今回お邪魔したギャラリー
KIDO Press,Inc.
2002年に刷師である木戸均さんによる版画工房としてスタート。2007年よりギャラリースペースを兼ねた工房として版画の出版と新進作家の紹介につとめている。
半蔵門線と大江戸線がクロスする清澄白河の町は、現代アートの展示を主とする東京都現代美術館のある場所としてアートファンにはなじみ深い場所だろう。しかしまた、駅を一歩降りれば佃煮や深川丼のお店も立ち並ぶ。昔ながらの商店街や伝統的な清澄庭園など、古きも新しきも一緒くたになった不思議な町だ。東京都現代美術館でデートの帰りに深川丼を、なんて人もいるかもしれない。
しかし、そんな町のとある倉庫ビルに、気鋭の現代アートギャラリーが集まっていることをご存知だろうか?清澄白河の駅から清澄庭園を横目に5、6分。清澄公園を過ぎてさらに行くと、大きな倉庫ビルが登場する。一見それと分からない巨大なビル。ビルのエレベーターも荷物運搬用専用と超巨大。しかし入ってみると、どの階も真っ白な壁につつまれたシンプルな空間が現れる。このビルの6Fにあるのが、今回お邪魔したギャラリー「キドプレス」だ。
「アルタミラの洞窟壁画にたくさんの手形が残っているように、版画ってたぶん人間が絵を描き出したのと同じくらい昔から歴史があって、歴史があるということは、それだけ人が好きなことだと思うんですよね。刷ることそのものが楽しいってことが、作家さんの体の中にも染みているんだと思うんです」そう語るのはオーナーであり刷師の木戸均さん。確かに、美術の授業でプレス機から出てきた自分の版画を見る喜びを思い出すだけでワクワクしてくる。そしてここは、そんな版画作品をコレクションする喜びを与えてくれるギャラリーなのだった。
キドプレスの展示スペースは同じビルに入居する他のギャラリーと比べるとかなり小さい。実は、その裏にはそのふたまわりもさんまわりも大きな版画工房が構えられていたのだった。
版画は、一度「版」を作ることで、同じ作品を量産できることが利点のひとつ。「版画工房で版画を出版するということは、同時にいろいろな人の手に渡るということです。そのなかのエディションのひとつが美術館にコレクションしてもらえるミュージアムピースとなることができたら、コレクターの方にも喜んでもらえることだと思っています。」え?版画を出すことを「出版」と呼ぶの?と一瞬驚くけれど、よく考えれば版を出すイコール「出版」だものね(笑)。しかもキドプレスで作られている版画は全部手で刷られた、人の手の温もりを感じる「出版物」なのだ。そしてキドプレスでは、ギャラリースペースを活かして、新進アーティストの紹介につとめている。若いアーティストの紹介と版画工房としての出版・展示を交互に行っていくのが目標だという。聞けばこんなエピソードも。
「もともと著名な作家さんの作品をコレクションされていた方がいらしたんです。その方の後日談で、ご家族の中では著名作家の作品よりもうちで買ってくださった若い無名作家の作品が評価されているって言ってくださって。その時は嬉しかったですね。」
「若いOLさんも年配の方も、本当に幅広くお客さんはいらっしゃいます。」と木戸さんは話す。「シートですと7000円など、額をつけて、消費税を払っても一万円で済むので若い方にも買いやすい値段になっています。今大人気のタイ人のマンガ家ウィスット・ポンニミットさん(通称タムくん)の個展をやった時は、直前にオープニングパーティで来た方の似顔絵を描くことが決まって。前日にミクシィで告知しただけだったんですけど、若い方たちがたくさんいらっしゃって満室状態でした。」
一万円以内で買えるなら、ワンピースを一枚我慢するだけでいい。しかも、タムちゃんのグッズを数個買う値段で、直筆サイン入りの版画も買えてしまうというのだ。では、実際に買うにはどうすればいいの??
「現金、カード、振込、代引きと購入方法はいろいろあります。うちの場合はクレジットカードの上限金額で支払えない作品ってほとんどないので(笑)現金とクレジットカードが半々くらいですね。」ま、まさにポケットマネーで買えちゃうじゃないですか!
「あとは、基本的にシートの値段なので額装のご希望があれば、このぐらいの金額ですというご説明をさせていただくこともあります。基本的にここで制作したものですから、エディションの番号を選んでもらったり、また展示期間中ではない作品でもお見せすることはできますよ。支払い後は、一点もののオリジナル作品の場合はその展示期間が終わってから、宅急便か引き取りにきていただいてのお渡しになります。版画でシートの場合はそのままお持ち帰りいただくこともできますね。」
本当に、本屋で買い物をするように買えてしまうことにびっくり。ちなみに、2009年のキドプレスとしての出版は画家のMAYA MAXXさん、阪本トクロウさん、写真家のオノデラユキさんだという。他にも、年末には、ビックリ!の作家さんの版画の出版を予定しているとのこと。MAYA MAXXさんの絵は買えないけど版画なら買えちゃう! これってすごいことだと思う、まさに版画万歳! だ。
1975年生まれ、東京藝術大学大学院修士課程美術研究科版画専攻を修めた期待の若手版画作家のこの作品。55.8x42cmと大きなサイズで存在感大。飾ればお部屋の雰囲気もぐっと変わるはず!
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