太陽光を活用した新製品のシリーズ「SAMMANLÄNKAD」
現代美術アーティストのオラファー・エリアソンが共同設立者を務める「Litte Sun」と、スウェーデン発の家具・インテリアチェーンIKEAによる新たなコラボレーション製品のプロトタイプが発表された。
スウェーデン語で「CONNECTED」を意味する「SAMMANLÄNKAD」と題されたこのシリーズでは、太陽光を活用した製品を展開していく。「私たちは皆、太陽で繋がっている」というLittle Sunのモットーを形にしていくことを意図し、持続可能かつ、電力供給網から自立したライフスタイルに寄与することを目指す。
これまで自身の作品にも自然環境の様々な要素や現象を取り込んできたオラファー・エリアソンは、IKEAとのコラボレーションについて「私たちは太陽のエネルギーを共有することで世界を繋げ、持続可能なライフスタイルを促進したいと考えています。IKEAとのコラボレーションは、エネルギーへのアクセスに関する問題や、世界的な解決策の必要性について関心を高める良い機会だと思います」と語っている。
持続可能なエネルギー手段を、電気にアクセスできない人々に提供するプロジェクト「Little Sun」
世界では、7人に1人がわずかな電気もしくは電気のない状態での生活を余儀なくされている。電力の不足は、子供たちが日没後に勉強することができないことから、教育のレベルの低下にも繋がるという。また労働は太陽が登っている時間に限られ、緊急の医療行為を安全に行なえないなど、多くの困難や危険に結びつく。
Little Sunはこのような現状を背景に、イギリス・ロンドンのテートモダンで2012年にお披露目されたソーシャルビジネスプロジェクトだ。オラファー・エリアソンとエンジニアのフレデリック・オッテセンによって設立された。
目標とするのは、持続可能かつ確かで手頃な電気やエネルギー手段を、電力へのアクセスから隔たれた人々を中心に、世界に提供していくこと。このプロジェクトで生まれたソーラーランプ「リトルサン」は日本でも販売されており、テートモダンの展覧会ではランプを使って来場客が光のグラフィティを作り上げる企画も行なわれた。
これまでに83万個のソーラーランプを世界に配布。「消費者」を「共同制作者」に変えるアートの力
Little Sunプロジェクトでは、アフリカを中心に太陽光発電製品を広め、現地の事業家らと協働することで雇用を創出し、本当に必要としている人のもとへ持続可能なエネルギーを届けていく。これまでに10以上のアフリカの国々に太陽光によるエネルギーを持ち込み、世界で配布したソーラーランプ「リトルサン」の数は83万個を超える。そのうち約51万個は電気の通っていない地域に届けられた。IKEAとのコラボレーションでは、人々の生活を手助けすると同時に、不安定な公共のインフラへに頼らなくても良いよう依存度を減らしていくことを意図している。
今回のコラボレーションに際したインタビューのなかでエリアソンは「アートは人々を消費者から共同制作者に変えることができるのではないでしょうか。持続可能なエネルギーを選ぶことは、そのシステムを消費するということでなく、本質的にこの惑星の共同プロデューサーになることなのです」とアートの力について述べている。
2020年には東京都現代美術館でオラファー・エリアソン展
2009年から2010年にかけて行なわれた金沢21世紀美術館での個展や、『ヨコハマトリエンナーレ』への参加、ドキュメンタリー映画『オラファー・エリアソン 視覚と知覚』の公開など、日本でもたびたび紹介され、人気の高いアーティストであるオラファー・エリアソン。IKEAはこれまでもヴァージル・アブローをはじめ、各地の様々なアーティストやデザイナーとコラボレーションを展開してきた。両者による「SAMMANLÄNKAD」は、アートファンだけでなく、これからのエネルギーとの向き合い方を考える人々の関心も惹く、ユニークなプロダクトになりそうだ。
なお日本では2020年3月から東京・清澄白河の東京都現代美術館でオラファー・エリアソンの個展が開催される。同展は「エコロジー」をテーマに据え、自然を再構築したインスタレーションや近年のプロジェクトなどを紹介するという。こちらもあわせて注目したい。
「SAMMANLÄNKAD」の第1弾プロダクトの発売は2021年になる予定だ。
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