木下晋也&よしもとばななのマイペース対談
インタビュー・テキスト:内田有佳 撮影:三野新
この街に物件があったら今すぐ借りたいくらい!(ばなな)
―『つくりばなし』は、4年半続いた『ポテン生活』が終わってから1週も休まずにスタートしたんですよね。
ばなな:頭を切り替えるのがすごく大変だったんじゃないですか? なんとなく、そんなに切り替えてない気もしますけど……(笑)。
木下:そうですね(笑)。『ポテン生活』は基本自由にやらせてもらってましたし、あまり切り替えは意識しなかったです。
―『つくりばなし』が『ポテン生活』と最も違う点は、場所の設定があることですよね。登場人物は、架空都市「つくりばな市」に暮らす住人で、彼らの生活が漫画になっている。
木下:場所設定があるのは読みやすかったですか?
ばなな:シリーズものとして読むことができますよね。こういう設定の街なんだなというのが掴めてからは、ここに住みたいな〜と思いながら読んでました。この街に物件があったら今すぐ借りたいくらい!
木下:場所をイメージしながら読んでもらえるのは嬉しいです。
ばなな:好きなキャラクターが今週出てくるかな? と楽しみにしながら読むのもいいと思う。自分の街のご近所さんみたいな感覚で。
木下:たまにしか出てこないキャラクターもいっぱいいるんですよね。しかも、みんな一緒の顔をしていて……。
ばなな:自分で描いて、そんなこと言わないで〜!(笑) でも、長い時間かけてだんだん覚えるのもいいですよ。単行本を読んだときに、あ、この人知ってるかもって思ったり、久しぶりだな〜って人がいたり、「つくりばな市」の中に会いに行っている感じがするし。今の世の中で、そういうペースが許されるのも稀なんじゃないかな。
漫画を考えに行くのは、だいたい漫画喫茶です。(木下)
―木下さんは、どこでネタを見つけるんですか?
木下:自宅でペン入れをしているとき、基本テレビをつけっぱなしにしていて、そこで無意識にインプットしているのかもしれません。
ばなな:街に出かけたりはしないんですか?
木下:漫画を考えに行くのは、だいたい漫画喫茶なんですけど。
ばなな:漫画を考えに漫画喫茶へ!?
木下:はい。家から店までの片道20分くらいを寄り道しながら歩いて行きます。あと最近、調布に引っ越したので、調布の図書館にある社会人学習室で考えたりもします。
―市の漫画を市の施設で描いているってすごいですね。
ばなな:漫画家さんがルノアールで描くというのは想像できるんですけど……。
木下:ばななさんはどういうところで考えてるんですか?
ばなな:私はそんなに頑張って考えないんですよ。長年やってるから、もう考えるのが癖になっちゃってる。
木下:じゃあパソコンの前で腕組み……という感じじゃないんですね。
ばなな:ないですね〜。ゴロゴロしながら小説のアイデアを思いついたりする感じです。
木下:僕は切り替えないとダメなんです。
ばなな:面白いこと考えるぞ! ってことですよね。
木下:あはは。恥ずかしいけど、そうなんです(笑)。
―『つくりばなし』は調布の街をイメージしているとも聞いたのですが。
木下:イメージしたというより、作ったものが調布に似ていったという感じです。
ばなな:木下さん、ご出身はどこですか?
木下:大阪です。
ばなな:大阪の香りが全然しない! 大阪で浮いていませんでしたか?
木下:……浮いてましたね。大阪の泉佐野というところだったのですが、『つくりばなし』には今まで住んでいたところの要素がいろいろと入っていると思います。
―調布の住み心地はどうですか?
木下:家の目の前に畑があったりして、東京の割には自然が多いところなんです。僕、大阪芸術大学に通っていたのですが、大学が富田林という大阪の山のほうにあって。この時期になると、湿気のある空気と自然の匂いが混ざった独特の香りを嗅ぎながら通学していたんですが、それと同じ匂いを昨日、調布で嗅ぎました。
ばなな:へー。
木下:久々に富田林を思い出したっていう、それだけの話なんですが(笑)。
ばなな:でも、いいところなんですね(笑)。
木下:なんでもない話でしたね(笑)。
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やっぱり、人生あくせくしちゃいけないんだなぁ。(ばなな)
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