「月刊CINRA」連載 あの雑誌の特集、予想します。第12回「Numbe●」

第12回 「Numbe●」2009年10月中旬発売号の特集
特集名「VICTORYという証明。」

雑誌の趣向を分析しつつその雑誌の特集を勝手に予測しているこの連載。今回は「Num●er」でいきましょか。というのも、聞く所によると「N●mber文体」というのがあるそうで、まぁそれはすなわち沢木耕太郎や山際淳司といったスポーツノンフィクションの名手の書き口ってことなんでございましょうが、そこにある物語を膨らませるだけ膨らませてドラマティックに落とし込んでいく作法、確かにその文章作法を学ぶにはもってこいの雑誌でございまして。この雑誌の刊行元であります文藝●秋の新卒採用面接で「何の雑誌をやりたいですか?」と聞けば口を揃えてこの雑誌と答えるようで、もしかしたら諸君、おっと、「諸君!」は昨年潰れましたけども、ものすごく過剰に書くのが良き文章だと信じ込んでるんじゃないでしょうね。文章って、熱したり冷ましたり、その温度管理が名文・悪文を決めるのではなかろうかと私は思いますが。熱い文章なんて、書けるんすよ。ちょっとやってみましょう。10月ってことでプロ野球の優勝の瞬間でも。

第12回「Numbe●」2009年10月中旬発売号の特集

キャッチャーミットへ飛び込んでいく白球が、しなる音をあげた。スパンッとミットを叩き付けるその音が、いつもより大きく聞こえた気がした。その音に答えるかのように、スタジアムが笑っていた。思えば8月18日、9回裏2死満塁、炎天の中、したる汗をそのままに放った直球。空を切ったあの日。4球連続のストレート勝負だった。球威は落ちていた。しかし、意志が漲っていた。意志は球威に勝る、そう、あの日と同じだった。女房役からのサインに3度首を振った。それではない。それでもない。そして、もう一度首を振った。相手バッターは明らかに直球を待っていた。でも、相手が待つよりも前から決めていたことだった。直球で終わる。相手が直球を待とうが、直球で終わるのだ。土ぼこりが舞っていた。時が静止したかのように、舞った土の粒子の一粒一粒が見えた。その先にミットが見えた。あそこに投げ込めばいい。キャッチャーも、バッターも見えなかった。ミットだけが見えた。あそこに投げればいい。投げれば終わる。放ったボールが、ミットに入り込んだ。ミットは少しも動かなかった。新たな土ぼこりが舞った。歓喜の土。土ぼこりの奥に、破顔する皆が見えた。

こんな感じでしょうか。冷静になって読むとね、実は何が起きてるか分からないんだけど、でも何かしら「良さげな雰囲気」、これでいいんです。今年のプロ野球を締めくくる「VICTORYという証明。」特集号は10月中旬に発売です!

[結果報告:的中率40%]
さて、プロ野球シーズンを総括する特集号のタイトルは「ベースボールファイナル2009」。何だか守ったタイトルだなあ。しかし、当然ではありますが、文体は何となくこんな感じ。ピッチャーの一人称で書いてみましたが、捕手出身の野村監督の勇退と、日本一チームから捕手の阿部慎之助がピックアップされ、「捕手特集」じみていた所が予想外れ気味。



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