木下晋也&よしもとばななのマイペース対談
「この漫画があって、ホントよかった〜!」と満面の笑みで話してくれたよしもとばななさん。「この漫画」とは第23回MANGA OPEN大賞を受賞した木下晋也さんの『ポテン生活』。連載が続いた4年半の間、木下さんとばななさんは担当編集を介してメールや手紙でやりとりを続けてきたといいます。連載終了時には、なんと、作品に感動したばななさんから木下さんへオリジナルトロフィーの贈呈もあったとか! そんな二人ですが、実際に会うのはこの対談が初めて。新作『つくりばなし』のことや、木下さんが漫画家を志した理由など、四方八方に話していただきました。感性の根っこの部分で通じ合っていると感じさせる二人の会話から、木下作品の魅力はもちろん、二人が理想とする世界・生き方が見えてくるはずです。
インタビュー・テキスト:内田有佳 撮影:三野新
- 木下晋也
- 1980年大阪生まれ。2006年、「Comic ギャグダ」(東京漫画社)にて『ユルくん』でデビュー。2008年、『ポテン生活』で第23回MANGA OPEN大賞を受賞し、同作をモーニング、モーニング・ツー、モーニング公式サイトで連載。現在、モーニングで『つくりばなし』、モーニング・ツーで『もここー』を連載中。単行本『ポテン生活』全10巻が好評発売中。趣味はプロレス観戦。
モーニング公式サイト - 『つくりばなし』
作品情報
モーニングはみだし3兄弟@CINRA出張所 特設サイト
- よしもとばなな
- 1964年、東京生まれ。1987年、『キッチン』でデビュー。第6回海燕新人文学賞をはじめ、第16回泉鏡花文学賞、第39回芸術選奨文部大臣新人賞を受賞する。『TUGUMI』では第2回山本周五郎賞受賞。著書は世界30数カ国で翻訳され、海外にもファンが多い。最新刊『さきちゃんたちの夜』(新潮社)、公式サイトの日記をまとめた『人生のこつあれこれ2012』(新潮社)が好評発売中。
よしもとばなな公式サイト
ここまで幸せになれる作品も日本中にあんまりないんじゃないかな。(ばなな)
ばなな:今日は『つくりばなし』の新連載が始まったばかりの時期に、どうもありがとうございます!
木下:いえ! こちらこそ、ありがとうございます!
―お二人は今日が初対面なんですよね。
ばなな:はい。『モーニング』の担当編集さんを介してやり取りしていたのですが、お会いするのは今日が初めてです。
木下:新刊を送るとばななさんからメールで感想が届いて、その返事を次の新刊本に直接書き込んでお送りするというやり取りを続けていたんです。
左:よしもとばなな 右:木下晋也
―そもそも、ばななさんが木下さんの作品を知ったきっかけは?
ばなな:実家にいつも『モーニング』が置いてあるんです。姉が買っているんですが、そこで『ポテン生活』を読んだのが始まり。おもしろ〜い! と思っていたら、ある日突然、『ポテン生活』の1巻が送られてきて。
木下:担当さんがいろいろな方に献本してくださったんです。
ばなな:最初は木下さんのサインに気が付かなくて(笑)。中表紙の裏に、静かに入っているから全然わからなかったんです。しばらく経ってから、あれ? なんか字が書いてあるぞ! って気付いた覚えがあります。それがまた、この作品を象徴しているんですけど……。
―木下さんの漫画は日常生活をテーマにしていますし、大きな事件が起きるわけでもない。さり気なく書かれたサインみたいに、静かな展開の中にクスっと笑いがあるんですよね。
ばなな:そうなんですよね。でも、私、クスクスじゃなくてゲラゲラ笑っているかも(笑)。部屋で一人で笑っていると、子どもが覗きに来たりしますよ(笑)。
木下:それ、嬉しいです。「クスっとしました」って感想をよくいただくんですが、僕としては「ゲラゲラ笑わせたくて描いているんだけどなー」と(笑)。
―ばななさんは、木下作品の中で好きなキャラクターはいますか?
ばなな:『ポテン生活』だとミクロガールズ。自分も学生時代、あんな感じだったので。ミクロの世界が好きだったってわけじゃないんですけど、友達と他の誰にもわかってもらえないことで盛り上がったり、それを男子に聞かれて引かれたりしてました(笑)。
ミクロガールズ(『ポテン生活』より)
―あの二人は、どういうところから生まれたのでしょう?
木下:僕は誰かをモデルにキャラクターをつくることはあまりないんです。ミクロガールズの場合は、まず何かにハマっている女子高生にしようと……。
ばなな:そんなに漠然と……。
木下:それで、思いついた中で一番イメージとかけ離れてそうな「微生物」を組み合わせてみました。それ以外は深く決めずに描き始めて、だんだんキャラクターになってきた感じです。
―新連載の『つくりばなし』のほうはどうですか?
ばなな:『つくりばなし』ではカップルがすごく好きですね〜。
木下:あのお団子の?
ばなな:そう。あの二人は出てきた瞬間から好き! 私の理想のカップル。でも、私がこういうカップルを書くといつも批判されるんです。こんなカップルいない! 人間はこんなものじゃない! って(笑)。
カップル(『つくりばなし』より)
ばなな:最近は実家に帰っていなかったから『モーニング』が読めていなかったんです。でも今回『つくりばなし』をまとめて送っていただいて、幸せでした。ここまで幸せになれる作品も日本中にあんまりないんじゃないかな。
次のページへ:
漫画を考えに行くのは、だいたい漫画喫茶です。(木下)
「モーニングはみだし3兄弟@CINRA出張所」で
『つくりばなし』第1話公開中&スピンオフ連載開始予定!
モーニングはみだし3兄弟@CINRA出張所 特設サイト
- フィードバック 0
-
新たな発見や感動を得ることはできましたか?
-