プロはどうやって聴いている? 知って得する音楽リスニングガイド

プロはどうやって聴いている? 知って得する音楽リスニングガイド Vol.3 ROY(THE BAWDIES)

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プロはどうやって聴いている?知って得する音楽リスニングガイド

ROY (THE BAWDIES)

オーディオテクニカが40年間培ってきたヘッドホンの開発技術を集結して作った高解像度再生ポータブルヘッドホン「ATH-MSR7」の発売を記念して連載しているこの企画も3回目。今回ゲストにお迎えしたのは、1950年代、1960年代のブラックミュージック、ガレージロックをルーツに持ち、唯一無二のロックンロールサウンドを聴かせるTHE BAWDIESのベースボーカル、ROYさんです。今年で結成から10年、メジャーデビュー5周年を迎える彼ら独自のサウンドは、ROYさんのあくなき音楽への探求心と好奇心が作り上げたものです。そんなROYさんはどんな音楽をたどって、今に行き着いたのでしょうか。音楽を聴くときに大切にしていること、ROYさんならではの音楽の聴き方、音楽との向き合い方を伺いました。

テキスト:阿部美香 撮影:豊島望
ROY(THE BAWDIES)

ROY(THE BAWDIES)

小学校からの同級生のROY、JIM、MARCYと高校からの同級生、TAXMANによって2004年1月1日に結成。唯一無二の圧倒的なボーカルを武器に、メンバーが敬愛するリトル・リチャード / レイ・チャールズに代表されるリズム&ブルース / ロックンロールのルーツを昇華した楽曲、誰しもを楽しませてくれるライブが各地で噂を呼ぶ。2009年メジャーデビュー。2011年、初の武道館コンサートにて12,898人を集客し、大盛況に終わらせる。2013年10月には、自身初となるアジアツアーを敢行。勢いの止まらない「世界基準」の最新型ロックンロールバンドである。2014年12月3日に、最新アルバム『Boys!』をリリース。

オフィシャルサイトはこちら
オーディオテクニカ「ATH-MSR7 GM」

オーディオテクニカ「ATH-MSR7」とは?

音楽を愉しみたいすべての人たちへ。
オーディオテクニカ独自の音響テクノロジーを結集し、ハイレゾ音源が正確に再現可能。開発者たちによって「いい音とは何か?」について考え抜かれ、「原音再生」「高解像度」「高レスポンス」が徹底追及されたポータブルヘッドホン。

商品詳細については特設サイトにて

ぽっかり穴が開いていた心を埋めた
音楽との出会い

ROY(THE BAWDIES)

THE BAWDIESのリズム&ブルース、ロックンロールを牽引するROYさんが、物心ついた頃に触れていた音楽は、やはりアメリカンミュージック。1970年代にアメリカで暮らしていた母親が好きだったソウルミュージックが、家で流れていたそうです。

ROY:当時は全く意識していませんでしたが、今思えばあの頃からブラックミュージックが体に染みついていたんだと思います。でも、意識して自分から音楽を聴くようになったのは中学生くらいです。僕が通っていた中学校は自由な校風だったので、音楽やファッションに興味を持つのがみんな早かったんですよ。中学生だと、テレビで流れる音楽から情報を得る人が多いと思うんですけど、僕らの場合は中1からテレビでは流れないメロコアやパンクを聴いていたんです。当時流行っていたHi-STANDARDももちろん聴いてましたが、もっとアンダーグラウンドも掘って、デビュー前のバンドのデモテープを集めてました。YOUR SONG IS GOODのサイトウ“JxJx”ジュンが当時やっていたFRUITYなど、インディーズバンドを聴き漁ってましたね。

その頃はまだ「バンドはやってみたくて、親戚に教えてもらったベースをちょっと弾いてたけど、それよりバスケに夢中だった」というROYさん。そのROYさんの音楽ライフに転機が訪れたのは、高校3年生のときでした。

ROY:毎日練習に明け暮れていたバスケ部の引退で、夢中になっていたものを失ってしまって、ぽっかり心に穴が開いてしまったんですよね。そんなとき、同じバスケ部でずっと仲良しだったJIM(THE BAWDIESのギタリスト)と行ったCDショップで流れていた音楽に衝撃を受けたんです。「この情熱が爆発した、生々しい音楽は何だ?」と思って店員さんに聞いたら、The Sonicsでした。今の時代、機械を使えば音の厚みや迫力まで作り込めるようになってしまったけど、以前はそれを伝えるために、演奏者の振り切った感覚や爆発した感情を音楽に込めることしか方法はなかったんですよね。

音楽の奥深さを追求していくことで見つかった
自分にとって気持ちのいい「ツボ」

ROY(THE BAWDIES)

The SonicsをCDショップで聴いたとき、「すごい新人バンドが出てきたぞ!」と思ったというROYさん。しかし、家に帰って調べてみたら、なんとThe Sonicsは1960年代のシアトルのバンド。日本でヒットしたわけでもなく、ガレージパンク好きの間で語り継がれていた知る人ぞ知るカルトな存在でした。

イメージ ROY:The Sonicsを聴いて、「こんなにすごいバンドがいた1960年代には、他にどんなバンドがいたんだろう?」と、知りたいことが山のように出てきたんです。それから音楽をどんどん掘り下げていって、ロックンロールの始祖であるリトル・リチャードやリズム&ブルースの人たち、モータウンなどのソウルミュージック、シカゴブルースなど、いわゆるルーツミュージックと呼ばれるものと出会っていきました。どんどん調べて音楽の奥深さを知っていくことは、誰も入ったことのないジャングルの奥地に行って、誰も見たことのない生物を見つけるようなドキドキ感があるんですよね。

ROYさんと音楽との付き合い方で驚かされるのは、興味を持った音楽に、自分自身の足と耳と目だけを頼りに向き合い、深化させていることです。

イメージROY:好きな音楽を追い求め、いろんなことを知ると、「僕自身が本当に何を好きなのか?」という自分のツボが分かってくるんですよね。同じ1950年代、1960年代でも、イギリスの音楽はアメリカで生まれたロックを一歩引いた視点から自分たちのものにしていったから、洗練され過ぎていて僕には物足りない。僕は、The Sonicsのように初期衝動をそのままぶつけた不器用な音楽が一番好きなんだと、いろんな音楽を聴いて確かめられたんですよね。

ROYが音楽に込めている「本物」とは?

ROY(THE BAWDIES)

ROYさんがバンドを組んだ理由は、自分がかっこいいと思ったバンドの真似をしたいという憧れより先に、「伝える」ことへの強い思いがありました。「自分たちが好きなバンドから受けた衝撃を真っ直ぐ伝えられるバンドになる」と決めて、THE BAWDIESを結成します。

ROY:The Sonicsの曲をコピーするところから始めたんですが、彼らの真似をしようとしても、あれほど強烈なサウンドにならないんですよ。その理由を考えていったら、やっぱりかっこいい人たちには芯があって、ちゃんとルーツを持っているからなんですよね。本気で彼らのような音を鳴らしたいと思ったら、彼らが何を愛して何を聴いてきたのかちゃんと理解しないといけないと思って、本気で勉強しました。でも、ルーツミュージックの素晴らしさを伝えたいと言っても、聴いてくれるのは今の時代の人。曲も音も、今の僕らを通じて、いかにあのエッセンスを伝えるかが大事だと思っています。The Sonicsのレコードは、レコーディング技術も発達していない時代のローファイなサウンドですが、僕らがアルバム『1-2-3』でアナログ24トラックのマルチトラックレコーディングとモノラルミックスに挑戦したのも、今の技術を駆使しながら当時の魅力が伝わる音作りにこだわった結果です。

ROYさんがルーツミュージックの演奏者から感じた情熱を、現代のリスナーに受け継いでいくために、時代性を考慮した工夫が作品ごとに凝らされています。そして、音楽を聴く方法が多様化し、リスニング機器も様々な選択肢が与えられている今の時代だからこそ、リスナーとしてはその作品の奥深さを堪能できる選択肢を選びたいもの。また、「音楽の伝道師」として、アーティストを目指す人たちに伝えたいこととは?

ROY:音楽をやる人は、音楽を伝えていく人なので、やっぱり音楽への愛情は持っていてほしいんですよね。そして、音楽への愛情を持っていたら、もっと音楽と濃く向き合いたくなると思うんです。リスナーも、1つの答えをいきなり求めて、「この曲なんかいいね」で終わってしまうのではなく、さらに一歩奥へと踏み込んでほしいと思います。でもやっぱり、その楽しさは発信する側が伝えていくべきだと思っていて、リスナーが曲を聴いたときに、「この人のことをもっと知りたい」って気にさせる音楽を、作っていくべきだと思うんです。

知らない人が聴けば、絶対に洋楽だと思い込んでしまうTHE BAWDIESのサウンドは、ROYさんとメンバーが手探りで好きな音楽を徹底的に聴き込み、掘り下げ、魂と体で吸収し尽くして生まれたもの。THE BAWDIESが形作るものは、ROYさん自身から滲み出る「本物」のマインドが込められているからこそ、憧れのThe Sonicsとの共演も果たし、ロックの歴史を知らない若者を理屈なしに熱狂させるのでしょう。音楽、音への探求心と「聴く」ことへのこだわりは、ひとりでに「本物」へと行き着くのです。

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