片桐仁と行く『アーティスト・ファイル2011』展

片桐仁と行く『アーティスト・ファイル2011』展

片桐仁と行く『アーティスト・ファイル2011』展

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テキスト:橋本倫史 撮影:菱沼勇夫

4. 現代アートに必要なのは「ユーモア」!

逃げるようにしてフクロウ男の部屋を出ると、一風変わったキャンバスが並んでいます。木枠にスケール・ポリエステルを貼ったキャンバスは、独特の透明感を醸し出しています。

『片桐仁と行く『アーティスト・ファイル2011』展

「ビョルン・メルフスの後だからホッコリした気持ちになっちゃいますけど、じつは激しい絵ですよね。山水画みたいに、縦のニュアンスにこだわってます。絵具が下に流れていく感じ。『こんなの失敗だ!』って描き直すことも多いでしょうね。意図してやろうとすると、意図したやつになっちゃいますから。本当にきれいな作品!」

『片桐仁と行く『アーティスト・ファイル2011』展

「あれ? 2009年は淡い色合いだったのに、2010年は色遣いが激しくなってる! 何かが起こったんですね、この1年で!」

『片桐仁と行く『アーティスト・ファイル2011』展

たっぷりと堪能してきた『アーティスト・ファイル』展も、いよいよあと1部屋。最後の部屋ではまず、写真によって切り取られた文字による漢詩が出迎えてくれます。「前に古人を見ず/後ろに来者を見ず/天地の悠悠たるを念い/独りそう然として涕下る」―― 唐代の詩人・陳子昴の詩です。

『片桐仁と行く『アーティスト・ファイル2011』展

「チンスゴウさん?! ほんとにそんな名前の人がいるんですか? 杜甫とか李白は習いましたけどね。沖縄のお菓子とは関係ないんですよね?」

陳子昴の詩は、悠久の歴史を前にした孤独を詠んだもの。その詩の内容といい、モノクロで接写された文字といい、どこか重厚さが漂っていますが、80年代生まれの2人組・バードヘッドが映し出す上海の風景は明るく、軽やかなものです。

『片桐仁と行く『アーティスト・ファイル2011』展

「中国のアートってどうしても政治的になっちゃいますけど、この写真はそんな感じがしないですね。アラーキーみたいだし。ガンガン開発してる感じは上海ですけど、あとは日本と変わんないなあ」

『片桐仁と行く『アーティスト・ファイル2011』展

これにて見学は終了。絵画、写真、陶芸、映像などさまざまなアート作品が登場する『アーティスト・ファイル』展を2時間にわたって堪能した片桐さんに、展示の感想を訊ねてみました。

「面白くて何回も笑っちゃいました。僕、『笑っちゃう』っていうのが現代美術で大事なことだと思っているので、とても良い作品ぞろいですね。それから、作品を直接目にすることに価値があるんだ、って実感させられました。カタログとは作品の印象が全然違うし、8つの部屋それぞれがしっかり演出されてるのが面白い。それを体感できるのは、観にきた人だけですよね」

今年の『アーティスト・ファイル』展は、オープニングまであと数日というところで震災が起こり、開館日にも影響が出ています。この日のレポート中にも、強い余震がありました。自粛ムードが広がり続ける2011年の春、「『アーティスト・ファイル』展の持つ意味とは?

「アーティストが観客に提示する感性や考え方を、しっかり受け止めて味わうのってとても大事なことだと思うんです。難しく考えず、展示を素直に楽しんでもらう体験っていうのは、いま貴重なことだと思いますよ」

『片桐仁と行く『アーティスト・ファイル2011』展

『アーティスト・ファイル2011 - 現代の作家たち』

2011年3月16日(水)〜6月6日(月)
会場:東京都 六本木 国立新美術館 企画展示室2E
時間:10:00〜18:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:火曜(5月3日(火・祝)、5月10日(火)は開館)

出品作家:

クリスティン・ベイカー
バードヘッド
タラ・ドノヴァン
岩熊力也
鬼頭健吾
松江泰治
ビョルン・メルフス
中井川由季

料金:

一般1,000円
学生500円

国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO
http://www.nact.jp/

「アーティスト・ファイル2011 - 現代の作家たち」展
Artist File 2011 | the NACT Annual Show of Contemporary Art
http://www3.nact.jp/af2011/

橋本倫史

1982年東広島市生まれ。ライター。07年、リトルマガジン『HB』創刊、編集発行人を務める。『en-taxi』(扶桑社)、『マンスリーよしもとPLUS』(ヨシモトブックス)等に寄稿。向井秀徳初の著書『厚岸のおかず』(イースト・プレス)制作にも携わる。



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