowBackとのコラボ企画を行なう。4階の催事スペースではメンバーが実際に着用した衣装の展示や、渋谷店で撮り下ろしたコラボポスターの掲示、メンバーによるコメント映像の放映が予定されている。
J-POPフロアも拡張、洋楽フロアは2フロアに統合
J-POPフロア、洋楽フロアもリニューアルする。
上述したアイドル系のジャンルが4階に独立することで、3階のJ-POPフロアはさらに拡大。インディーズのアーティストや新人アーティストの展開を強化する。
洋楽フロアはこれまで5階~7階の3フロア展開だったところを在庫数は減らさずに6階、7階の2フロアに統合する。日本における「洋楽離れ」という言葉が使われるようになって久しいが、洋楽フロアを買い回りしやすく密度の高い売場とし、スタッフが目利き役となって様々な企画などを通して新たな発見の場を提供していくという。
若者の洋楽離れというよりも、むしろ、ジャンルに捉われずに楽しまれている方が増えていると感じていますので、売り場面積は縮小したものの、在庫数は全く変わっておらず、また相性の良いジャンルを同フロアにしたことで、買い回り性を改善し、より密度の高い売り場としました。
また、渋谷店の知識豊富なバイヤーがよりフレキシブルにロック、ソウル、ジャズなどをクロスオーバーしリコメンドしていくことで、これまでと変わらず、コアな音楽ファンの方々にもご納得頂ける、発見のある売り場を目指します。
今回のリニューアルは、いずれも音楽ファンが訪れる「場」の創出に主眼が置かれている。ECサイトや定額制ストリーミングサービスの普及によって音楽の視聴環境や購買環境が多様化し、リアル店舗としてのCDショップはますますそのあり方を問われている。世界有数の音楽市場を誇る日本は、グローバルな潮流に反して依然としてCDが高いシェアを占めるが、それでもCDショップがオンラインのサービスにない「場」の強みを打ち出していくのは自然な流れだろう。
最後に長谷川店長からは「タワーレコード渋谷店でしか体験できないことを多数ご用意してお待ちしております!」とのメッセージをいただいた。「渋谷店ならではの体験」を求めてぜひ店舗を訪れてみてほしい。
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