『この人に、この人生あり!』

『この人に、この人生あり!』 第1回:マンガ界のゆかいな革命児「タナカカツキ(マンガ家)」

『この人に、この人生あり!』 第1回:マンガ界のゆかいな革命児「タナカカツキ(マンガ家)」

マンガ好きのみならず、各界の目利きたちを唸らせてきた異色作にして名作『オッス! トン子ちゃん』。天久聖一とのコンビで、規格外のバカバカしさを詰め込みまくった新時代のギャグバイブル『バカドリル』。マンガ家・タナカカツキさんの表現は、いつもこちらの期待を裏切らない「裏切り」に満ちています。言い換えればそれは、楽しい実験精神? 変幻自在のスタイルは、CG映像、立体作品など、紙とペンの世界にとどまらない広がりよう。最近ではローソンの展開するカフェサービス「MACHI café」で特製タンブラーのデザインを担当するなど、コラボレーションの新境地も見せています。そんな摩訶不思議なマンガ家「タナカカツキ」は、これまでどんな道のりを歩んできたのでしょうか。

タナカカツキ プロフィール

1966年、大阪府出身。18歳でマンガ家デビューし、以降、映像作家、アーティストとしても活躍する。マンガ家としての作品は『オッス! トン子ちゃん』『バカドリル』(天久聖一との共著)など、また映像作品としては『SUNDAY』『ALTOVISION』などがある。
http://www.kaerucafe.com/

タナカカツキ

あの天才が書いた『マンガ家入門』が出発点

カツキさんの活動は従来の「マンガ家」のくくりでは語り尽くせないもの。そもそもマンガ家を目指したきっかけって何なのでしょう? それは、8才のときにご両親が買ってくれた『赤塚不二夫のマンガ家入門』との出会いだそうです。

タナカ:もちろん赤塚マンガは大好きでした。でも僕にとってあの本の衝撃って、大人になってもマンガ描いて、それで暮らしてる「マンガ家」なる存在が本当にいるんだと実感させてくれたところですね。考えたら当たり前ですけど、当時の僕はプロ野球見てても「なんで大人になっても野球やってていいの?」って親に聞いてたりしましたから。

タナカカツキ

野球もマンガも、自分たち子どものもの、という感覚だったカツキ少年。裏を返せばそのふたつは、大人になったら卒業しないといけないものだったのです。

タナカ:そうそう。でもその本で、マンガ家を目指すことになったようなもんです。今思い返しても、マンガの描き方はもちろん、アニメーションの作り方まで描いてあってすごい本でした。当時のマンガ家って紙とペンで描くマンガ以外にも色々やっていた印象があって、それこそ赤塚先生も、アニメにも関わるし、TVにも出ちゃうし、タモリさんみたいな才能を世に送り出したりっていう。

そう語るタナカさんご本人も、マンガとはかなり違う作風のCG映像に関わったり、アート展にも参加したりと、ふつうの「マンガ家」の範疇にとどまらない活動ぶりです。意外なところでは、90年代にあの『笑っていいとも』の構成ブレーンを一時期務めたという経歴も! そういう多才な活動ぶりにおいても、スタイルこそ違えど赤塚先生の影響は大きいのかもしれません。

ただ、「マンガ家入門」を読んだ後、12歳で挑んだ初の長編マンガ『AGE』は、『天才バカボン』のような赤塚マンガというより、手塚治虫風のSF冒険テイストでした。なぜそうなったのかを聞くと、そこには小学生ばなれした実験精神が込められていました。

タナカ:アレはですね、赤塚先生が初期に手塚マンガの影響を受けていて、ああいう感じのを描いてたって知ったから、僕もまずそのようにしてみた結果なんですよ。あと赤塚さんって『天才バカボン』があまりに有名だからみんなギャグマンガ家として知ってるけれど、ストーリーものとか、劇画ものとか色々手がけてるんです。だからねぇ…きっと彼にとってはどれも実験だったんでしょうね。得意のギャグにしたって、その本質は実験なわけですし。

つまり、若き赤塚をいちど追体験するかのような試みを、小学生にしてやっていたのです。そこまで熱い赤塚ファンなのか! と思うのと同時に、その独特の聡明さに驚かされます。盟友・伊藤ガビンさんも、その後に世へ出たこの作品のあとがきに「おそろしい子!」と彼一流の賛辞を送っています。

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