みんな何でそんなに真面目なのかなぁ? 写真家・ホンマタカシが伝えるへうげ心
インタビュー・テキスト:内田伸一
殺気立った満員電車の中で、声を大にして「もっとへうげ」を! とか言いたいね(笑)。
―ホンマさんは、先ほどの未亡人シリーズのような試みのほかにも、写真をバラバラに切り取って再構成したり、会場に設置した写真を双眼鏡でのぞく形式での展示などにも挑戦しています。旧来の写真の見せ方に留まらないこれらの試みにはどんな想いがあるんでしょう?
ホンマ:そうですね……自分のことに限らず、展覧会をするときに「どうぞ自由に展示してください」って言ってもらっても、実際会場に行ってみたら「うちのこの額で、『自由に』やってくださいね」みたいなことは多々あります(苦笑)。額装して壁に飾るっていう選択肢以外、まったく考えられないんでしょうね。そんなことを思うにつけても、やっぱり人生には「へうげ」が本当に大切なんだろうなって。そして、それが写真や漫画の中だけで終わったらもったいないと思うんです。
『BABYLAND RECONSTRUCTION』(2013)より
―「へうげ」と日常が繋がっていくことこそが大切だと。近作では、ギャラリーの一室全体を巨大なピンホールカメラ(レンズを使わず、針穴を開けて通した光で撮影する原始的カメラ)にしてしまうものがありましたね。こうした実験的な試みは過去にも例があるそうですが、ホンマさんがそこで写し、展示したのは、会場のすぐ外にある日常風景だった。そのことと、今のお話も何か繋がるような気がします。
Takashi Homma, taimatz installation, 2013 ©Takashi Homma Courtesy of TARO NASU, taimatz Photo by Keizo Kioku
ホンマ:できあがったシステムに何の疑問も持たない人というのがいて、悪意なく、むしろ好意から、それに則ったものを勧めてきたりもします。でも、それじゃあ思考停止だなと思うことがある。それは、日本人が一生懸命に経済発展を遂げてきた結果、なんだかおかしな状況が顕在化しているのとも無縁ではないような気がします。
―ある種の生真面目さや信念みたいなものが、硬直化すると危険なものにもなり得るという。
ホンマ:だからそういう人はホント、『へうげもの』みたいなものに触れてみたら、と勧めたい(笑)。かつそこで「面白いね」で済ますだけじゃなくて、自分の実生活に照らして感じることができたらとてもいいんじゃないかな。それこそ殺気立った満員電車の中で、声を大にして「もっとへうげを!」とか言いたいね(笑)。
―ありがとうございます。最後に、この漫画の登場キャラであの人が好き、というのがあれば教えてもらえますか?
ホンマ:伊達政宗ですかね。祝い事とかで友達と飲み屋に行くと、よく「そりゃア、めでてぇなあ~~!」とかマネしてます。
―(笑)。ホンマタカシ版、日常の乙な「へうげあるある」をありがたく頂戴したところで、今回はお開きとさせていただきます!
イベント情報
ホンマタカシ参加展覧会
『拡張するファッション』
2014年2月22日(土)~5月18日(日)
会場:茨城県 水戸芸術館現代美術ギャラリー
時間:9:30~18:00(入場時間は17:30まで)
出展作家:
ホンマタカシ
ミランダ・ジュライ
青木陵子
長島有里枝
スーザン・チャンチオロ
COSMIC WONDER
BLESS/小金沢健人
横尾香央留
神田恵介×浅田政志
パスカル・ガテン
FORM ON WORDS
休館日:月曜(ただし5月5日は開館)
料金:一般800円
※中学生以下、65歳以上・障害者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は無料
「モーニングはみだし3兄弟@CINRA出張所」の特設サイトでも、
『モーニング』関連作品を連載中。
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