『嘘じゃない、フォントの話』

連載『嘘じゃない、フォントの話』(supported by モリサワ) 第5回:マンガの空気を生み出す「文字」

 第5回目 マンガの空気を生み出す「文字」
多くの人がもっとも親しみやすく接している「文字」が、マンガの文字かもしれません。でも、みなさんはマンガの文字の違いを意識して読んでみたことはあるでしょうか? 連載5回目となる今回は、日本にマンガを広めた第一人者ともいえる講談社の週刊マンガ雑誌『モーニング』の編集部と、同誌の製版を手がけている豊国印刷株式会社にお邪魔しました。見なれたマンガの文字のヒミツを探りながら、文字がみなさんの手元にどうやって届けられているのかお伝えしたいと思います。
(テキスト:CINRA編集部  協力:株式会社講談社 モーニング編集部 / 豊国印刷株式会社
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マンガ特有のフォントとは?

さて、みなさんがよく目にしているマンガの文字、実は特殊な書体の使われ方をしています。意識して見て頂くと、かながアンチック体、漢字がゴシック体になっているのが分かるかと思います。このように、マンガの文字は2種類の書体が混植(混ぜて使用)されて使われているのが一般的です。一目見ただけで「マンガ」っぽいと思わせるほど日本人の脳裏に浸透しているこの組み合わせは、「アンチゴチ」と通称されるほど有名な組み合わせになっているのです。

それでは、この「アンチゴチ」はいつ頃から使われているのでしょうか? 豊国印刷の小宮美穂さんに聞いてみました。

アンチック体

アンチック書体はすでに1930年代頃から使われており、マンガで使われるようになったのは1950年代だとされています。一説では、『週刊少年マガジン』(1959年創刊 講談社)や、マンガ家の松本零士さん(1954年より活動を開始 代表作に『銀河鉄道999』、『宇宙戦艦ヤマト』などがある)が使い始めたと言われています。

―でも、どうしてマンガに「アンチゴチ」が使われるようになったのでしょうか?

「アンチゴチ」がマンガで使われるようになった理由には諸説あります。もともと印刷物、とくに書籍では明朝体を使うのが一般的で、マンガも当初は明朝体が使われていたようです。ですが、当時主流だった活版印刷では何度も刷っているうちに細い文字が読みにくくなってしまったんですね。そこで文字の可読性を考えたときに、かなには全体的に太みのあるアンチック体を、漢字にはゴシック体を採用したという説があります。また、「アンチゴチ」の方がセリフのリズムに合っていたという説もあります。

アンチック対

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