秘密ロッカーのヒミツ大捜索
Special Feature
Crossing??
CINRAメディア20周年を節目に考える、カルチャーシーンの「これまで」と「これから」。過去と未来の「交差点」、そしてカルチャーとソーシャルの「交差点」に立ち、これまでの20年を振り返りながら、未来をよりよくしていくために何ができるのか?
「30代の10年はほとんど休みがなかった」というHIROKI氏。当時と比べれば全然時間があるとは言うものの、現在もワーカホリックっぷりは相変わらず。4組の新人アーティストのプロデュースを手がけ、作曲チーム「CELL No.9」で関ジャニ∞やアイドリング!!!、hitomiなどといったアーティストに楽曲提供もしているという。そしてその中で、ひときわ力を入れているのが本連載の主役である秘密ロッカーだ。
―もともと秘密ロッカーとの付き合いは、Dragon Ashのツアーでオープニングをやるバンドを募集したところから始まってるんですよね?
HIROKI:うん。あのとき、関東だけで400くらい応募があったんだけど、そこからYouTubeに映像をアップして、投票してもらって。その中から何組かに、客も入れたライブハウスで演奏してもらって、そこにDragon Ashのメンバーもお忍びで見に行ったの。そのときに通路でおどろおどろしいメイクしたライオン丸みたいなヤツが寝っ転がってたんだけど、それがアッキー(野村有希:ドラム)だったんだよね(笑)
―それが秘密ロッカーとの最初の出会い?
HIROKI:そうだね。「いまどきこんなヤツらいるんだ?」って。けっこうライブハウスは行くほうなんだけど、みんな流行りを追いかけてる感じばっかりでしょ。だけど、「コイツらはどこでこんな音楽をひたすらやり続けていたんだろう?」って。化石のような感じもしつつ、真新しさもあって。一番印象的だったのが、そういうのにあんまり興味のないBOTS(Dragon Ash)が客席でノリノリだったんだよね。こういう人にもちゃんと刺さるんだなぁと思って。で、案の定、最終選考してるときに、俺とBOTSが秘密ロッカーをゴリ押しして。
―他はどんなバンドが多かったんですか?
HIROKI:普通にミクスチャーのバンドとかもいたし、DJとMCのユニットもいたし。モデルさんがやってる小洒落たロックバンドとかも。いろいろだったね。
―そんなライバルたちの中で秘密が優勝した。
HIROKI:秘密をオープニングに出したいって話したときに、やっぱりどよめきはありましたよ。「確かによかったけど、果たしてオープニングに使っていいのか!?」って。でも、そういうバンドをピックアップするのが趣旨だったから、例えお客さんにドン引きされても、それが経験になればOKっていう結論になったんだよね。
見事、オーディションを勝ち抜いた秘密ロッカーは、「タモが俺のエフェクター踏むんじゃないかってくらいブチ切れてた」とHIROKI氏が苦笑するほどの激しいパフォーマンスで、2011年1月にSHIBUYA-AXで行われたDragon Ashのライブのオープニングアクトという大役をこなし、改めてその評価を確たるものにする。そしてそれから約1年後の2012年2月、HIROKI氏プロデュースのもと、初めてのCDをリリースするのだが、レコーディング現場はHIROKI氏も驚かされることの連続だったそうだ。
―HIROKIさんがプロデュースすることになったのは、どういう経緯で?
HIROKI:俺と桜井くんとかで「中野会」という安くておいしい店で酒を飲む会を月1くらいでやってるんだけど、西荻窪でやったときに「そういえば秘密ロッカー、この辺だよな?」って話になって、スタッフに連絡してもらって彼らを呼んだんだよ。そしたらタモとアッキーが来て、「今度CDを作ってみようと思うんです」って言うから、「じゃあ俺、手伝うよ」って。そこで連絡先を交換して、俺がリハーサルを見に行って。最初はよその人が入ってくるのをアッコが嫌がってたんだけど(笑)、一緒にアレンジを詰めていくうちに手応えを掴んだみたいで、受け入れてくれるようになって。
―もうちょっと大人の事情的なものがあるのかと思ったら、そんな経緯だったんですね! レコーディングの際、アドバイスとかもされたんですか?
HIROKI:やっぱライブの感じを出したいねって。これは本人たちもずっと言ってたことだけど、「きれいに録れなくてもいいから、ライブの熱量を出したい」って。あとはほんとアドバイス程度だね。そもそもアイツら、アレンジ力が高いんだよね。技量がない分をアレンジで補ってる。アッキーはまともなパターンは叩きたくないっていうタイプだから、なんかおかしなことをやってることが多いんだけど、そこにおかしなフレーズを弾くタモがいて、そのおかしな二人の手綱を取っているのがミック。バランスがいいんだよね。全員が違う拍子をとってるみたいなときもあるんだけど、全体で聴くとちゃんとバランスが取れてて。その中で普通に歌えるアッコもすごいけどね。
―メンバーは頑固そうなイメージがあるんですけど、その辺はどうなんですか?
HIROKI:いやぁ、頑固だよ。俺の意見もけっこう却下されてるから(笑)。「ここ、ちゃんとハモれば?」って言ったら、「ちゃんとハモるとポップになっちゃうから、ちょっと濁ってたほうがいいんです!」みたいな。確かにアイツらの場合、ちゃんとやりすぎるとつまらなくなるから、そういう部分を活かすようにはしてるかな。タモは面白いリフを考えるヤツだから、普通にコードを弾かせるよりも、なるべく「らしさ」を出すように言ったり。そうすると案の定面白いフレーズを考えてくるんだよ。だから、基本的に伸び伸びやらせてるね。